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東方楽々記  作者: COPPE
第七章 月の裏側へ飛ばされたらしい
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正確には二十九日と半日程

楽冶が訪れて二十九日と半日程たったということは……?


そういうことだ!


突然なお知らせである。月の都から帰らなければならなくなった。いや、ならなくなったというのはちょっと言いすぎである。実際には俺が月にきた日から約三十日経ったので帰る日になったというだけである。正確には二十九日と半日程……だっけ?そんなことをどこぞの狐さんと妖怪が言っていたような気がする。

まあつまり今日の夜には帰るということだ。豊姫依姫レイセン三人衆は全然そんな素振りを見せなかったが、昨日の夜に紫が夢に現れたのである。本当に何でもありな妖怪だな……まあ俺もすっかり忘れていたんだが、そこで紫に言われて思い出したわけである。

あー、明日なのか。って感じで。


一応これがその会話である。



「楽冶〜」

「何故お前がここにいるんだ」

「冷たいわね〜。そんなんじゃモテないわよ?」

「やかましい!別にモテようとしてねえよ!」

「そんなに言わないでいいじゃない。いざとなったら私が貰ってあげるわよ?」

「いいっすいいっす。さっさと用件話してください」



何故か分からないが、この発言で紫の額に青筋がたった。ここは見なかったことにしておこう。それが一番安全だ。



「……じゃあ用件だけど。あなたは明日の夜に帰ることになるわ」

「え?もう三十日経ったっけ?」

「正確には二十九日と半日程ね。詳しく言う?」

「いや結構」



そういえば前に藍に言われたような気もする。



「明日帰らないといけないのか?」

「そんなことはないけど、ここを逃すと次の機会はまた二十九日と半日後よ?それにあなたが帰ってこないと私が怒られるのよね」

「何故に……」

「あら?分かってくれないのね。私は悲しいわ〜(シクシクシク」

「いや、嘘泣きはいいから」

「いいじゃない。ちょっとくらい」

「あー、はいはい」



今度はぶーたれる紫にてきとーな返事をしておく。いやまあ結構可愛らしいけどさ。歳というものを考え「へぼあっ!」



「何考えてるの?」

「それは私の脳内に補完しておくので勘弁してください」

「あ。そろそろあなたの夢に現われてるのもバレそうだからお暇するわね。ちゃんと考えるのよ〜」

「夢かよっ!リアルすぎてビビったわ!」

「話は本当よ。じゃあね〜」



白い手袋をつけた手を振りながらスキマに入っていった。そういえば今ドレス着てたな。珍しい。幻想郷で何かあったのか?

……まあいいや。とりあえず寝よう。






で、夢の中で寝たら目が覚めたんだよな確か。もう朝だったからそのまま起きたわけだ。部屋からでたら起こしに来てくれたレイセンと鉢合わせしたので、一緒に食事に向かったのも新しい記憶である。

そして今一番新しい記憶は



「「…………」」

「ちょっと楽冶何とかしてよ……(コソコソ」

「いやいやいや、あの雰囲気は無理だろ(コソコソ」



結局帰ろうという結論になったため、それを食事が終わって少しの休憩タイムの際に話した結果。豊姫と依姫が「あ?何か言った?」みたいな目線で睨んできた。って記憶だな。レイセンも一応睨もうとしたっぽいが、上二人の睨みかたを見て自分の出る幕じゃないと思ったっぽい。どちらかというと、この状況を終わらせようとする役目になっている。だが今のコソコソ話で二人の眼力が強くなった気がするので、その役目は果たせていないということになる。頑張れレイセン。



「楽冶」

「はいっ!何でございましょうか豊姫様!」

「よく今日が満月だと分かったわね」

「ああ。それは紫が教えてくれた」



何か「紫が」のところで睨みが強くなったが、何とか言いきることに成功する。依姫も苦虫をかみつぶしたような表情をしているので、この事態は歓迎できないということだろう。



「あの妖怪余計なことを……まあ楽冶だからだと思うけど……はあ」

「……そうですねお姉様。いつかこうなってたでしょうから。そもそも楽冶は地上の人間ですしね」

「そうね、仕方ないわ。本人の意思が重要だし。レイセンもいいわね?」

「はい。お二人がいいなら私から申すことはありません」



あれ?何か結構あっけなく終わりそう?



「言ったでしょ?本人が帰りたいなら……少しは引き留めるけど、無理強いはしないわよ」

「まあ楽冶なら気が付いたらいなくなってそうっていうのもあるわ」

「地上が故郷だしね。楽冶は」

「ああ……悪いな。けどまあ月は俺の中で第二の故郷だな。お前らが嫌じゃなければだが」



地上の人間にそんなこと言われたら嫌かな?と思って三人を見たのだが……



「嫌なわけないじゃない」

「来たくなったらいつでも来ていいわよ?」

「その時は私が門まで迎えにいくわ」



三人とも笑顔で言ってくれた。その言葉もあるが、三人同時の笑顔って言うのはちょっと……あれだな。恥ずかしいな。

だから俺は下を向いた。多分ちょっと顔が赤くなっているかもしれない。



「どうしたの?」

「いや。その……ありがとな」



そのお礼の言葉も何か気恥ずかしく、下を向いたまま言ってしまった。それはやってはいけない失礼だったかもしれない。そう思って顔を上げたのだが



「「「…………」」」



今度は三人が顔を下に向けていた。何だ?どうした?



「その。ねえ」

「楽冶にお礼を言われたから」

「ちょっと気恥ずかしくて……」

「え?お前らもか?」

「ってことは楽冶も?」

「ああ……ああやって正面から言われるとちょっとな」

「「「「…………」」」」



そこで一瞬の沈黙が生まれる。だがそれは、別に気まずくなったとかそういうわけではなく。



「プッ……ククク」



誰かが噴き出す。俺だったかもしれないし、俺以外の誰かだったかもしれない。もしかしたら全員一緒だったのかもしれない。



「「「「アハハハハハ!」」」」



何故ならその後の笑いは皆一緒だったから。

何だ、皆同じことを思っていたのか。珍しいこともあるもんだな。



「そうね。じゃあ今日は宴会にしましょう!」

「お姉様。いいですけど、つまみ食いはダメですよ?」

「じゃあ私は隊員に伝えてきますね!」

「お前ら……本当にありがとな」



こんな仲間を持って、俺は本当に幸せだな。

心底そう思った、月旅行最後の日であった。


とりあえず東方の音楽を大音量で流すとテンション上がる。

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