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東方楽々記  作者: COPPE
第七章 月の裏側へ飛ばされたらしい
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撃退後の侵入者

レイセン過去話に挑戦。


風邪ひいたかも。皆様もお気をつけください。



楽冶に手を引かれて屋敷の中を走る。豊姫様と依姫様が喧嘩を始めたためだ。ああなってしまう理由は分からないわけではないが、いくらなんでもやりすぎたと思う。そのおかげで楽冶と二人きりになれたから何も言わないけど。



「あれ?ここどこだ?」

「きゃっ!」



いきなり楽冶が止まったので、すぐ後ろを走っていた私は楽冶にぶつかってしまう。鼻を強くぶつけてしまったので、赤くなってないか手を繋いでいない左手で鼻をさする。うう。痛い……

鼻をさすりながら楽冶を見ると、きょろきょろ周りを見回している。迷ったのだろう。まったく……てきとーに走るからそうなるのよ。ここは私の出番ね。



「もう。迷ったの?」

「すまん。よく分からずに走ってたからな」



申し訳なさそうに言う楽冶に対し、私はふふん!と得意気な顔をして左手の人差し指を上に立てて少し振る。



「何か私に言うことがあるんじゃないの?」

「ん?あっちが外じゃね?」

「ちょっと!人の話を聞いてよ!」

「兎だろうが」



折角案内してあげようと思ったのに!

さらに軽くあしらわれてしまったことにより、若干気が沈む。むむう。いいところを見せるチャンスだったのに……

繋がったままの右手が引かれ、楽冶が歩いている方へ身体が勝手についていく。辿りついたのはここの屋敷で一番広い廊下。ここにでてしまえば大体の道のりは分かる。はあ……



「じゃあレイセン。無事にでれたことだし、どっかに案内してくれ」

「……え?」

「え?じゃなくてな……俺はここからでもどこに何があるか分からないから。どっか案内してくれと言ってるんだ」

「わ、分かったわ!」



何てチャンス!よかった〜。本当に全然覚えていないようで。どこに行こうかな〜。といっても敷地外にでたら怒られるだろうし……うーん。

あ。そういえば今はまた稽古が再開された時間だ。つまり私たちの部屋には現在誰もいないのではないか?



「多分……むう……」

「何だ?」

「敷地外に出たら結局怒られちゃうのよね。だから私たちの部屋に行くわ。他に行くところがないから」

「敷地外は無理なのか。残念だな」



月の都を見て回りたそうなので、あとで豊姫様に相談してみよう。依姫様はちょっと……厳しいから。

私たち戦闘要員の兎はあまり多くはない。月の都の高位な者たちの警護や、敵が攻めてきたときに戦うために配置されている。そしてここ。豊姫様と依姫様のお屋敷では、私を含め八人の兎がいる。私たちの部屋は協調性を高めるという理由から、大部屋一つに全員が住む状況になっている。

今日も稽古があったが、私は楽冶と仲がよかったため、月の都の入り口まで迎えにいき稽古を逃れた。稽古は大体夕食前まであるから、部屋には誰もいないはず。そういう結論に達したのだ。



「じゃあ行きましょ。こっちよ」



先ほどからずっと繋ぎっぱなしの手。さっきは引っ張られていたが、今度は私が引っ張り返す。

楽冶は「ま。行くとこないなら仕方ないか」と言うと、私に手を引かれ歩きだした。














「ただの迷子なんだから」

「いえ。幽々子様。迷子ではないです」

「いや、妖夢。迷子ということにしておこう」



月への侵入者を追い返してからすぐのことである。いつものように依姫様がいない間は、稽古をサボって他の兎たちと話していた。

そんなところに急に現われたのは、桃色の髪で扇子を持った女性。銀色の髪で刀を二本持っている女性。そして一般的な黒い髪を持つ男性。計三人。話しかけてきたのは桃色の髪の女性だが、その後に迷子か迷子じゃないのか話をし始めた。



「あのー……」



話の区切りがついたと思われるところで、私たちの部隊の、一応リーダーとなっている兎が声をかけた。



「もう一度聞くけどあなた達は?」

「先ほどいった通り迷子よ」

「……迷子です」

「迷子だ」



結局迷子ということで結論づいたらしい。リーダーも何を言おうか迷っているらしく、少し考えるような仕草をしている。と、そこで桃色の髪の女性が私たちの中の一人を指さした。



「あー!」

「えっ!?」

「美味しそうな桃じゃない!いただいていいかしら?」



一瞬にして(それくらい早かった)移動すると、仲間が持っていた桃を取って食べ始める。いいかしら?って聞いたのに答えを聞く前に食べるとは面白い人だ……あれ?人?



「あなたは実体がないように思えるんだけど……あなたは何?」



思い切って聞いてみた。一回気付くと分かる。目の前にいる女性は気配が異常に薄い。無いといってもいいぐらいだ。そして残りの二人も銀色の女性のほうは気配が薄いような感じがする。


「あら?気付いたのね?私は亡霊よ」

「亡霊?ということは地上の……」

「元はそうなんだけど何故かこんなところに来ちゃったのよ〜。だから言ったでしょ?迷子って」



なるほど、彷徨って何故か月に来てしまった訳か。それなら迷子というのは本当なのかもしれない。



「幽々子様。あまり食べすぎたらダメですよ?それも勝手に」

「そうだぞ。お前は遠慮というものを知らんからな」



銀色の髪の女性は溜息を吐いていたが、男のほうは桃を胸いっぱいに抱えていた。人のことを言えるのだろうか?



「お前が食べていいのはこれだけだ」

「えー。足りないわよ……」

「だから遠慮しろと……これだけ食べたらさっさと成仏しろ」

「むう……」



幽々子と言ったか。頬を膨らますともしゃもしゃと桃を食べ始めた。恐ろしい速度で桃がなくなっていく。十個以上あった桃が、一分ほどでなくなってしまった。



「ふう。満足してないから成仏してないわ。しばらく月の都を散策してみましょう。行くわよ妖夢」

「あっ!待ってくださいよ!」

「また来るわね〜」



それだけ言うと屋敷から出ていってしまった。一体何だったのだろう。しかし、幽々子という女性のためにもう一度桃をとりに行っている男性はいいのだろうか。



「ねえねえ」

「ん?何?」

「あの男って地上人だよね?」

「多分……そうだと思う」



あの気配はそれで間違いないと思う。同僚の兎は、なら捕まえるべきでは?という視線を送ってきた。他の兎たちと目配せすると、皆で頷き合う。

男性が戻ってきたところを狙って、銃剣を一斉に突きつけた。



「あれ?幽々子と妖夢は……っておわあ!」

「お前は地上の人間だな?」

「人違いです」

「人間じゃないか。よし。とりあえず豊姫様か依姫様に知らせるぞ」



とりあえず独断で決めることのできない私たちは、豊姫様か依姫様のどちらかに言わなければならない。



「じゃあいってくるわ」



豊姫様はよくしてくれるし、依姫様も真摯に接してくれるけれど。やはり位が高い者と話すのは緊張するのであまり好まれない。そういう時は下っ端の私が必然的に話にいくことになる。下っ端の宿命だ。


さて、二人はどこにいるのだろうか。多分豊姫様なら自室にいると思うのだけれど……


はっくしょい!

鼻水が……


やはり汗だくでバイクがいけなかったのか

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