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東方楽々記  作者: COPPE
第七章 月の裏側へ飛ばされたらしい
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桃をくれる人

あ。言っときますけど、レイセンのキスはノーカンですよ?

ぶっちゃけ当たっただけだし。頬だし。ネタだし。



先ほどとは違う大きい廊下にでると、兵士たちがバタバタと騒がしく走り回っている。

何が起こっているのか、近くを走っていた兵士を一人呼び止めて聞いてみた。



「どうしたんだ?そんなに慌てて」

「豊姫様と依姫様が喧嘩しまして……先ほどやっと終わったところなんです」

「あー。つまり後処理で忙しいのか」

「はい。それでは私も行かなければならないので」



おお。何と真面目な兵士だ。明らかに兎たちより優秀そうだ。側近はあいつらなのに……

それはそうと、その部屋にはもう二人ともいないと思うので、違う方向に進んでみることにする。えーと……こっちでいいか。

てきとーに角を曲がってフラフラと歩いていくと



「やはりあなたはこっちに来るのね」

「豊姫か……依姫はどうした?」

「ちょっとあまりにも喧嘩が長引いたから飛ばしてしまったわ」

「飛ばした!?どこに!」

「嵐の大洋の真ん中辺りかしら?」



態々そんなところを選ぶなんて……ドンマイ依姫。まあお前なら無傷で帰ってこれるだろう。というか本気すぎるだろう。別に静かの海とかでもよかったと思うが……



「いいのよ。楽冶の膝に乗ろうとしたんだから」

「それはお前もじゃないか?」

「それはそれ。これはこれよ。大体あなたがレイセンを乗せようとするから悪いんじゃないの」

「俺が悪いのか?」



絶対二人が悪いと思うんだが。明らかにレイセン一人とか可哀想だろ。目の前に権力者二人がいて、ただでさえ気が気でないだろうし。

それに俺が悪いとしても、俺の膝の上を取り合うだけであそこまでの喧嘩をするのはおかしいと思うのだが……



「はあ……」

「何に呆れた」

「あなたに決まってるでしょ?」

「そういう溜息は本人に聞こえないように吐くんじゃね?」

「ここは聞こえていいのよ」



ううむ。それはつまり俺に分かってほしいいうことだよな?今までの会話のどこに、俺が溜息を吐かれるようなところがあったのか……うーん。考えても分からん。

仕方がないから話を逸らすのを目的としつつ、それがバレないように会話の内容を変えてみる。



「今から何する?」

「強引すぎるわよ……」

「いいんだよ。変えれれば」

「しょうがないわね。それにのってあげるわ……私の部屋に行くしかないわね」

「そうなのか?」

「月の都を回ってもいいのだけれど、そこは四人で回りたいもの。だから依姫が帰ってきてからね」



それならしょうがないな……って依姫を飛ばしたの豊姫じゃ?



「いいのよ。それは大した問題じゃないわ」



おい!とツッコミそうになったが、話の流れ的にさっきのに戻りそうだったのでやめておく。許せ依姫。お前の犠牲は無駄にはしない。

つまり屋敷内では個人の部屋に入るしかないということだな。もしこの後に依姫と何かするにしても、依姫の部屋になるわけか。



「じゃあ私の部屋に行きましょうか」

「場所が分からんのだが……」

「本当にあなたは忘れっぽいわよね……」

「それほどでもないぜ」

「褒めてないわよ?」



レイセンが俺にやったように、豊姫も俺の手を取って歩き出す。豊姫の歩き方は、何といえばいいのだろうか。上品。でいいのか?そんな歩き方なのでもちろん俺のペースより遅い。だが別にゆっくり歩くのは嫌いじゃないので、俺もそれに素直についていくことにした。



「ここからだとどれくらいかかるんだ?」

「そうね。このペースだと……二十分くらいかしら?」



長いな……














ふふ。やっと二人きりね。さっきは依姫と喧嘩していてレイセンに先を越されてしまったけど、遅れを取り返せるように頑張らなくちゃ。

そういえば私と楽冶が出会ったのもレイセンの後だったわね。何か毎回先を越されてるようで悔しいわ……





「豊姫様。少しよろしいでしょうか?」

「っ!……いいわよ。入りなさい」



窓から身を乗り出し、桃を取ろうとしていたところに声がかかったため、慌てて落ち着いた姿勢に戻す。見られるだけならかまわないけど、もし依姫に報告されたら大変だ。あの生真面目すぎる妹に怒られてしまう。

襖が開けられたので振り向いてみると、そこにはレイセンがいた。



「失礼します」

「どうしたの?」

「実は……人間を捕まえまして」

「人間?」

「それがですね……」



レイセンは色々言ってくるが、詳しいことは何一つ分からないという……もう。これなら見にいったほうが早いわね。せっかく桃をお腹いっぱい食べようと思ってたのに。

仕方がないから人間を見に行くことにする。さすがに放置するわけにもいかないしね。



「って。豊姫様。また桃を食べてたんですね?」

「うっ。どうして分かったの?」

「桃の香りと……ちょっと汁が口元に垂れてます」

「えっ!?」



急いで口元を拭う。さすがにそのまま外に出るわけにはいかない。



「それじゃあ行きましょうか」

「あ。待って。桃を……」

「どれだけ食べるんですか!?」



もうバレてしまったなら開き直っても問題ない。手に持てるだけの桃を持って、人間を見に行くことにした。

……ん。美味しい。


桃を食べながら廊下を歩く。そういえばその人間はどんな感じなんだろうか。考えても分からないし、聞くだけ聞いてみよう。



「ところで。その人間はどんな感じの人なの?」

「ええと、黒い髪で……」

「容姿じゃないわ。感じよ」

「感じですか?うーん……」



もう。何で兎というのは、もう少しこっちの意図を読み取ってくれないのかしら。この前の八意様への手紙の内容もアレだったし……少しは何か学ばせたほうがいいのかも。



「普通……です」

「普通?」

「はい。普通です」



うーん……もう少ししっかりとした答えがないものかしら。

はあ。と私は溜息を吐く。



「もう。そんなんじゃ分からないじゃないの」

「すみません。でも私もあまり見ていないもので」

「ま。怒ってもしょうがないわ。早くいきましょう」



話して歩みを遅くするよりは、少しでも急いで会ったほうが早いわ。それに怒ったら肌に悪いしね。


稽古場に着くと兎たちが人間と談笑していた。あれ?レイセンは捕まえたって言ってたけど……



「ほら。豊姫様を連れてきたよ」

「え!?」



急いで囲うような陣形になる兎たち。はあ……依姫。あなたの訓練は実戦では使えなさそうよ。多分サボってるだけだとは思うけど。確かに依姫のいう程やらなくてもいいとは思うけど、さっきの状態をみると兎たちはやってなさすぎかもしれない。

とりあえず挨拶をしておこうと思って人間のほうを向くと人間から声をかけてきた。



「お前が……どっち?」

「豊姫様です」

「豊姫か。楽冶だ。よろしく」



私の代わりにレイセンが答える。

手を動かそうとしているようだが、手は桃でいっぱいになっているため動かせないようだ……くれないかしら?

そう思ったのが届いたのか、私の思っていたことを言っていくれた。



「豊姫。桃食う?あとお前らも」

「いただくわ」



差し出される前に、手から桃を取って食べる。うーん。何でここの桃はこんなに美味しいのかしら。

私が食べ終わると差し出される桃を食べる。どれだけ食べてもお腹がいっぱいにならないから問題ね。つい食べ過ぎてしまうわ。



「ふう。ごちそうさま」

「お前も早いな」



も。というのがどういうことかは分からないが……あ。口元。今回は気をつけないと……よし。

顔を上げると人間がこちらに手を差し出していた。



「よろしく」



握手をし、お互いに挨拶をし合う。それと同時に私は人間を観察する……別に害があるわけじゃなさそうね。敵意も見えないし。まあ、この兎たちの包囲は外していいかしらね。



「よし。この人を解放していいわよ」

「いいんですか!?」



大丈夫だ。彼は恐らく何か……強いて言うなら観光目的のようなもので来たようにしか思えない。雰囲気からはそんな感じがする。けど、それだと兎たちに包囲されていたのに、少しも怖気づかないのが気になるが……だがそれ以上に。



「桃をくれる人に悪い人はいないわ!」



桃をくれる人に悪い人はいないのだから!


出会いがレイセンと同じだから台詞被りとかはご了承くださいな。

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