兄さんの雨
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私は兄さんが正直言って初恋だった。
年上の男子なのに、年下で、小学生の私と仲良くまでしてくれて。
そんなの、恋しちゃうじゃん。
初恋しちゃうじゃん。
兄さんがこの町を去って、
中学、高校、大学とこの町で過ごしてきて
同じ学校の人、他校の人、バイト先の人
今まで3人の彼氏が出来た。
でも、みんな私の事を全く大事にしないで、ぞんざいに扱ってて。
私のことを見てくれなかった。
だから、もう、男性は懲り懲りだと思ってた。
でも初恋って美化されちゃうものなのを知ってる私は。
私、彼氏と別れる度、
少しだけ、ほんの、すこしだけ
雄一郎兄さんを思い出しちゃう私の心を殴りたくてしょうがなかった。
「香奈ちゃんは、てっきり都会に上京するのかと思ってた」
そう気まずい空気を雄一郎兄さんは気にしないで話しかけてきた。
「えっと、私都会に行く気はなかったの、地元で学んで、就職したいかったの」
「うん、いいね。
上京して東京の大学行った俺とは大違いだ」
「そ、そんなことないよ。
東京の大学って、すごいじゃん」
「いやいや、多分ここと何も変わらないよ。
ここに帰ってきて思うけど、やっぱりここは温かいよ、人情味というかさ」
「そうなんだ…」
私はふと、気になって雄一郎兄さんに
「雄一郎兄さんはどうして、東京の大学行ったの?卒業した後、何してたの?」
と、就活のことも聞いてみたかったから
何気なく聞いた。
そのあと、兄さんの顔が強ばったのを私は見てしまった。
私でも、これはいけないことをしたというのをよく理解した。
「あ、ごめん、言いたくなかったら」
雄一郎は口元に笑みを浮かべて
「ああ、いやいや、ごめんね、ボーッとしちゃった。言えるから大丈夫だよ。
香奈ちゃんは優しい子だね」
と軽く優しく言ってくれた。
やめてってば。
「俺は何となく、この町を出てみたかったんだ。あ、もちろん、学びたい分野のある大学にも行きたかったしね」
「で、俺は大学で恋人が出来たんだ。」
心の中の雨が降り始めてきた。
「兄さん、彼女、いるんだ」
そう話をつい遮ってしまった。
私の心がチクチクと針を刺されてるような痛みを感じた。
「あー、でもね、もう別れちゃったんだ」
「え!そうなの…?」
「うん、ちょうど…半年前とかにね。」
「あ、そうなんだ、
ごめんね話遮っちゃって。」
大丈夫だよ、と言う兄さんを横目に
私は少し、安心した。
「その後卒業して、東京の会社に就職して、彼女と同棲までして、その後
婚約までいったんだよ。
あの時は嬉しかったなあ。」
「なんだけど彼女が浮気して。」
「…しかも、香奈ちゃんに言う事ではないかもしれないけど、相手の子供まで授かっちゃってたらしくて。」
「少し嫌になったよね、少し無理してまで彼女に喜んでもらう為に婚約指輪まで送って。」
「やっと、こんなにも好きな人と結婚出来るって思ったらさ。」
「俺、朝から晩まで考えてしまうほどものすごい嬉しかったのにさ。」
はは、と乾いた笑いを兄さんは浮かべる。
「それで、こっちに帰ってきたの?」
「うん、恥ずかしいけどね。
東京に居て、このまま働き続けようかなとは思ったんだけど、ちょうど両親が実家のこの古本屋を辞めるって話してたから、それなら俺が継ぐって勢いで言っちゃったよ。」




