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3-2 エーレンベルク公爵家への招待



王都へのカフェ出店計画は、順調に進んでいた。


お店については、場所の選定、規模や外装、内装に至るまでこちらの希望をもとにランバート商会で手配して進めてくれている。

そして、何より心強いことに、カフェの立ち上げにあたってエーレンベルク公爵家の方で大きく関わっていただけることになった。


エーレンベルク公爵家は、この国で最も力を持つ家柄といっても過言ではない。

資金面でも大きく援助していただけることになり、さらに規模の大きい話となってしまった。期待も大きく、希望があれば何でも協力すると言ってくださっている。


今回、このような形になり、本当にありがたい。


グランベル伯爵家側で考えられたことをランバート商会を通して、エーレンベルク公爵家側に提案する。

承認されるとエーレンベルク公爵家の協力のもと実現していくという形だ。


小さな田舎の一領地のグランベル伯爵領だけでは、到底実現できなかったことだろう。



そこで、今回カフェで出すお菓子や料理について相談していきたいということで、エーレンベルク公爵家で試食会が行われることになった。


私は、料理を提案する方の立場として、またランバート商会の一人として参加すればいいのかと気楽に考えていたらとんでもなかった。


このカフェ立ち上げの提案者、グランベル伯爵領代表として招待されたので貴族令嬢として参加しなければならないとルシアン様に言われたからだ。


「アリシア嬢。心配しないでくれ。今回ランバート商会としてドレスと侍女を準備させてもらった。これからもこういう機会は増えていくと思われる。今後も困らないように、準備しておいた方が間違いないだろう。侍女の方は、今回の侍女が気に入ればアリシア嬢専属で契約させようと思っている。」


ルシアン様にそう提案されて驚いてしまった。しかし、カフェのオープンに向けて、いろいろと貴族の前に顔を出さなくてはならない場面も確かに出てくるだろう。


「ルシアン様。ご配慮いただき、ありがとうございます。ぜひ、そのようにお願いしたいと思います。」


私も、今まで意識してこなかったところでもあるので、そのような提案をいただけるのはありがたい。



ランバート商会に準備いただいたドレスに着替え、侍女にお化粧もしていただいた。


「アリシア様。いかがですか?」


侍女に声をかけられ、鏡を見て驚いた。


「これが本当に私なの?なんか、別人になったみたい。」


私が驚いて、鏡に視線を向けながら声を出した。


「アリシア様は、もともと目鼻立ちの整った美しい令嬢です。お化粧をして更に美しさが増しました。私もお化粧のし甲斐があって、とても満足できる仕上がりとなりました。とてもお美しいです。」


侍女に褒められすぎて、顔が熱くなってきてしまった。


「ちょっと褒めすぎよ。あなたの腕が最高だっただけよ。本当にありがとう。これからも私の侍女として務めていただけるかしら。」


「はい。もちろんです。これからもよろしくお願いいたします。」


私が、感謝して今後のことを尋ねると、すぐに色よい返事をいただけた。



そうして伺ったエーレンベルク公爵家。


公爵家では、公爵たち三人が迎えてくれた。


「よく来てくれたね。アリシア嬢。ルシアン。」


公爵が笑顔で挨拶をしてくださった。


「本日はご招待いただき、ありがとうございます。私がアリシア・グランベルです。以後お見知りおきを。」


私は、なるべく丁寧な振る舞いを心掛けてカーテシーをした。


「これは、ご丁寧にありがとう。会えてうれしいわ。ほら、グレイス。あなたも挨拶して。」


公爵夫人は、隣で赤い瞳を見開いたまま固まっている金髪の男性に声をかけた。

男性はその声にようやく我を取り戻したのか、柔らかな笑みを浮かべ挨拶をした。


「少し取り乱してしまって済まない。私は、グレイス・エーレンベルクだ。今日はよろしく頼む。」


そう言って、もの言いたげに私に視線を戻した。


「まあ、座りたまえ。今日は、カフェに出す料理やお菓子を食べられるということで楽しみにしていたんだ。」


今日は、前もってカフェに出す予定の料理を練習していた料理人に公爵家で腕を振るってもらったのだ。


まずは、私の領地で作った野菜にジャムを使ったドレッシングをかけて見た目よく盛ったサラダが出てきた。


「これは、グランベル領自慢の野菜にジャムのドレッシングをかけたものです。お召し上がりください。」


私も、美しい見た目に満足し、嬉しくなって説明をする。公爵は、その見た目に驚いた後、ゆっくりと口に入れた。


「ジャムのドレッシングがまた、さっぱりしていてとてもおいしい。もともとの野菜の味もなんて濃くておいしいんだ。見た目も美しい。」


「これが、アリシア嬢の自慢の野菜たちなんだね。これはおいしい。」


領地の野菜を褒めてくださったことに気をよくして、心の中でこの二人に野菜派仲間認定を下した。


このあと、ハーブを入れたスープやハーブを添えて焼いたチキン、アップルパイ、ハーブティーなどを食べていただいた。


「どれも、新しい。そして、味わい深い。これは、流行るぞ。」


「見た目もとても良いのね。デザートが特においしかったわ。」


「どの料理も食べたことのない味わいだ。このお店ができるのが今から楽しみだ。」


みんなに喜んでいただいて、嬉しくなってしまった。


どうやら、カフェに出す料理は合格点のようだ。



食べ終わって少しすると、公爵がルシアン様に向かって声をかける。


「少し、カフェの計画について聞きたいことがある。この後、少し時間をもらっても?」


「はい。もちろんです。アリシア嬢も一緒の方がよろしいでしょうか?」


ルシアン様が私に視線を向けた後、公爵に聞いた。


「いや。経営に関することだけだから...グレイス!アリシア嬢に庭を案内したらどうだ。」


公爵は、そう言うとすぐにルシアン様と話をし始めた。


「それでは、我が家の庭を案内しましょう。お手をどうぞ。」


グレイス様は静かに立ち上がり、私に向かって手を差し伸べた。


経営の話と聞いたら、仕方がない。


私は、グレイス様の手を取り、庭園に案内していただくことにした。



手を差し伸べたグレイス様の耳が赤くなっていることに気づいたのは、静かに見守っていた公爵夫人だけだった。

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