第七話 「百火の王」
今回は短いので、17時にもう一話投稿するかもです。
――凄い
足を滅多刺しにされた痛みに耐えながら眼前の戦いを見守るが、凄いの一言でしか表せない。
ぼたんさんは、ハンドガン・ショットガン・ナイフ・サブマシンガンを続々と切り替えながら戦っているが、武器をどこからか取り出す素振りはなく、まるで新しく創造しているかのようだ。
一方、魔族は瞬間移動しながら戦っているのかと思うほど速い。とにかく速い。
その速度を活かし、ぼたんさんに絶え間ない斬撃を食らわす。
とても目で追えない魔族の連撃を、ぼたんさんは軽くいなして反撃をする余裕まである。
だが、いつ防御が崩れるか分からない。
身動きの取れない私は、せめて邪魔にならないように、 出口付近で祈っていることにした。
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(おかしい……)
魔族は、心の中でそう呟く。
――彼の使っているスキルは、高速移動系スキル「雷足」と、思考加速系魔術「クイックライド」
この二つの能力を駆使して、相手に反応すらさせずに殺す。それがこの魔族の得意技であり、破られるどころか自分が何をされたのか理解した者もいなかった。
しかし…………
(なぜ見える!? なぜ当たらない!?)
三百年間、数多の人間を屠ってきた技が通じない。
それどころか、一瞬の隙を狙って反撃さえしてくる。
相手は二千年前、先祖たちを駆逐した恐怖の象徴の一人。
はたして、感知系スキルが優れているのか、単純に勘が鋭いのか……
――ジジッ
ノイズのような音を鳴らし、魔族は動きを止めた。
「さすが俺らの怨敵。簡単に死んではくれないかぁ」
動揺を悟られないよう、無表情でぼたんへと語りかけた。
「あいにく、勘が良くてね。この程度のスピードなら余裕で対応できちゃう。それに、あんたらの怨敵ってノエちゃんでしょうが」
「ならこいつも避けてみなぁ!!!」
雷属性の魔力を足へと纏わすことで速度を上げるスキル「雷足」
魔力を纏わせるのではなく、チャージして爆発させる。
これにより、一瞬のみ通常の約十倍の速度を出すことが可能になる。
生涯で初めての大技
十分に魔力を溜め、解き放とうとしたその時。
―――ドン!
鈍い炸裂音と共に魔族の胴体に穴が二つ空いた。
何が起きたか分からず呆然としていたが、ほどなくしていつの間にか背後の壁に設置されていたものに気づく。
「そうは問屋が卸さないってね。」
ぼたんは冷笑を浮かべながら、そう魔族へと言い放つ。
(どういうことだ? 感知魔法は一度も解除していないのにも関わらず、まったく気が付かなかった。)
「はは、不思議そうな顔してるね? これは罠感知魔法でしか感知できない特殊なタレットでね。」
ぼたんは、見透かしたように魔族へと言い放つ。
「罠感知の魔法なんてダンジョンくらいでしか使わないから、よく刺さるんだよねぇ。」
やられた。
魔族の頭の中は、最初で最後であろう「恐怖」の二文字で埋め尽くされる。
―――ジジッ
再び、ノイズのような音を鳴らし魔族が逃げ出す。
カイリの事など見向きもせず、あっという間に出口を超え、どんどん遠ざかっていった
が、
盗賊達の住処を抜け出し森の方へ入っていこうとするが、逃走が成功することはなかった。
ぼたんの狙撃銃により頭を吹き飛ばされ、そのまま勢いよく倒れた。
――『百火の王』
獅白ぼたんのメインスキルであり、ランクは神秘。十個中、上から二番目のランクである。
その能力は「過去に実在した兵器を顕現させる」だが、魔導兵装は顕現不可なのと、顕現させる銃火器を熟知している必要があり、大きいものや複雑なものは魔力消費が大きいというデメリットもある。
この能力を用いて、ぼたんは五万人以上のアウトロー及び二万の魔族を殲滅した。
そして、世界中の悪がぼたんを恐れ、畏怖と絶望を込めてこう呼ばれた。
―――血濡れの魔女
獅白ぼたんの使用した罠の詳細
〔C4-28型 単発式大口径弾専用小型タレット〕
約五百年前、二つの大国間で起きた戦争にて使われた兵器である。小型なのに加え、背後の接着装置によりどんな場所にも設置でき、防護魔法すら貫通できる大口径弾を装填可能で、スイッチ一つで発射可能の優れものだが、何より恐るべきは魔道具ではないため魔力感知に引っかからないのである。
魔力の籠った罠しか感知できなかった時代に、一切の魔力を使用しないこの兵器はとてつもない猛威を奮った。