地球と僕と君との最後の一日
「緊急速報です。今日の午後1時26分、地球に隕石が落ちてきていることが確認されました。」
そのニュースが報道された瞬間から世界は大混乱に陥った。それから少し時が経った今、地球最後の一日となった。そんな僕たちの最後の一日の話しだ。
明日が地球最後の日だ。つい先日、緊急速報で地球に隕石が落ちてきていることがニュースで報道された。その報道を信じて絶望感に苛まれる者、信じず何かのドッキリだと言い張る者。それから、様々な意見が飛び交うようになっている。
僕はそのニュースを知ったのは、学校の授業中で隠れてスマホを見ていた時に知った。だけど、その時はそんなわけあるかと流石に信じなかった。学校から帰宅してテレビをつけてみるとどの番組もその隕石について報道していた。
それから隕石が落ちてきていることが本当なんだと分かった。
今日は仲の良い親戚や友達に最後の別れの挨拶をしようと会いに行っていた。ずっと移動をして、少し雑談をすることを繰り返していたので疲れた。会った人たちの顔はどこか元気のないようで、なぜか清々しい顔をしていた。今日はもう眠ることにしよう。
目覚ましが鳴っているのを止めて、重い体を起こす。今日はいよいよ地球最後の日だ。本当に隕石が落ちてきているのかはこの世界のお偉い人にしかわからない。なぜなら、僕たち庶民にはニュースとしての情報が報道されるだけだから。その報道を信じるかは人それぞれだが。
隕石が落ちてきていても世界は活動しなければならない。発電所や刑務所、警察署、学校、スーパー、などは営業しなければならない。しかし、今日だけは誰もが自由に行動しているだろう。隕石など落ちてくるわけないと、仕事に出勤する人や地球最後の日だからと仕事を休んで家族と過ごす人。僕や多くの人たちは後者の方だが。だから、店は労働者がいないので仕方がなく閉めているところがほとんどだ。どうせ今日が地球最後の日なら、と犯罪を犯す者もいる。おそらく今日が一番、犯罪者数が多くなっている日でもあると思う。
家から出る。家族には少しの間だけ散歩してくると伝えたが帰るつもりはない。家族には申し訳ないけど、僕は家族よりも最後を過ごしたい大切な人がいる。
大切な人との待ち合わせ場所の公園に着いた。
彼女はブランコに座っていた。
「おはよう」と僕は挨拶をする。
「おはよう」と彼女は答えてくれる。こんな当たり前な挨拶でさえ今は特別に感じる。
これからの予定はもう決まっていた。彼女との思い出のある場所に行くことになっている。まずは彼女と初めて出会ったところである中学校に向かった。
彼女は僕とは釣り合わないくらい綺麗だ。中学生の時、僕は彼女に猛アタックをした。何度告白したのかも覚えられないくらいにほとんど毎日好きという気持ちを伝えた。それから、高校も同じところに進学した。高校に上がってからも猛アタックをし続けていたら彼女と付き合えた。それから高校三年生になった今も付き合っている。
中学校には職員さんが一人いた。やはり今日は誰も登校してきていないらしい。僕と彼女も知っている、昔からこの中学校で働いている職員さんだ。こんな日も働いているなんてこの学校が好きなのか、もしくは真面目なんだろうなと思った。職員さんに教室を見回りたいと言ったら
「今日は特別だよ」と校内に入れてくれた。
以前授業を受けていた教室に着く。教室の構造は変わっていなかったが、壁の張り紙などは変わっていた。当時、彼女と僕は同じクラスだった。
「懐かしいね」
「私、爽くんと同じクラスで良かったな」と彼女は言う。
「どうして?」と彼女に問いかけた。
「あの時、同じクラスになってなかったら、今一緒にいないかもしれないから。」
「そうかもね」
「おいおい、そこは同じクラスになってなかったとしても一緒になってたよって言うとこでしょ」と彼女はツッコんだ。
「ごめんごめん」と僕笑った。彼女も微笑んでいる。
僕が修学旅行中に班行動をしなければいけないのにそれを抜け出して彼女に会いに行ったりしたことなど懐かしい話をした。当時の彼女は僕のことが少し苦手だったらしい。それから、体育館やプールをまわったあと、中学校をあとにした。
隕石は夜の午後十時頃に落ちてくるらしい。今は午前十時だからあとちょうど十二時間くらいだ。そんなことを考えていると、お腹が空いていることに気づいた。
「お腹空いたから何か食べない?どこか開いてる店を探しに行こ」と彼女に提案した。そうすると彼女が
「お弁当作ってきました!」と彼女の背負っている小さなリュックから弁当を出してきた。
中学校の近くに広い公園があるからそこで食べることにした。公園のベンチに座る。彼女が作ってきた弁当を開けると唐揚げや卵焼き、ブロッコリーにトマト、アスパラガスの肉巻きなどが入っていてどれも美味しそうだ。
「いただきます。」と言って唐揚げを口に運ぶ。おいしい。死ぬまでに彼女の手作り弁当を食べられて良かった。この弁当の美味しさから推測するに料理の腕前はかなりのものだろう。きっと良い奥さんになる。そんなことを考えていると
「もしかして口に合わなかった?」と心配そうな顔をして言ってきた。
「いや、美味しすぎてなんか感動しちゃってさ」
「なにそれ」と彼女は笑った。
「ごちそうさま」
「おいしかった。ありがとう」と彼女に感謝を伝えた。
「うん!」と彼女は満足気にして返事をした。
次は公園からは少し離れた、彼女と初めてデートした遊園地に向かう。
遊園地に着いた。従業員がいないので遊園地は営業してなかった。
「やっぱり開いてなかったかー」
「どうする?」と彼女が聞いてきた。答えはもちろん一つしか思い浮かばなかった。
「不法侵入します!」と彼女に言った。僕たちも犯罪者の仲間入りだ。誰もいないようなので入ったことがバレることはないだろう。
「了解です!」と彼女もかなりノリ気だった。
入場するところを飛び越えて入ると、懐かしい景色が目に映った。
「一、ニ年ぶりだね」と彼女は言う。
「うん。全然変わってない。」
この遊園地は僕たちが生まれる少し前にできたらしい。だから乗り物は新しいわけではないけど初めて彼女と来た時はなぜかどの乗り物も鮮やかで綺麗に見えたのを覚えている。
それから、回らないコーヒーカップや動いていないジェットコースター、営業していないフードコートをまわって、彼女と当時来た時の思い出話などをした。
動いてない観覧車に座って休憩をする。
「本当に隕石って落ちてくるのかな?」と彼女は言った。
「わからない。でもきっと明日は来るよ」
「そうだよね、」と彼女はどこか不安の混じった顔で笑った。
少し暗くなってきた。冬に近づいているのがわかる。少し肌寒い。残り時間的にも次に行くところは最後の場所になりそうだ。そこは今まで行ったどの場所よりも彼女との二人を感じることができて、静かで落ち着く場所。
僕たちが通っている高校の近くまできた。目的地は高校の裏にある山の頂上だ。もう空は真っ暗になっていた。公共交通機関が使えないので移動にかなり時間がかかった。暗い山を彼女と登る。
「夜の山は少し怖いね」と彼女は僕のそばによる。
「確かに」と僕は余裕があったので笑って見せた。
少し開けたところに着いた。
「やっと着いたね」と彼女は伸びをする。
山の頂上に登る道は階段があって登りやすいが、体力的な面で疲れた。
「綺麗」と彼女が呟く。
ここからは僕たちの育ってきた町が見える。あまり都会ではないがそれでも家の明かりがイルミネーションのように綺麗に光っている。
「爽くんあと少しだね」
「うん」
「麗奈。」
「ん?」
「好きだよ」
「私も好き。爽くんと離れたくないよ。」
麗奈は泣いていた。僕も彼女も死は怖かった。僕は今にも溢れそうな涙を堪えて麗奈を抱きしめた。キスをする。今までどのキスよりも深くて心のこもったキスを。それから、僕たちは交わった。
「爽くん。来世があったとしたら、また私に告白してね。」
「もちろん。来世でも僕はきっと君に惹かれて告白する。」
「約束だよ。」と麗奈は微笑んでいた。
「うん。」
麗奈の手をしっかり握る。
「麗奈また明日、おやすみ」
「うん。おやすみ!」
目をつぶる。
僕たちが生まれて、ご飯を食べて、運動をして、眠って、恋をして、死を迎える。それは、宇宙の歴史からしてみればちっぽけなことかもしれない。だけど、僕たちの身体と魂は過去に存在していた。その事実は消えることなく宇宙の記憶に刻まれるだろう。
みな様、私の初めて書いた物語を読んでいただきありがとうございます。今回のお話では地球最後の一日というストーリーでしたが、この物語がいつかは誰かに訪れるかもなと考えて書きました。みな様はもし地球が滅亡するとなったとわかった時どうしますか。私は家族とゆっくり過ごすのかなと思います。どんな過ごし方をしても後悔のないように過ごしたいですよね。あとがきはこれくらいにしておきます。まだまだ私は成長していくので長い目で見てあげてください。ありがとうございました!