店先でのできごと
遅くなってすみません。
研修が終わったと思ったら親戚の結婚式に出席。しかも泊まりとか……書く時間どこよ。
いや、休みどこよw
とりあえず今週1週間も(泊まりじゃないけど)研修です。ふにゃー←意味不
ワイワイガヤガヤ
今の状況ほど、この音が似合うのは、幻想郷では博麗神社での宴会だけだろう。気が付けば先ほどよりも少しだけ人数が増えていた。
霊夢、魔理沙、妹紅にプラスして、気が付いたら現われていた伊吹萃香と、最速の新聞記者こと射命丸文。この二名を加えたミスティアの屋台は大盛況と言ってもいいぐらいの忙しさである。
最初の三人がいただけでも大変だというのに、萃香が「何か見つけちゃったんだよねー」と言って飲み始めてからが本当にヤバくなった。そう、萃香の酒に前三人が付き合いだしたのである。
そしてそこに現れた射命丸文。こいつは「新聞記者ですから。月から帰ってきた楽冶さんにインタビューしようと思いまして」と言って酒を飲んでいる。どんだけ情報早いんだよ……
ああ。そういえば気になったことがあったな。
「妹紅」
「ん〜。何よ」
「あの炭どうしたんだ?」
「ああ。私の家が焼けたあと……今は慧音のところに住まわせて貰ってるんだけど、何もしないっていうのもちょっと居心地が悪かったから……だから試しに炭を作って売ってみたら思いのほか当たっちゃってさ」
「へえ。お前は火をだせるから材料と場所だけあればいいしな」
「因みにそれを広めたのは私です!」
俺と妹紅の会話に文が割り込んでくる。俺はヤツメウナギをひっくり返しながら、文に詳しく言うように促した。
「いえ。最近あまりにもネタがなかったものですから。正確に言えばあなたが月に行ったというのがあったのですが……それでですね。ネタ探しに少し飛んでいたら妹紅さんが何かしてるのを見つけたんです。それで特に書くこともないし、穴埋めに掲載しただけなんですけどね」
「そういうこと。射命丸にしてはいい仕事したと思ったわ」
「どういうことですか!」
「いや、間違ってないだろ」
「ちょっと楽冶ー!こっち手伝って!」
はいはいはーいっと。
ミスティアに呼ばれて手伝いにいく。俺のほうにもヤツメウナギを置いておくのを忘れない。
「どうした?」
「この三人早すぎるのよー!」
言われて見てみると、成る程。確かに霊夢と魔理沙と萃香の食べる速度が尋常じゃない。何だ?ヤケ食いか?競争か?ギャンブルか?
「だってタダじゃない」
「は?」
「せっかくの奢りだしな。食べれるだけ食べないと」
「待て待て。俺は払うとは言ってないぞ?」
「楽冶。私は嘘は嫌いだよ?」
「やかましいぞ。肴の誘惑に負ける程度のプライドが」
「あー!それは言わない!鬼としての沽券にかかわるから!」
だからそのプライドが、俺らにとっては肴に負ける程度だって言ってるんだよ。というか俺は払うとか言ってないよな?まず嘘を言っていないハズなんだが……
ギャーギャー騒ぎながらも、俺は枝豆にとりかかる。もっと寒くなればおでんがあるのだが……おでんがあれば一度で大量に作ることができるため、結構楽になるのである。因みにこの屋台のおでん。卵が入っているのだが……鳥としてそれは大丈夫なのかと聞いたところ。
「それはそのー……色々と事情があって。食べていいのと食べたら悪いのがあるのよ」
という風にお茶を濁されたことを覚えている。
さて、枝豆を茹でている間に、またヤツメウナギの世話へと戻る。そろそろタレを塗ってひっくり返さなければならない頃合いだろう。ミスティア特製のタレを塗ってひっくり返す。ああ食べたい……
「それでですね楽冶さん!月についてですが!」
「今忙しいから。あとでな」
「いいじゃないですかー。妹紅さんの時からいい記事が書けていないんです。私を助けると思ってください」
「何故お前を助けなければならんのだ。貸しも借りも作った覚えはないぞ」
ほんのり白くも透きとおったお酒を飲んでいる文だが、さすがは天狗なのかまだ酔っていないようだ。だが酔ってないと新聞の話をしてくるので正直面倒くさい。さっさと酔ってしまえばいいのに。大体お前がいい記事を書くなんて数百年に一回とか聞いたぞ。短い期間に二回もそんなの書くと、何か起こりそうだからやめてくれ。
あ。枝豆枝豆。忘れるところだった。
「ほい枝豆」
「これは楽冶持ちだから」
「じゃあやらん!」
「嘘嘘!ちょうだいよ楽冶〜!」
「鬼は嘘つかないんじゃなかったのか?」
「う……」
「というわけで。これは霊夢と魔理沙にやろう。妹紅と文のヤツメウナギももうすぐ焼けるから待っててくれ」
萃香がまだ俺のことを引っ張るので少しお灸をすえてやる。妹紅と文のヤツメウナギは偶然にもうすぐできてしまうのだが、タイミング的に萃香一人だけ肴にありつけない状況になってしまった。自業自得である。
「ありがとう楽冶。気が利くわね」
「私は楽冶を信じてたぜ!」
「お前らこういう時だけ褒めるよな……」
「あら。そんなことないわよ。私は楽冶のことを少しは評価してるわ」
「それはありがたい」
「だってお賽銭くれるもの」
そこかい!つまりお前は賽銭入れてくれる人なら誰でもいいってことか!
そう思ったが、博麗神社に賽銭を入れるようなやつは殆どいない。というか霊夢に会いにいく度に入れているのは、おそらく俺一人なんだろうな……幻想郷って冷た、いやまあ普通の人間は仕方ないけどさ。
「私も評価してるぜ?新薬の実験に付き合ってくれたしな!」
「お前に無理矢理飲まされて、三日ほど痺れが止まらなかったことを『実験に付き合った』というなら全然嬉しくないぞ」
「またまた〜。照れなくていいんだぜ?」
「照れてないわ!ってヤツメウナギがそろそろか」
一旦会話を切り上げてから、二人分のヤツメウナギを焼いているところへ向かう。妹紅の持ってきた炭がとてもいいらしく、長時間同じ温度を発熱してくれるので焼く時間に誤差ができなくて大助かりだ。
その炭の匂いと、タレを塗られたヤツメウナギの匂いが混ざってとても香ばしい、本当に食欲をそそる匂いをだしている。ああ食べたい。何故俺の時はただのウナギだったのだろうか……二回目なのは気にしないでくれ。それだけ食べたいってことだ。
「……ほらよ」
「ありがとうございます!それでそれで?月の科学力は進歩してましたか?」
「前回の戦いのとき見てないから知らねえよ……さっさと食え。そうじゃないと俺が食う」
「楽冶。そんなに食べたいのなら私のあげようか?」
「ありがとう妹紅。そう言ってくれるのはお前だけだ。どうせなら食べさせるくらいしてくれないか?」
「は!?はああああ〜!?楽冶何言ってるのよ!」
「そうよそうよ!そんなの許されるわけないわ!」
俺の発言に妹紅が驚くと同時に、周りの席からブーイングが起こる。別に本気だったわけじゃないんだが……それに気付かなかったらしく、さらに風当たりが強くなる。
「そうだぜ楽冶。なんなら私の枝豆をあげるぜ?」
「俺が食いたいのはヤツメウナギなんだよ」
「じゃあヤツメウナギ頼む!」
「どうせ俺持ちにする気だろうが!これ以上作ってたまるか!」
「楽冶さん!それなら私のヤツメウナギを!」
「お前に貰ったら交換条件で取材を受けさせられそうだから断る!大体最初に言ってくれた優しいやつは妹紅だ!俺は妹紅以外受け付けん!」
霊夢が怒り、それに魔理沙と文が便乗する。因みに萃香は肴をもらえなかった腹いせか、伊吹瓢の酒をがぶ飲みしていた。鬼の自棄酒って怖いな。
そして俺に優しい言葉をかけてくれた本人の妹紅はというと、先ほどから赤い顔をしたままである。ちょっと冗談がすぎただろうか。
「って。妹紅。別に気にしなくていいからな?それはお前の分だし」
「……ううん。いいよ。食べても」
恥ずかしそうに俯きながらも、ヤツメウナギを箸で掴んで差し出してくる。これが昔輝夜と殺し合いをしていた妹紅かと思うと、涙がでてくるような気分だ。時代は変わっているんだな……けどまあ輝夜には「お母さん」のインパクトが強すぎてだな。
いや、そんなことを考えるより、今は妹紅の優しさに甘えることとしよう。
「悪いな。じゃあ一口だけ」
「……(コクリ)」
赤くなったまま頷く妹紅を見て、一口だけ貰おうと思う。そして口を開けて箸に掴まれているヤツメウナギを食べようと「熱ううう!?」俺の口に何か液体が放り込まれた。
「熱っ!熱っ!」
「ちょっと!お客様の食事を食べるなんて何考えてるのよ!」
「いやだって妹紅がくれるって……」
「そういう問題じゃないの!」
「けど前は食べてたような……」
「今日は忙しいんだから!そんな暇ないの!」
「というかみすちーお前……何を口に突っ込みやがった」
「枝豆の茹で汁だけど何?ほら!さっさと仕事して!」
俺は店員じゃないんだがな……そう思ってはいるものの、ミスティアが怒っているようなので言わないことにした。さて。手伝いを続行するかね。
「…………」
「…………」
「……(パクッ)」
「……あ」
「ありがとうな妹紅(なでっ」
「う、うん」
ヤツメウナギはやっぱり美味かった。どうせ俺持ちなのだから、一口食べたってバチは当たらないと思う。
活動報告へのコメントありがとうございました!
返信は個別にしますので、今暫らくお待ちください。
つか、この会社……知名度と反してちょっとなあ……まあ社会なんてそんなもんか。




