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「いやぁ、軽くジャブを入れたつもりだったんだけど、思った以上に応えなかったね。もしかすると緋叉弥くん、これは脈無しかもね?」


「いや、小暮さん。そんな破壊力抜群のジャブなんて、金輪際封印しといてくれよ」


 だけど確かに小暮さんの言う通りなのかもしれない。

 俺はあの時の事を思い出す……。






「私、緋叉弥くんとお付き合いしてるんです!これ以上緋叉弥くんに付きまとわないでくださいっ!」


 小暮さんの一言に、先輩が、そして俺が、さらに言うと、Jackson Lilly'sのみんなが凍りつく。

 そして最初にその呪縛から解放されたのは、他ならぬ先輩だった。


「あ……そうだったんだ。緋叉弥くん、彼女さん、いたんだね?ふふっ、ラブラブじゃん!」


 そして続いて呪縛から解放された俺は先輩の誤解を解こうとする。


「い、いや、あの、違くて……えっと……」


「あ、さっきのは冗談なんですけどね?」


 って、小暮さん!?

 先ほどの真剣な表情とは打って変わって悪戯っぽい表情で、小暮さんはしれっと打ち明ける。

 って心臓に悪いって。


「あー、びっくりした。まさか私、彼女持ちの子に毎日お昼、付き合わせてたのかって、心配しちゃったよ。もうっ、びっくりさせないでよ、緋叉弥くん!」


 いや、びっくりしたのは俺の方ですって。

 って、先輩も俺じゃなく、小暮さんに突っ込んでくださいよ。

 などと心の中でぶうたれつつも、取り敢えず何とかなった事に俺は安堵したのだった。






「いやぁ、何て言うのかな?先輩の反応次第で、緋叉弥くんの事をどう思ってるのかがわかるかな?って思ったんだけど……。ま、先に言わせてもらっとくよ。ご愁傷様!」


 おいおい、合掌すんな。

 まだ勝負はついてないって。



 開演前。

 客席には俺達以外にも観客がいるけど、まだ満員には程遠い。


「で、その緋叉弥くんがお熱な心優ちゃん先輩なんだけど、実力の方はどんな感じなの?」


 既に小暮さんの興味はライブの方に向いているようだ。

 そうだな。

 先輩の凄さは、実際に聴いてみたらわかると思う。

 きっと小暮さんも驚く事だろうな。

 そんな俺は「聴いてみるまでのお楽しみ」などと誤魔化しつつ、開演を待ったのだった。





 そしてライブが始まった。

 俺も二度目って事もあって、ライブハウスでの作法と言うか、ある程度分かってきた。

 小暮さんもすぐに適応したのか、楽しんでるようだ。

 曲が終わる毎に普通に喋る音量よりも大きな声で「楽しー!これ、ハマるかも!?」などと真っ赤になった顔で笑顔を見せる。

 予定外ではあったけど、これだけ楽しんでもらえたのなら連れて来て良かったなって思える。

 そんな楽しい時間は早く流れ、そして先輩たちの番になる。



「皆さん、こんばんわー!私達ぃ!」


「『Jackson Lily's』ですっ!」


 前回同様の可愛らしい挨拶から始まるそのステージ上ではそれぞれの学校の制服を身にまとった5人の女の子。

 それだけ切り取れば、ロックバンドって言うよりもアイドルグループのようなイメージだ。


「心優ちゃんせんぱぁーい!」


 最初のMCの最中、テンションの上がりきった小暮さんが大きな声援を送ると、先輩は笑顔で手を振る。

 そしてそんな中、演奏が始まったのだった。




 この箱の他の観客も、先輩の歌声を知っているのだろう。

 まるでもったいつけるかのような長めのイントロに客席の熱気が確実に上がっていくのを肌で感じる。

 俺の好きなものを見せてやるんだって感覚に似た期待に、俺もどんどんと気分が高まっていくのを感じる。

 そしてイントロを一緒に演奏していた先輩が、その口を大きく開くのだった。




 しびれるような感覚。

 その力強い歌声に客席の熱気も最高潮に達する。

 マイクを通して流れる歌声にまるで押されるかのような感覚さえ覚える。

 それは小暮さんも同様なのだろう。

 気が付いたら俺のジャケットを掴んでるし。

 いや、気持ちはわかる。

 先輩の歌声にはそれほどの圧力のようなものがあり、何かを掴んでないとまるで吹き飛ばされるんじゃないかって感覚さえあるのだ。

 今までの2組の演奏でテンションの上がりきっていた小暮さんも、まるで珍しいものを見つけた赤ん坊のような表情でステージに立つ先輩を見ている。

 俺はそんな小暮さんの表情に、にやけてしまいそうになるのを抑えつつ、先輩のその真剣な歌声を受け止めるかのように聞き入ったのだった。


 そして1曲目が終わり、先輩がスタンドのマイクを外す。

 って、あれ?またMC。

 すると先輩はいきなり客席の俺を指さす。

 そして……。


「そこっ!鴇羽ちゃんっ!どさくさに紛れて制服を掴まないっ!」


 歌声に近い音量で注意された小暮さんは、掴んでいた俺のジャケットから、パッと手を離したのだった。

 ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


 現在、第3話は執筆中です。

 ゆっくりペースですが書きあがり次第投稿する予定ですので、緋叉弥くんと心優先輩とのこの後が気になる方は、是非ブックマークをお願い致します!


 それではまた♪

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