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廻る季節に急かされて

九月の矛盾

作者: 雪傘 吹雪

 文化祭の準備。


 クラスごとに教室で出し物をする。今年は教室を縁日みたいな感じで、色々な出し物をするオムニバスみたいなものにするらしい。まぁ、ありがちな奴。


 どう考えても陽キャの為のイベントなので全然やる気は出ない。


 でも、今回はあの人と同じ班。これほど嬉しくて悲しいことはあるだろうか。


 近い。しかし、いつまでも心の距離は遠いままで、誰かと仲良くしているのを指をくわえて見ているだけ。


「何するー?」


 この班の中では一番リーダーシップがありそうな人が仕切り始めた。


「案出そ!」


 もっとも発言なんか出来ない私には関係ない。あの人をただ眺めて、それしか出来ないから。気持ち悪いのかもしれない。でも、そう言う人に対して私はこう言いたい。じゃあ何をすれば?


 何もできない無力な私だから、そこで終わり。


 皆楽しそうに会話してるな。入ってもいいのかな。あんな青春空間に入っていいのかな。誰よりも陰湿で陰気な私が。


 あの人も楽しそうだな。よく、それだけで私は幸せとか言うけど、そんなの綺麗事で、本当は近くで愛していたし、愛されたい。

 ああ、でもそれはちょっと違うかも。愛したいと願うのに愛されたいとは願わないな。本当に私ってとことんワガママだな。


「宮古さんは何か案あるー?」


 そんなこと全く考えていない。思い付かないし、思い付いたって否定されるのが怖いから言えない。適当に首を振っておいた。


 すると、皆元の話題へと戻って行った。


 良かった。とりあえず第1ウェーブを乗り越えた。


 そこからも話は特に進まず、平行線だった。まぁ、話しはじめはこんなもんだろう。しかし、いつまで話し合っているのだろうか。飽きそうなものだが。

 しかし、黙っている時間というのは意外にも長く感じ、もうすぐこの時間も終わるかと思ったらまだ10分くらいしか経っていなかった。10分じゃ飽きないか。


「じゃあ段ボール探してくるね」


 段ボール……?何の話?


 意味が分からないまま、グループの半分くらいが部屋を出てった。残ったのは私を入れて3人。1人は貴方。そして、もう1人は貴方と仲が良い人。私目線で。


「やっぱ[まもる]とか上に配置しがちだよなー」


 まもる……?何の話?


 知らない事の方が多いと改めて自認させられる。まぁ、多分プケモンの話だろう。好きな実況者がたまにやっているから何となく分かる……。


「TODが~」


 分からん。


 本当は話したいけど、会話入れないなぁ。話すためだけにプケモン買うのもなー。下心というか不純というか……。

 とはいえ、近付く為に色々手を尽くしてしまっているけどな。


 そもそも、貴方以外の人と話す事さえ緊張するのに、貴方とまともに話せる訳が無い。


 ただ、時間が過ぎるのが遅い。


 我儘だとは分かっているけど、3人しか居ないんだからこっちの方にも気を使って欲しい。というか、貴方の友達(?)も一応私とは割と話した事あるやろ。

 別に会話が出来ないメンバーじゃないんだから……。


 あぁ……、何でこんな他責思考なんだろう。


 他人が行動してくれるのを、いつまでも待っている。だから、いつまでもぼっちなのである。


 ふと、友達の方を見ると手が動いている。絵でも描いているのだろうか。手元の紙を見てみるとそこにはバチクソ上手な美少女のイラストが……。


「ぐほぉ……!」


「どっ、どした?」


「あっ、っ、いや、え、あっ」


 ヤバい。イラストのクオリティが高すぎて精神に大ダメージ……。私だって必死に絵描いてるよ!でも、下手なの!マジでふさげないで!


 って、一旦落ち着け私。取り乱している姿を見せて引かれたらどうする。


「みやっこーってたまに変な行動するよなー」


 はっ……!


 貴方が笑ってる!?


 なら何でも良いか。


 いや、良くは無いか?ただの恥らさらしでは?生き恥では?


 ん?


 というか、友達が書いてる美少女……、フランドールじゃねぇか!!


「フ、フラン!!」


 結構大きめな声が出た気がするが、実際の所どうなんだろう。自分の声の大きさって凄く分かりづらい気がする。


「うん」


 反応薄!


 いや、まぁ、そりゃ、私が東方好きな事は、割と学年のオタク的な人々の界隈では有名な話ではるけど……。


「めっちゃ上手いね」


「ありがとう」


 やっぱ薄い。何故故。


「みやっこーはフランドールは好き?」


 突然の好感触。温度差で風邪ひく。


「そこまでー……ですね……」


 すると、今度は貴方が口を開いた。


「じゃあ好きなキャラは?」


 えっ、わっ、ちょ、緊張する。


「あっ、あ、秋静葉、秋静葉が好きです……」


 だ、ダメだ。完全に錯乱してる。興奮状態。一旦落ち着こう。まずは呼吸を整えて。


「へぇ……」


 リアクション薄。いや、もしかして私が知らないだけで、意外とちゃんと会話が出来る文明人は一々騒いだりしないのか?

 別に私が騒がしい訳では無いが。脳内は喧しいけど。


 どのみち、私の会話経験値が少ないから分からん……。


「東方はあんま詳しくないけど、一時結構書いてる時があった」


 次は友達の方が話す。


 何で普通の人は会話をスムーズに順番で回す事が出来るんだろう。


「私も、よく、イラスト、描いてる……、東方の……」


 やっぱ私が話すとぎこちない感じがするよな。


 貴方もさっきよりはつまらなさそうな雰囲気を感じる。


 そうですよね、私なんかと居たって楽しく無いですよね。


 はぁ……。何をヒスっているんだろう。もっと明るく生きて愛していたいのに。


 そんな風に適当な会話をしている内に、他の人達が戻って来て、3人の時間は終わった。


 もしかしたら、私の事を気遣ってイラストを描いていたのかな……。私が会話に入れていない所を見て……。

 いや、そんな訳無いか。それは、自意識過剰だな。


 貴方とお話できた。それなのに、どうしてこんなに疲れているのだろう。どうして、胸が苦しいのだろう。

 もう嫌だ。


 もっと上手く喋れたら、もっと楽し気に振る舞えたら良かったのに。そう思ってしまう。


 まぁ、今日が哀しい日だったかどうかは、明日とかになれば分かるかな。


 後から考えたら、楽しかったって思えるかもしれないし。


 だから、悲観しない方が良いのかな。


 でも、今はただ、ちょっとだけ辛い。

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