真実と希望
事務所を出て、他にも色々なところを探索していると師長室を見つけた。
「ここなら何かわかるかもしれないか……?」
「そ、そうかも……」
俺は扉に手をかけ、ゆっくりと扉を開く。
部屋の中はとても荒らされており、床に散乱しているものの下に何かが描かれている。
下に落ちてていたものをどかしていると、その模様が何であるか分かった。
それは、オカルト話などでたまに出てくる五芒星が描かれているようだ。
またその五芒星は赤黒く、どこか毒々しさを感じる。
「なんだこれは……」
「分からない……何でこんなものが……」
五芒星のことは後にすることにして、部屋を見渡した。
部屋には本棚が大量にあり、部屋の奥には大きな机も置かれている。
優香は散乱している本と本棚を見ていたみたいだったので、俺は机の方を見ることにした。
机の上も散乱していて何が何だかわからないが、引き出しが開いてなかったことから引き出しの中は特に荒らされていないのだろうか。
開いてみると中は整理されており、その中から一冊の手記を見つけた。
そのまま手に取り、手記を開いた。
『ここ数年で人類がゾンビに侵されてしまった。この病院で、ゾンビに対抗するための特効薬を研究し始めた。しかし、どう頑張っても特効薬の開発が進まない。外はゾンビでいっぱいだ。一つわかっているのこととして、ゾンビは火と紫外線に弱い。紫外線の成分を獲得しようとしたが、奴らが許さなかった。奴らはこの場所に気が付いてしまった。
そこで私は以前教わった魔術と呼ばれる非科学的なものを試してみた。すると、ほんとに結界を貼ることができた。初めは信じがたかったが次第に現実的に感じた。そして、本に書かれていた魔術をいくつか試してみた。すべてうまく成功したが、徐々に気が狂ってきていることを看護師に指摘された。そして私は時間がないと思った。魔術というのは己の精神を犠牲にしていることに気が付いたのだ。
そのようなことを繰り返している間に結界が破られてしまい、奴らが侵入して来た。もう時間がない。この手記を書き終わった後、最後の魔術を試してみようと思う。本に書かれていた神を召喚して、この現象を終わらせる』
……意味が分からない。
奴らとは何だ、魔術とは何だ、神を召喚するとは。
この手記に書かれていることの意味が理解できない。
そして、この病院の中にゾンビがいるのか……?
「ね、ねぇ……」
優香が俺の肩を軽くたたいてきた
振り向くいてみると、優香の顔は青ざめており、少し震えていた。
「ど、どうしたんだ佐藤さん」
「こ、この本を読んだんだけど……」
その本は黒い皮でできたカバーの本で、タイトルも何も書かれていなかった。
優香から本を受け取り、中を少し見てみた。
そこには訳の分からないことがびっしりと書かれていた。
しかし、なぜだかこれが何なのか理解できてしまう。
恐らくこれが手記に書かれていた魔術というものなのか。
その中にあったもので『異次元への転移』というものが書かれたページに付箋が付いているのに目が留まった。
もしかするとこれを使えば帰れるのではないか?
「ここのページは読んだのか?」
「ううん、最初の方を少し読んだだけだよ」
「……もしかしたら元の世界に帰れるかもしれない」
「え、ホントに?」
「分からない。でも戻るためにはやってみるしかないと思う」
本に書かれていた『異次元への転移』というのは、ある程度の空間で一面でも壁があるならできるとのことだ。
本に描かれている模様を壁に描き、アルコールを模様にかけて詠唱分を唱えることで扉が発生する。
その扉に入るときに、行きたい場所を想像するとその場所に繋がっていると書かれていた。
それを読んでいる途中でまたしても付箋が張られており、『地下物置』と書かれていた。
恐らくそこにこの模様が描かれているのだろう。
「よし、大体分かった。地下にある物置に行くよ」
「うん」
俺と優香は地下室へと向かうため、師長室を後にした。