謎の病院
今の時間が夜なのだろうか部屋の外は薄暗く、蛍光灯が不気味な感じに点滅している。
いかにも何かが出そうな雰囲気があり、少し恐怖心を覚える。
優香のことを見るも、やはりとても怖がった様子で震えていた。
「お、おい、大丈夫か……?」
「う、うん……何とか……」
「よし……じゃあ行くぞ」
ゆっくりと廊下を進んでいき、優香は俺の後ろをぴったりと付いてくる。
歩いていると床や壁に赤黒いシミが所々にありとても気味が悪い。
……もしかして、血なのだろうか?
ここは見た感じ病院であることは間違いない。なのになぜ廊下に血でできたシミがあるというのだ。
やはり気味が悪い。なぜこのようなことになるのか分からない。
少し歩いていくとある違和感に気づいてくる。
俺たちのほかに人がいる気配がないのだ。
他の病室に入るのは怖いため、確認するのを躊躇ってしまう。
そのまま歩いていくと階段が目に入る。
その階段の上り階段の奥に何かが積み重なっているように見える。
「なぁ、あれなんだ?」
「えっと……何だろう……?」
俺は息を吞み、ゆっくりと階段を上っていく。
階段を上っていくと扉のところに机や椅子が乱雑に積み重なっていた。
「なんだこれ……? バリケード、か?」
なぜこんなものがここに作られているのだ?
そう思った刹那、ある事を思い出した。
それは、今自分たちがいるこの世界には『ゾンビ』なるものが存在している世界であることだ。
半信半疑であるがこのようなことをしているとなるとあり得るのだろうか?
疑問を抱きながら階段を下りていくと、優香が不安そうにこちらを見ていた。
「ど、どうだったの……?」
「……いや、その……」
優香にはまだゾンビのようなものがいることを伝えていない。
それなのにバリケードがあったとは言い難い。
でも、流石に黙っているわけにもいくまい。
「実は……バリケードがあったんだ」
「え、バリケード? どうしてそんなものが……」
「さっきの病室で見た雑誌に書かれてたんだ。ゾンビのようなものがいるということが書かれていたんだ」
「え……それ、ホントなの……?」
俺は目線をそらして小さくうなずいた。
すぐ伝えなかったことにとても後ろめたさを感じ、彼女を直視できない。
優香はとても怯えた様子で俺のことを見ていた。
「ぞ、ゾン……ビ……? いるの……ここに……?」
「黙っててすまない。佐藤さんを不安にさせたくなかったんだ……」
小さく首を横に振り、俺と向き合う。
「黒崎君は私のこと思って言わなかったんだよね? ならいいよ」
そう言っているも声は少し震えており、無理しているんだろうと思った。
初対面の相手とはいえ、今は変に隠さない方がいいだろう。
「その、佐藤さん無理してないか? 俺も結構来てるんだ、相当無理してるんじゃないか?」
「う、ううん。大丈夫……」
「そんな、無理しなくても……」
「こんな状況なんだから……気を張ってないとだめになっちゃうよ」
今にも泣きそうな表情で優香が言う。
確かにその通りだ、俺の方が弱気になっていた。
「そうだな。何としても元の世界に戻るぞ」
「うん……」