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一話

広々としたアプローチの向こうに、重厚(じゅうこう)な建物がそびえ立っていた。

宮殿なのか城なのか、とにかくその規模は広大だ。四階建ての砂糖菓子の様な純白の外壁には窓がずらりとはめ込まれている。外からマシンガンをぶっぱなしても内部には傷一つない程の堅牢(けんろう)な造りだ。

何故そう言い切れるのかというと、実際にぶっぱなした人がいるから。

ここはWH(ワールド・ヒストリー)学園。世界の真ん中にあるちょっと変わった、、、というか不思議な学校。

「文明開化は今日も部活?」

帰る身支度を済ませて部活に行こうとしたら、友達の『フランス革命』に呼び止められた。

「うん、今日も部活〜。フランス革命は?」

「今日は休み。寮に帰って三月革命にちょっかいかける」

「ほどほどにね、、、」

フランス革命も三月革命も、この学園に来てから仲良くなった。

まぁ、二人の出身地はヨーロッパで私はアジアだから、名前は聞いたことあっても会ったことはなかったんだよね。

部室として使っている教室のドアには『新聞部。部員募集中!!』と書かれた紙が貼られている。

「こんにちはー」

部室には(すで)に『百年戦争』が椅子に腰掛け、ペンを指で(もてあそ)んでいた。この人は大抵ここにいる。

「お、文明開化。来たかー」

百年戦争が嬉しそうに言った。

「今日は早いね。いつもは遅いのに」

通学(かばん)を机に置いて百年戦争の前に座った。

「まぁね。お兄さん、今日は補習なかったから」

補習かぁ、、、。

「補習に呼ばれるまでサボってるの、、、?」

「いや、そんなことはないけど」

百年戦争はワークを鞄に入れ、部室の棚から『持ち出すこと厳禁』と書かれた茶封筒を取り出した。

茶封筒の中身は構内新聞に載せる為の取材内容や一部推敲(すいこう)済みの新聞が入っている。

「今月の校内新聞のテーマは部活だったね」

「そうそう。取材したとこは合唱部、吹奏楽部、手芸部、アヘン対抗同好会、機械工学部、寒冷地同盟部、冬将軍対策同好会、革命部、、、」

「取材を通じて分かったけど、この学校まともな部活が三つしかないね」

「そもそも部活に入っている人は少ないでしょう」

入り口の方から声がした。振り返れば、眼鏡をかけた青年が立っていた。

「一番多い革命部でさえ、五人です。全部活を合わせても二十人もいきませんよ」

彼の名前は『氷上(ひょうじょう)の戦い』新聞部と寒冷地同盟部の掛け持ちをしている。

「よ、氷上の戦い!元気そうだな〜」

百年戦争が手を上げて言った。

「元気なものですか。エイブラハム平原の戦いを学校に連れ戻すように説得してきたところです。古新聞みたいにくたくたですよ」氷上の戦いは首を回しながら、私の隣に腰掛けた。

「エイくんは今日もゲーム?」

「そうですよ」

「真剣に頼むんだけどね。お兄さんもサボりたいな」

「百年戦争くん。冗談は今月分の原稿が終わってからにしてくれませんか?」

「、、、もう氷上の戦いが部長で良いよ」

「嫌です。面倒臭い」

「え〜、、、」

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