必殺キックは色々と引っかかりそうなので。
おはよううなぎ。
俺だよ、バイクに転生したヒューマノイドタイプの地球人だよ。今日はあんまり無駄話をする時間がないみたいだ。
「お、オデ……ヅヨイ!オマエ……より!」
「ぐぅ……」
なんかすごい音がしたので起きたら、寝起きに俺の目の前ではサボテンみたいな気持ち悪い化け物が、可愛い女の子に対して触手を伸ばして身体をまさぐるというエロゲーみたいな光景が起こっていました。
……何故?と言うか、また化け物?何、何なの?この世界普通に化け物うろついてるの?道に出たら化け物とエンカウントとかポ◯モンかよ。
俺はただ……昨日の夜に雨が降って、雨に濡れるのが嫌だからバイクになって、近くのトンネルに雨宿りして眠ってただけなのに……!
しかし、あの女の子何処かで見た様な……そうだ!駅前の広場でスカイブルー髪の女の子と一緒にいた子だ!
……なんた格好してんだあの子。あんなピッチリボディスーツ着て、何処の対◯忍だよ。と言うか、あの子もコスプレイヤーだったのか。
にしても服装攻め過ぎだな。……でも、あの落ちてるアックスも含めて出来は良いな。
しかし、なんでこんなトンネルでコスプレしてるんだ?化け物に披露するためじゃないだろうに。
……さて、どうするか。なんかこのままだと犯されそうな雰囲気だよな。エロゲーをやり込んでいた俺にはわかる。凌辱される奴だな。
正直俺触手プレイは好みなんだけど、この姿になってから何故だかバイクにしか興奮できねぇんだよな。マフラーの穴が大きいと興奮する。
……そんな馬鹿な話してる場合じゃねぇな。
さすがにこのまま見てるだけってのは、オレの心に後味の悪いものを残す。
あのアメーバ相手に使った力、使えるかわかんねぇが……まぁ、無理でも逃げ出すくらいはできんだろ!
安牌安牌!仮にぶっ壊されても、どうせ一度死んでるし二度目変わらんて!
俺はけたたましくエンジン音を響かせると、その場から動き出す……すると、あのサボテンみたいな化け物や、あのオレンジ髪の女の子も見てくる。
「ン?ン?な、ナンダ?」
「……?」
さて……やってやるぞ!
『チェェェェェンジ!!バァァルッ!ナイザァァァァァ!!!!』
俺が決意を固めた途端、そんな俺の声が響き渡り俺を変形させる。以前のアメーバの時よりも気合の入った声だ……と言うか、なんで俺の声なんだよ。
俺は視界が高くなり、四肢が現れるの感じながらその場に立ちはだかる。
「バル……ナイザー……?」
バルナイザー……そうか、この姿の俺の名前はそうなるのか。チェンジバルナイザーって言ってるからな……ゲッ◯ーかよ。
「オ、オマエ!?ナ、ナンダァ!?ナニモン、ダァ?」
あ?俺がなんなのか……ふふっ……
「俺が何か……だと、そんな事俺が知るか!」
本当に分かんないんです。
誰か教えてください。
「寝起きに凌辱エロゲみたいな光景見せつけやがって……変な気分になっちまったろうが。」
「ナ、ナラ!オデ、ゴノ女!オマエにも貸スゾ!?」
ちっ……見た目だけじゃなくて中身も気持ち悪りぃな。確かに、前世の俺ならば魅力的な提案だ……だがッッ!!
「悪いな、俺ぁもうメスのバイクにしか興奮できねぇんだよ……テメェが何なのか知らねぇが!轢き殺してやる!」
「ウ……デ、デモオデの方!ヅヨイ!!」
そう叫ぶと、目の前のサボテンみたいな化け物は触手を伸ばしてくる。
俺は飛び掛かる触手を真っ向から殴りつける……すると、触手は拳を打ち付けられた衝撃で破裂し引きちぎれる。
「オ、オ、オデの!がぁ!」
「……前のアメーバよりかは歯ごたえありそうだな。」
前のアメーバと違って、コッチの腕も触手とぶつかり合えば少しピリピリと痺れる……だが、気になるほどじゃあない。
「ヨグ、も!ヨグゥモォ!!」
「っ!!」
サボテンの怪物は、四方八方から触手を伸ばしてくる……俺はそんな触手を次々と回避し、触手を殴りつけてる。触手が見える!見えるぞ!
これなら何本でも対処できそうだ……しかし、このまま触手を殴り続けてもジリ貧になるのは目に見えている。本体を叩きたいところだが……
俺がそんなことを考えていると、俺の顔をかすった触手が花のように開き、黄色い粉を俺の顔に浴びせる。すると、サボテンの怪人は高笑いをして俺に告げた。
「グァ!ヴァー!オデの毒食らった!お前終わり…!!」
「っ!そんなっ!?」
毒だと!?ヤバいな……もしかして、あの子がさっきから動かないのもこの毒にやられて……か……
「ぐっ……不味い……か……?」
……あれ?でも、なんか何ともない。全然身体動く……って、やべぇ触手が!
「おりゃっ!」
「な、ナンデ!?ウ、ウゴケル!?オデの毒!ヒトには、絶対聞く!」
人には……?あぁ、そうかそう言うことか。
「なら、俺に効く道理はねぇな。」
そりゃ、こんなバイクから怪人に変身するようなやつが人間な訳ないわな……俺って本当になんなの?ロボットなん?
「お、オマエ!き、キモい!訳、ワガラン!」
「キモいはお前には言われたくねぇ……よっ!!」
訳わかんないのは俺も同じだから否定はしないがな!俺は即座にサボテン怪人へと駆け寄る。いい加減触手を叩くのも飽きてきた。ここは本体をびしっと始末したいところだ。
しかし、サボテン怪人は俺に対して先程よりも太く数のある触手を俺へと伸ばしてきた。俺は気合を入れて触手を殴り、引千切り、サボテン怪人へと向かう。
「ぐ、グルナ!バケモノ!」
「だからお前にだけは言われたくねぇんだよ!」
しかし、このままではキリがない。ある程度は接近できた……ここで、何か一発でかい技をぶっ放したいところだ。
キックか、パンチか……キックは駄目だ。なんか、俺の姿で必殺キックとかほぼ仮◯ライダーになってしまう。そしたら、多分俺は多方面から怒られる羽目になる。
ならばどうするか?決まっている……俺には、俺の特色を活かした必殺と呼べる一撃があるではないか。使った事はないが……理論上は行けるはずだ。
「ぶっつけ本番!やってみっか!」
俺は迫りくる触手を数本握ると、地面を蹴りつけてダッシュする……そして、そのダッシュの勢いのまま俺はバイクへと変形する。
そして、マフラーから炎を吹き上がらせる……すると、俺の身体からアンカーのような物がトンネルの壁に打ち込まれる……えっ、何コレ……
すると、変身する時の同じ様に、俺の身体から音声が流れ始めた。
『バルナイザァァァクラァァァッシュ!』
なるほどな!バルナイザークラッシュね!任せろ!
炎は際限なく舞い上がり、やがて青い一筋の光へと収束する。
「ウ、アッ??何を……して、ダァ!」
そう叫んでサボテン怪人は触手を俺へとのばす……俺は次の瞬間、アンカーを引き戻す。
すると、俺を引き止めるものがなくなった瞬間……俺は猛スピードで目の前に迫る触手たちを轢殺し、目の前のサボテンの化け物へと突き進む。
まるで剣が人を貫くように、俺の身体はサボテンの化け物、ないしそれと同化して道を塞いでいた触手へと突撃。
その中にあった謎の輝く石を轢くと、石は粉々に砕け散り……その輝きに目をやられながらも、俺は触手の中から飛び出す。
俺はブレーキをかけながらその場に留まる……凄まじい威力のバイクタックルだ。まさに必殺技と呼ぶに相応しい。
さて……何今の技……知らん……怖っ。
俺ただ轢殺するだけのつもりだったのに……バルナイザークラッシュってなんだよ。
俺はそんな事を考えながら人型へと変形する。
そっと俺が振り向くと、道を塞いでいた触手はポッカリと穴が空き、やがて灰となって消えていく。
その最中、俺は触手の向こう側にいる先程まで悶えていた少女と目が徐々にあっていくのだった。彼女は……俺のことを信じられないような目で見ていた。
……心外な。そんな痴女みたいな格好でいる君にそんな目で見られたくないぞ。
俺は、言葉に出そうになった感情を、そっと飲み込むのだった。