話せる魂は珍しい…と思ったら
まあ…何とか√やっていきましょう。
むしろ前回の手をパタパタしてるのが可愛かった気がする。
「四季様〜。いくら何でも殴らなくていいんじゃないですか?」
私。四季映姫・ヤマザナドゥは、部下である小野塚小町と話している。
この小説でも何回も述べたと思いますが、ヤマザナドゥは名前ではなく役職だ。だからヤマザナドゥで呼ばれるのはあまり好きではない。
因みに ヤマ が閻魔で ザナドゥ は楽園という意味。つまりここ。幻想郷の閻魔です。
「何を言っているんですか?小町。楽冶は盗み聞きする気ですよ?」
「本当ですか?それ」
「私の目に狂いはありませんよ。顔を見れば分かります」
本当は恥ずかしかったので気絶させただけ。なんて言えない……
それに楽冶なら盗み聞きをする可能性も高いので、もしかしたら正解だったかもしれない。性格上絶対気になっていると思うのに、すぐに出ていこうとしたのが特に怪しい。
と色々考えてみますが、所詮は言い訳。自分でも分かっているので、心の中で溜息を吐いておきます。はあ……
「それで小町。そろそろ意味を教えて貰いましょうか。話を逸らそうとしても、そうはいきませんよ?」
「いやですね。四季様が恥ずかしがると思ったから話を逸らしたんですよ?」
「わ。私は恥ずかしがったりしません!」
「抱きしめられてお腹を殴ったのは?」
…………
小町がここぞとばかりに私を見つめてくる。
正直に答えることはできない。だって……恥ずかしいですから!
「れっ、レディーにいきなり抱きついたりするからです。当然の処置だと思いますが」
「本当はそんな理由じゃないでしょう?四季様〜?」
ついにはニヤニヤしながら聞いてきました。
何かうっとおしいですね……ですがこれ以上責められると私は反撃できません。ここは……
「小町……今日は色々と大目にみてあげましょう」
「本当ですか?」
「ただ……楽冶の看病は私が「四季様は仕事が忙しいでしょうから楽冶の看病はあたいがしますね」……分かりました」
大目にみると言った手前、あまり強く言うことはできなかった。
うう……折角楽冶を看病しようと思っていたのに……こういうことがあると、確かに閻魔の仕事は多いのだけれども、少しは休みをくれてもいいんじゃないかと思ってしまう。
もちろん閻魔の仕事は充実している(ストレスは溜まるけれど)し、やりがいもある。けれど休みが少なすぎるだろう……丸一日休みなのが月に一回だなんて。
心のなかで愚痴を言いつつも、小町が楽冶を布団に寝かしにいったのを見て、私は閻魔の仕事に取り掛かるのであった。
一通りの仕事を片付けて一休みしていたら、ドアをノックする音がした。
「四季様。あたいです。小町です」
「小町ですか。入っていいですよ」
本当はもっと厳格にしなければならないが、小町との付き合いは結構長い。私が幻想郷の閻魔としてここに配属された時にはすでにいて、それから一度も変わっていないからだ。
それだけ長く仕事を一緒にしていれば、いくら厳しいと評価される私でも少し甘くなってしまうのは仕方がないと思う。
「どうしたんですか?あなたがこの時間に帰ってくるなんて珍しいですね」
小町は結構サボり魔だ。私が休憩しているであろう時間帯は、小町も寝ていることが多い。だから自分の仕事を始める前に彼岸に行って、ほぼ毎日小町を叩き起こしている。
小町を初めて見た時は、もっとマジメなやつだと思っていたのに……はあ……
「ちょっと四季様に会ってみたいっていう魂がいましてね」
「会ってみたい?天国か地獄か裁きますよ?魂ならば」
「……そこは本人と相談してください。入れてもいいですか?」
「まあ、今は休憩中ですから無闇に裁くことはしません。いいですよ」
そう言うと小町は
「おーい楽冶。入っていいってよ!」
「あいよー」
すぐに待っているだろう魂であろうの名前を呼んだ。そういえば話すことができる魂は珍しい。私も久しぶりに魂と話すことになる気がする。
だがそれ以前に……
「(ラクヤ?)」
どこかで聞いたことのある名前だった。確か人里で……
「悪いな小町」
「いいっていいって。予想通り休憩中だったからね」
「それはよかった。で。閻魔様っていうのは……」
「小町。今ラクヤと言いました……」
「って。お前かー!!!」
「って。あなたですか!!!」
二人揃って叫んだ。
その状況に小町は目をパチクリさせて
「あれ?二人とも知り合い?」
「知り合いも何もこいつは……」
「知り合いも何もこの人は……」
「人里で俺を長時間説教したやつじゃねえか!!!」
「人里で私を幼女扱いしてきた人じゃないですか!!!」
ボウリングに行ったときに
てゐ
と書いて渡したけど、画面に表示されたのは
てい
だった。




