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  作者: チキ
3/5

○●3






しばらくして、ふと後ろを振り返った。



すると


そのキャンパスに描かれた絵を見て、思わず息をすることでさえ忘れた。




真っ黒に塗りつぶされ

所々に散らばっている星たち。


その絵に吸い込まれてしまう



と錯覚するほど、人の心を奪う絵だ。



そいつの着ているTシャツにでさえ吸い込まれそうだ。

絵とよく似ているTシャツにでさえ…




そんな俺を見ていたかのようにそいつは、振り返った。

うっすらと笑みを浮かべ


「今年の新入生には、空の絵ばっか描く、すげぇーうまい人がいるって聞いていたんだ。」

「はっ?」


いきなり話すそいつに、俺の頭はついていかない。


「その」


そいつは、俺の絵を指して続けて言った。


「その絵みたいに君は広がる空のように青い人だね。」


俺が目が点になるのを他所にそいつは笑っている。


「意味わかんねーんですけど…」


多分

年上だと思うから一応敬語で。


「その絵、僕は好きだよ」







今まで俺は人に流されないと思っていたが、


こいつにはなんだか…流されそうになった。



その笑顔と真っ黒な絵に。



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