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東方楽々記  作者: COPPE
第七章 月の裏側へ飛ばされたらしい
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ものは試し。つまり思い付き

ヤバいよ。もう入社まで1ヶ月切ったじゃないか。

絶対仕事めんどいぞ……



先日結構ボロボロになるまで叱っておいたおかげか。楽冶はあれから稽古の見張りを(多分)真面目にするようになっていた。

ふと思ったのだが、楽冶は戦闘の腕はどうなのだろうか。さすがに私やお姉様より強いということはないと思うけれど、実は強かったりしないわよね?だからといって弱すぎたら兎たちがサボっても、あまり注意できなくなるだろうからダメなのだけれど。

本当にふと気になっただけだが、こういう風にふと思いついてしまったことは逆に頭から離れない。丁度今日は稽古に付きっきりの予定だったので、ついでに試してみようかしら。



「という訳で。今日のあなたの相手は私がするわ」

「という訳がどういう訳なのかは知らんが断る!」



その旨を楽冶に伝えたところ、即答で断られてしまった。

確かに断りたい気持ちも分からなくはないけど、もう少し考えてもいいんじゃないかしら?



「いやいや。お前とやったら死ぬから」

「稽古よ?本気だすわけないじゃない」

「気持ちの問題で」

「何で私と訓練すると死ぬ気持ちになるのよ!偶にはあなたも稽古つけないと訛るでしょ!」

「俺は元から戦闘とか苦手なんだよ!離せ!」



駄々を捏ねる子どものように手をバタバタさせる楽冶を、兎たちが稽古している最後尾へと連れていく。これも本当に手を振り払うことができないのか、それとも本気で離す気がないのかは分からない。分からなかったがとりあえず連れていくことには成功したので、楽冶を対面に立たせる。楽冶は観念したのか逃げることはしなかった。



「それじゃあ始めるわよ」

「……先に言っておくが俺はお前の相手が務まる程強くないぞ?」

「分かってるわよ。これはただの思いつきだから気にしないで」

「思いつきでお前とかよ……」



いかにもやりたくなさそうに言ってくる楽冶に少しムッとする。そこまで言わなくてもいいじゃないかと思いながら、私は長刀を両手で握りしめた。



「あれ?そういえば俺の武器はないのか?」

「……楽冶って武器使えるの?それなら貸してもいいけど」

「ふ……俺が使えるとでも思っているのか?」

「じゃあ無くていいじゃないの。使い方も知らないなら素手のほうがいいわ」



そんなものかと楽冶は納得したようなので、いい加減始めることにする。このままグダグダと延ばしていたら小休憩の時間になってしまうからだ。

楽冶もそれを悟ったのか、一応構えているようだ。だがあの構え方では右手の場所が高すぎて急所である壇中(胸骨の中央辺り)や水月(一般的には鳩尾)がガラ空きになっている。

さすがに長刀で思いっきり突いたりすると死んでしまうので、今回は私も素手でやることにしよう。

私はさっきまで握りしめていた長刀を地面に刺す。



「どうした?」

「あなたが素手なのにこっちが長刀だったら触れることもできないでしょ?ただでさえ差があるのに」

「それはありがたいな」



素手なら確実に触れることができる……というのは私の攻撃が当たったら一応触れていることになるからだが。

私が長刀を刺して素手になっても楽冶の構えが変わらないのを見て、私は楽冶が本当に戦いに不慣れなんだと実感する。ああ。あともう一つ言わなきゃならないことがあった。



「あと能力も使わないから。下手したら死んじゃうしね」

「え?何?お前能力持ってんの?」

「ええ。私は神々をその身に降ろして力を借りることができるわ」

「……な、なるほどなー」

「……本当に分かってる?」

「本当は分かってないが、結構ヤバい能力の持ち主だということは分かった」



はあ。と私は溜息を吐く。まあ「そこまで舐められてたまるか!」と言われるよりはマシだ。後でしっかりと説明してもいいし……さてそろそろ始めないと、本当に小休憩に入ってしまう。



「それじゃあ始めるわよ」



私の一声で二人とも話すのをやめて真剣に構える。恐らく楽冶の性格と構えからして、向こうから攻撃してくることはないと判断した私は、待っているなら先手必勝でいこうと思っていた。どうせ訓練なのだし、最初ぐらい少し遊んでもいいだろう。

楽冶と見つめ合う……今だ!楽冶が瞬きをした瞬間に、スピードだけは少しだけ本気をだして一瞬で楽冶に近づく。



「はあっ!」



私は気合いを入れる声とともに、ガラ空きになっている水月に拳を叩きこもうとする。

……と楽冶の左手に止められてしまった!

そんなバカな。と思ってしまう。確かに拳の先が少し当たる程度に調整をしていたが、スピードは人間の目で追うことが殆どできない早さのはず。まさかそれを止められるなんて……



「ヤマはっといてよかったー!」



そう言いながら右手を突きだしてくる楽冶。勿論本気ではないだろうし、私が防御するか避けるかを想定しての攻撃だろう。しかし私は、何の訓練や稽古もしていない人間に止められた理由を自問自答していたのと、その意外なできごとに呆然としていたからか、攻撃と呼べるのかどうか怪しいぐらいの攻撃に当たってしまったのだ。

当たってしまったのだが……

むにゅ

そんな感じの音が、確実に聞こえた。それも……私の左胸から。



「……あ」

「……へ?」



何が起こったのか分からなかった私は、瞬間的に手が当たったであろう場所を見てしまった。すると



「き……きゃあああ!」

「す!すまん!」



私が胸を押さえてうずくまる。それと同時に私の悲鳴を聞いた兎たちが、何事かとこちらを見ているのが分かった。

それがさらに私の恥ずかしさを増長する。そして恥ずかしさが臨界を突破してしまったらしく、私はいつの間にか近くにいたレイセンに手渡された長刀を持つと、楽冶を睨みつける。



「あ、あ……貴方は〜!」


「まっ!待ってくれワザとじゃない!それに長刀は使わないんじゃなかったのか!」

「問答無用!それにこれは稽古じゃない!もう!」



さっきのようで少しだけ本気。などではなく……完全に本気モードで楽冶に攻撃をしかけた。



「うおうっ!危ねっ!」



私が問答無用だと言ったせいか、話が通じないと思ったのか楽冶は逃げだした。

当たり前だ。女性の胸を思いっきり触っておいて話が通じる訳がない!



「待ちなさい!楽冶!それ以上逃げると……!」

「神様は呼ぶなよ!?ちょっ!豊姫〜!どこだ〜!」



お姉様に助けを求めるように声をだす楽冶に、私は恥ずかしさに怒りがプラスされるのが分かった。何故かは分からないけれど……



火雷神ほのいかづちのかみよ……!」

「いや何それ。って!何何何!?」



思いっきり炎に包まれる楽冶を見て……少しだけスッキリしたような気がした。


つまりわざと胸の辺りを開けてた訳です。で、依姫が近くに見えた瞬間にですね……


あと変われ

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