二話
「は〜」
お風呂から上がって、自分の部屋のベッドに寝転がってくつろぐ。
今日は疲れっちゃったな。
手に持ったクッションを抱きしめて、ゴロンと寝返りをうつ。
寮には共有スペースもあるから、誰かしらと顔を合わせるから心細くない。
ふとスマホを見ると、いつの間にか夜の十一時になっていて、そろそろ眠くなってきたなぁと思いつつ、喉が乾いたので冷蔵庫を開けるが、中身は空っぽ。
仕方ないので、お茶を買いに行くことにした。
財布を持ってドアを開ける。
廊下をまっすぐ歩いて、連絡通路を通り、隣の棟まで行くと、自販機や沢山のベンチが並ぶ共有スペースが見えたのでそこに立ち寄る。
うーん、緑茶にしようか麦茶にしようか。財布を片手に頭を悩ましていたら、後ろから声をかけられた。
「あ、文ちゃん」
聞き慣れた声に振り向くと、紺色のパーカーを被っている男の子がいた。
「エイくん」
彼は『エイブラハム平原の戦い』名前が長いので殆どの人からはエイくんと呼ばれている。彼も同じく新聞部員なのだが、最近オンラインゲームにハマって引きこもり気味。
エイくんはササッと私の方に駆け寄ると、ニコニコしながら話しかけてくる。嫌な予感が、、、。
「文ちゃん、お金かし」
「貸さない」
三秒間の沈黙。
「お金」
「貸さない」
「お金貸して」
「貸さない」
「頼む」
「断る」
「頼む」
「断る」
「頼む」
「だーかーらー、貸さないって言ってるでしょ!?」
そう、課金やら何やらで年中金欠なエイくん。笑顔で話しかけて来る時は大抵お金を貸してと頼まれる。
「あれー、何しているんですか?」
「喧嘩じゃない?」
二人分の声が聞こえてきた。非常口の近くに立っていたのはそっくりな双子。
クリーム色のクマのぬいぐるみを抱えた『第一次世界大戦』(長いので一くん)とキリっとりた目付きの『第二次世界大戦』(長いので二くん)
「まだお風呂入っていないの?」
よく見ると二人はパジャマ姿ではない。
「うん」
「兄さんの裁縫が終わるまで待ってた」
「一くんのぬいぐるみ、、、えっと、クマ三郎だっけ?それも手作りだよね。そりゃ上手い訳だ〜」