表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方楽々記  作者: COPPE
第七章 月の裏側へ飛ばされたらしい
184/223

どう言えばいいんだ?

すいません。用事があって遅れました。


挨拶回りと墓参りです。許してくださいな。



さてまあ……過去には色々あったわけだが……いや、本当はもっと色々あったのよ?たださっきまで思い出してたことが印象深いってだけで。

ただ胸を触られたっていうのはムカっとくる。正確に言えば、あの後の夕食時にお姉様と比べられた(勿論口で言ってはいないが、目がそう訴えていた)のに怒ったのだが。

さて。それよりも今は楽冶との稽古の練習をすることにしよう。前回は楽冶の狙っていた通りになってしまったのだから、今回はもう少し本気でいこうかしらね……



「なあ依姫……」

「何よ」

「顔が赤いからさ……体調悪いんだったら別に稽古しなくても」



言われて顔が赤くなっていたことに気付く。私はその事実に動揺して、思っているよりも力を込めて楽冶に攻撃を繰り出すことになった。














俺が体調の心配をした瞬間に、依姫の周りの空気が何故か 怒 に変わった。あれ?俺何か悪いことした?もしくは言った?

ゴゴゴゴゴという音が聞こえそうな雰囲気をだしている依姫は、長刀を腰にかけ直す。

これは長刀を納めた訳ではなく、居合か何かに使うからだと思われる。だってオーラはそのままだし。

横目でレイセンたちを見てみると、いつの間にか桃の木の後ろに隠れていた。うん。俺を見捨てるの早くないか?後でレイセンの耳を引っ張ってやる。兎たち代表で。

そして目線を依姫に戻した時



「あれ?」



すでに依姫はそこにはいなかった。

そしてその代わりに長刀の底の部分(鵐目:しとどめ、という)が見えたと同時に



「少しぐらい小さくてもいいじゃないのよー!」



何のことだよ……と思う暇もなく、長刀が額に思いっきり当たり、ぶっ飛んだのだった。

……あれ?手加減は?














うっすらと目が開かれているのだろう。視界がぼやけている。ぼんやりと見えた色は薄紫色、肌色、そして赤色。それを認識した時点でここが月だと思いだし、ああ、これは依姫だな。と理解したのであった。

ただ理解できなかった点があるとすれば、何故俺の顔の真上に依姫の顔があるかということである。

だが俺がそれを考える前に、依姫の手が俺の顔に触れた。



「目が覚めたのね?」

「あ、ああ。おかげさまでな」

「悪かったわね……ちょっと本気をだしすぎたわ。大丈夫?痛いところは?」



何かとても優しく迫ってくる依姫は、いったら悪いが不気味である。いやほらあれだよ。チルノが平方根理解できたら不気味じゃん?俺も理解できないけど。何だよルートって。

変なことを考えていると、額が少し痛むことに気付く。そういえば気絶の原因は額に一発!だった気がするな……痛いところを触れようと手を伸ばすと、置かれていたタオルのようなものに手が触れる。



「まだ額が痛い?ちょっと待ってね」



そう言いながら俺の額からタオルを取ると、横に置いている氷水の入った容器に浸していた。十分冷たくなったところで、また俺の額に戻ってくる。よく冷やされたタオルに思わず声を上げてしまった。



「冷っ!」

「し、仕方がないじゃない。ちゃんと冷やさないと……」

「いやまあ、反射みたいなもんだから気にするなよ」

「うん……」



依姫の言動に何か違和感を感じる。恐らく反省をしている……というよりは後悔をしているのかもしれない。またはトップに立つ者がすぐに怒ってしまって顔向けできない、とか思ってるのかもしれない。

俺は正直いって不器用なため、何か慰めるための言葉なんて思いつかなかった。


しばらくの間、二人は話さなかった。俺は先ほど述べたようにかける言葉を見つけることができなかったし、依姫は何かを言いたそうにするものの、話しかけてくることはなかった。というか今さら膝枕されてることに気付いたんだよな。だけど今離れると意識していることがバレてしまいそうだったし、何となく依姫を一人にさせたら悪いような気がした。



「あーもー!」

「な、何?」



いきなり大声をあげた俺に依姫が驚く。理由なんて沈黙が嫌いっていうのと、話すきっかけが欲しかっただけだ。ついでに心の中も言ってやる。



「俺は別に怒ってないし、何も依姫は悪くないから気にすんなって!」

「……え」

「だからそんなに考えることないんだって。普通に今まで通り接してくれたほうが、こっちとしては嬉しいの。楽なの。普通の依姫と話すほうが楽しいの!」



驚いたままの依姫に一方的に捲くし立てると、俺は依姫の太ももに頭を乗せたままだが外を向いた。

あとは依姫の言葉を待つだけだ……俺の考えられる手段はあと一つしか思いつかない。

これで依姫の元気が戻らなかったら手の打ちようがないぞ。


十秒か二十秒か、そのくらいの時間が経過してから、依姫の呟く声が聞こえた。



「うん……分かったわ。だけどとりあえず謝らせて?あれはさすがにやりすぎたわ。ごめんなさい」

「ホントだわ。死ぬかと思ったアレは……やっぱ許さない」

「怒ってないっていったじゃないのよ。やっぱ怒ってるの?」

「怒ってない。怒ってないぞ」



依姫が溜息を吐くのが分かる。俺が本当に怒っているわけではなく、ふざけて言っているのが分かっているのだろう。そしてどうすればいいのかも。



「もう……何をすればいいの?」

「え?もう一回」

「だから!何をすれば許してくれるのって聞いてるのよ!」



若干涙目の依姫は可愛らしく、ずっと見てみたい気分になったが、恐らく泣く前に怒ってしまうのでとりあえず何かやってもらうとしよう。うーん。何があったか……あ。これでいいや。



「じゃあ。この状態継続で」

「……もう一回」

「だから。膝枕。継続よろしく!」

「しょうがないわね……」



依姫の顔を見るために、もう一度顔を上に向ける……と、すぐに俺は外を向いた。



「?。どうしたのよ」

「何でもない。気にするな」

「……別にいいけど。あ。ついでだし耳かきでもする?」

「暇だし。頼む」



俺がすぐに顔を外に向けた理由は一つ……依姫の微笑がな?ちょっとあれは……反則だ

と思った。ただそれだけ。





あと、依姫の耳かきはとても上手かったとだけ言っておこう。


さーせん!さーせん!さーせん!さーせん!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ