……言えないよ
ちょっと短いけど許して!
片付けしてたら遅れてしまった……
ピカッ
「ううん?」
何かが目の近くで光り、その光に反応して私は目を覚ます。目を覚ます。ということは私はいつの間にか寝ていたようだ。
よく回らない頭でそんなことを考えながら、これまた中々動かない頭を動かして光の発生源を見る。そこにあったのは
「あ。起きた?」
「え?あ。それ……」
「カメラだよ?」
カメラ。それは静止画を残すための……そんなもので私を撮ってどうするんだろう?
「だって。あまりにも仲良く寝てるんだもん。ねえ」
「「「うんうん」」」
「仲良く?」
言われて気付く太ももの上の温もり。慌てて見てみると、そこにはまだ起きる気配のない楽冶いた。
「ちょっ!ちょっ!楽冶起きてよ!」
「zzz」
「もう!楽冶ってばー!」
「zzz」
「ほらほら。まだ寝たいようなんだから寝かせてあげたら?」
うう……恥ずかしいけれど、他の兎たちも頷くので押し切られる形になってしまった。恥ずかしいよ。もう……
「じゃあレイセン。頬をつついてみてよ」
「いや……それは寝る前にやって怒られて……」
「一回なら大丈夫だよ。ほらほら」
周りを見回して仲間がいないことを悟った私は、溜息を吐きながらもう一回頬をつつくことにした。一回だけ。一回だけだから。
つん
パシャッ
「うん!いいのが撮れた!」
「何で撮るのよ!」
「だって……ねえ?」
「「「うんうん」」」
こいつはまだしも、周りの兎は何なんだろうか。頷くためだけにいるならでていけばいいのに……
「じゃあ次はー」
「何よ」
「んー。キスしちゃおうよ」
「はあ!?ばばば、ばっかじゃないの!?何考えてるのよ!」
本当に何を考えてるの!?もし楽冶が起きたら恥ずか……じゃなくて!怒られるちゃうじゃない!絶対それはできないわ!
「レイセン。顔真っ赤だよ」
「こ、これは!そのう……」
「大丈夫だって。誰にも言わないから」
誰にもって、ここですると七人の兎に見られてしまうんだけど……あと絶対誰か言うよね?皆そんなに口堅くないし。というか絶対に豊姫様か依姫様に問い詰められたら言うだろう。そんな皆の前でできるわけがない。だがそこは無駄にノリのいい兎たち。
「「「キース!キース!」」」
「えええ!?」
「という訳で。君に拒否権はないのだよ。レイセン君」
誰がレイセン君だ。
「皆本気なの!?」
「半々?」
性質悪っ!
「ほらほら。今がチャンスだよ?既成事実を作る」
「それは何か違うと思うけど……」
「早くやらないと、あのお二人にさっきの写真を見せるわよ」
「ちょっと!それは脅しでしょ!?」
あのお二人ということは、豊姫様と依姫様に他ならない。ここに来る前の喧嘩を思い出してゾッとする。あの二人を怒らせてはならない。一時の恥をとるか、命をなくすか。と言われたら一時の恥をとるに決まっている。
「分かった!やるから!だから絶対にあのお二人には見せないでよ!」
「分かってるよ。はい。じゃあ頑張って」
もう!そのニヤニヤ笑いがムカつく!本当に意味が分かないよ!
……しょうがない。あのお二人にさっきの写真を見られるよりは、楽冶に、その。キ、キスをしたほうがマシ。うん。数万倍マシだ。これは脅されてやらされている訳であって、私の意思じゃないんだ。
自分が今からすることを、心の中でできるだけ正当化させておく。そうじゃないと、折角お二人からのお叱りを逃げたのに今度は恥ずかしさで死んでしまう。
未だにキスコールをやめない兎たちを、少し恨めしげに睨みながらも楽冶に顔を接近させる。うう……すでに恥ずかしい。
「う。う〜……」
「「「キース!キース!」」」
そーっと顔を近づけて後二十センチ程に迫ったとき……
「やかましいっつってんだろうがあ!」
「わぷっ!」
急に楽冶が起き上がった際に、私に思いっきり楽冶の顔がぶつかった。
「何て言ってたか知らんがやかましいわお前ら!寝かせろ!」
「「「キャー!」」」
バタバタと逃げていく兎たち。何故か倒れているレイセンを残し、一人もいなくなってしまった。そういえば起きた拍子に、頬に何かぶつかった気がする。もしかしてレイセンか?すまん。
レイセンは気絶しているようだし、布団だけかけてやると部屋をでた。そういえば豊姫と依姫の喧嘩はどうなったんだろうか。見に行ってみるか。
部屋をでたものの、あの部屋がどこにあるのか分からない。仕方がないので恐らくそっちであっただろう方向に向かうことにした。そういえばさっきの兎、カメラ持ってたな。何か撮ったのか?……げ。分かれ道か。うーん。こっちだな。
某さっきの部屋
「(言えない。起きてたなんて……楽冶が顔を上げたときに、口が頬に当たってしまったとか絶対に……)」
顔を真っ赤にした兎が布団にくるまっていたとか何とか……
何と初キス(?)はレイセン!
その発想はなかっただろうというね。期待を裏切りたい。COPPEです。




