比較したのは秘密の話
終わってしまった彼岸編
この前初めてmikoさん見ました。
俺の横には映姫がいる。
それはたまにあることなので、そんなにおかしくないのだが、場所が人里で映姫と手を組んでいる。というのは絶対におかしい。
しかも現状がよく分かってない俺と違って、映姫は笑顔なのだ。これは絶対におかしい。
「どうしたんですか?」
不思議そうな顔をして映姫の顔を見ていたのに気付いたのだろう。映姫は俺に疑問をぶつけた。
「何かあったんですか?」
「映姫……何で俺たちはこんなところにいるんだ?」
俺が答えなかったためか、もう一度質問をしてきた映姫に今度はしっかりと返事をする。
しかし今度は俺ではなく、映姫がキョトンとした表情になり口を開く。
「何でって……あなたが今日は人里に行きたいと言ったんじゃないですか」
「は?」
全く言った覚えがないことを言う映姫。こいつは一体何を言っているんだ?俺の形をしたナニカに騙されてるんじゃないのか?
そんな事が頭を過ぎるが、映姫の性格や閻魔であることなど色々考えれば、そんなことはほぼ百パーセントないだろうということが予想できる。つまり俺が言ったのだろう。しかし記憶がない……何故だ?
「は?じゃありませんよ。あなたと私が付き合いだして十年目です。それをあなたが覚えてくれていて、こうして買い物に来たんじゃないですか」
「はああああ!?」
少し受け入れようとしてたらまさかの!?いつから映姫と俺は付き合いだしたんだ!?いやそれは映姫曰く十年前……いつの間に十年たったし!
いくら何でもそれは受け入れきらないぞ!
「これは夢だな。うん」
「何を言っているのですか?ほら行きますよ」
「いや夢だ。夢だ。夢だ……」
「全くもってその通りだったな」
目が覚めた途端にこの言葉。
いやだって夢以外考えられんだろ。この物語初の夢オチだがどうだった?何と本人が分かっている夢オチだ!
というか今何時だ?って時計ないな……
外を見てみるとまだまだ暗い。どうやら目を覚ますのが早すぎたようだ。
「らくや……?うるさいですよ?むにゃ……」
おっと。少々喋りすぎたようだ。映姫を起こしてしまった。
朝に起こす分はそうでもないが、こんな時間に騒がしくして起こしてしまうのは何か申し訳ないので軽く謝っておく。
「悪い悪い。ちょっと変な夢を見てな。ほら。俺も寝るからお前ももう一回寝ろ」
「変な……夢ですか?怖い夢で……すかあ?」
違うわ。何かお前とただならぬ関係だった夢だわ。
「違う。ほら寝ろ寝ろ」
「ダメですよー?怖い夢見た……なら……一緒に」
聞いちゃいねえ……というか幻想郷の女性たちは皆寝起きが悪いというか、寝惚けてる可能性高くね?
しかも寝惚けてる間は人の話を全く聞かないような気が……いやまあ覚えてないけど。むしろ相手の方が起きてる可能性が高いけど。
「……寝ましょう」
「…………は?」
映姫が昨日の小町よろしく抱きついてきた。といっても映姫は俺より小さいので胸に潜り込む感じだけれど。
だが小町と違って、その。何だ。胸がアレなので全然恥ずかしくなく、逆に微笑ましくなってしまう。
「まあいいや。寝よう」
背中まで手が回っているので振りほどくのも面倒くさく、そのまま二度寝……気絶含め三度寝を始めるのであった。
「キャー!!!」
「んが?」
突然の悲鳴で目を覚ます……が。寝ていた為変な声を出してしまった。
まあいい。俺は別に「変な声でた!?」となる人じゃないし。
周りを見て悲鳴の発生源を特定しようとするが見当たらない。んー?一体どこから悲鳴が?
そう考えていると何か胸の中でジタバタ暴れている存在が。
「映姫?何してんの?」
「ぷはっ!何してんの?じゃありませんよ!一体何をしているんですか!?」
息苦しかった為か顔が赤くなった映姫に早口に捲くし立てられる。
ええと……映姫が胸にいた理由?確か……
「映姫が抱きついてきたハズだぞ?」
「そうですか私が……えええええ!?そんなハズありませんよ!」
「いや、俺が超早朝くらいにお前を起こしてしまって、寝惚けたお前が『怖い夢を見たなら一緒に寝ましょう』とか言って抱きついてきた気が……」
「ふぇ」
ボンッという感じで顔が赤くなる映姫。まあ恥ずかしいよな。相手が悪いと思っていたら実は犯人が自分だったなんてな。
そんな映姫は俺の胸の中から抜け出そうともがき始める。
そして俺はある部分に反応する。それは……頭だ!
「逃がすか!」
「へ?……ひゃあああ〜!」
「ふははー!久しぶりのなでなでタイムだぜ!」
「や、やめてくださいよ〜!……やめ。やめ。やめなさーい!!!」
「ぐはっ」
どこから取り出したのか分からない悔悟の棒で後頭部を殴られた。しかも表面じゃなくて側面で。めっちゃ痛い。
「てめっ。映姫。それはいってぇ〜……」
「ど。どう考えてもあなたが悪いですよ今のは!どさくさに紛れて何をしてるんですか!」
いや別にどさくさに紛れてはいなかったし、そもそも頭なでは俺の忘れられてるスキルの一つだぞ。どうせ映姫も忘れいたんだろうけどな。
映姫の前になでたの誰だっけ?……思い出せねえけど結構前だよな。
殴られた後頭部を押さえながら立ち上がる。明るさ的に結構いい時間だと思うし朝食の準備でもすることにしよう。
まあここには実は食堂があるんだけどな。映姫は利用したりしなかったりするから、食材を確保しているだけで。昔小町の部屋に行った時なんか冷蔵庫なんてなくて、棚に大量のお菓子が入っていただけだった。
「あ。いいですよ。朝食は私が作ります」
「……大丈夫か?たまにやっていると言われても、やはり不安が」
「大丈夫ですよ!普通に作れます!ましてや朝食は別に凝った料理は作りませんから!」
とのことなので映姫に朝食はまかせることにした。大丈夫であることを願いたい。
「じゃあ小町。今度はしっかりと頼みますよ」
「大丈夫ですよ。今度やったら大変なことになりそうな気がするんで」
「まあ俺も勘弁だな。もう一回漂流するのは」
映姫はすぐに仕事が始まるそうなので、まだ自由がきく朝方に帰ることにした。
といっても映姫は行って帰る時間はないので、見送りしかできないとのこと。閻魔は大変だな。
「まあ……また暇があったら来るわ」
「魂で来るんじゃないよ?裁かれるから」
「うるさいですね。そんな簡単に裁きませんよ。楽冶の魂は」
「それはありがたいな」
と。これ以上遅くなると映姫がギリギリになってしまうので、もう船に乗り込むことにする。
「それではまた会いましょう」
「ああ。またな」
「じゃあ四季様。ちょっと行ってきますね」
小町がゆっくりと船を動かす。岸から船が離れ、川を渡るために動き出す。
こうなったら小町にすべてを委ねるしかないので、最後に映姫に手を振っておいた。
と。いっきに映姫が見えなくなる。小町が距離を操ったようだ。
「今回はどんくらいかかるんだ?」
「そうさねえ。どのくらいがいい?」
「じゃあいつも通りで」
「だろうねえ。楽冶らしいよ」
三途の川をゆっくり渡る船の上で、俺はまたしても横になるのだった。
あ。頬を突くの忘れてた。
さあ紅魔館にいこう
今日は中々いい時間にあげれたじゃないかって?
インスタントうどんを待つ時間が暇だった。




