第1話:蒼色の願い
願いを叶えたかった。たとえ、罪を犯すことになっても
あの人だけは、幸せになってほしかった――。
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荒野に、一人の少年がたたずんでいた。あたりは暗く、その容貌ははっきりとしない。
「自由の指輪よ、選民へ下れ」
その少年が呟くと、少年の周りが唐突に明るくなった。いくつもの強い光が、あたりを照らした。それによって、少年とその周りの状況が見える。
16ぐらいの黒目黒髪の少年だった。しかし、その顔に歳相応の表情は全く見られない。それなりに整っている顔は、淡々としていて冷え切っていた。その無機質な顔の中で、暗い闇色の瞳が唯一、強い覚悟の光を放っている。
「五個か……。気が遠くなるな」
特に表情を変えないまま、手を招き寄せるように動かすと、あたりを漂っていた強い光が少年の手へと集まる。その光は指輪だった。1つ1つ、全く同じ指輪は無かったが、不思議な事に全てが同じ物のように見えた。指輪が少年の手に収まる度に光が消えていき、辺りが再び暗くなる。
少年は、あたりを見渡した。光の無くなった世界は暗い。しかし、闇になれた少年の眼は、自らの作り出した惨状がはっきりと見えた。
少年の周りには、ただのモノとかした人々が転がっていた。
その全てが、手ひどく痛めつけられ、自然死でないことを証明している。中には、本来の形すら残していない物さえあった。
「気性の荒い人たち。別にこんな姿になるまで戦わなくてもいいのにね」
自分が仕組んだことだというのに、少年は他人事のよう言った。そして、少年は冥福を祈る事さえせず、その場を離れる。
残されたモノたちは、夜の深い闇に静かに飲み込まれていった。
次の日の朝、少年とモノのいた荒野には何も無くなっていた。昨晩、この場で惨劇が繰り広げたことがまるで夢であったかのように……。
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だから祈ったんだ。自分の全てを捨てて。
神様でも悪魔でもなく、自らをゲームマスターと名乗る道化師に――。