奇妙の連続
バリケードを見たのち、最下階までゆっくりと降りていくと一階に辿り着いた。
どうやら俺たちが目を覚ました病室は四階にあったということが分かっる。
一階まで下りてくると待合室があり、その奥に正面玄関と思われるガラスの扉が見えた。
「あ、玄関だ。これで帰れる……」
「あ、ちょ……」
玄関扉を見た途端、優香が玄関口の方へと駆け出した。
扉の前へと優香がたどり着いたが、扉が開く様子がない。
駆け寄ってみると、優香が不安げな表情で扉を押していた。
「あ、あれ、開かない……」
「どれ、貸してみろ」
そう言って扉を押してみた。
しかし、開くこともなく鍵がかかっているか確認するもかかっている様子がない。
それなのになぜ開かないのだろうか?
「……ここからじゃ出られないのか」
俺はがっくりと肩を落とした。
一体、脱出する方法はどうしたらいいんだろうか。
そもそも脱出できるのか?
「とりあえず、他に手掛かりがあるかもしれない。探しに行くか」
「う、うん。きっと何かあるよね」
「あぁ、きっとここを出られるはずだ」
そう言って入り口から離れ、もと来た階段の方に戻っていった。
だが、本当に脱出できるのか分からない。
帰ることができるなら何としてでも帰りたい。
きっと優香も同じことを思っているはずだ。
階段の近くまで来たところで、さっきは気が付かなかったが階段の横に扉に目が行った。
ただの扉なら特に気にもならなかっただろうが、その扉には赤黒い手形のようなものがいくつかついていたのだ。
「……っ! なんだ、この手形は」
「もしかして……血……?」
「何がどうなってんだこの病院は……」
頭がおかしくなりそうだ。
こんな訳の分からない場所にいつまでもいたら気がおかしくなっても不思議ではない。
いや、もう既におかしくなっているのかもしれない。
そんなことを考えながら階段を上り二階へと戻ってきた。
「ねぇ、他の部屋とかに何か手掛かりがあるかもしれないし探してみない?」
「あぁ、そうだな。部屋の中はほとんど見てないしな」
「じゃ、じゃあ気になる部屋を見て回ろ」
優香はそう言って階段のすぐ隣にある部屋へとゆっくり歩いて行った。
何か吹っ切れたのだろうか、率先して動き出しているようだ。
俺もついていき、ドアの近くまでやって来る。
その部屋は二二六号室と書かれており、一般の病室のようだ。
しかし、その部屋の近くに行くと微かに扉の奥から腐乱臭がした。
「……なぁ、変な臭いしないか?」
「うん、なんか腐った臭い……かな?」
「あまりいい予感しないが、部屋に入るか?」
「……やめよっか」
そう言って、扉から少し距離をとり別のところに向かった。