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あやかし娘と恋をして  作者: 神父二号
15/35

閑話 狐と鼬

「……またね、冬四郎」

「…………」

「でも、むむむ、あいつめー。私の自慢の耳を、いっぱいおさわりしおってからに……」

「…………」

「……えへへ」

「…………」

「さて、と。お家に帰りましょうかねぇ。あーあ、母さまかんかんに怒ってるだろうなー」

「それはわたしもです、狐のあざみ」

「うひゃぁっ!?な、なーんだ……鼬の萩乃ちゃんか……」

「なーんだとは何ですか。ここはわたしたちの領地ですよ。この侵略狐」

「何言ってるの、ぎりぎり母さまの領地でしょ」

「いいえ。さっき少しだけ、尻尾がこっちの領地にはみ出てました」

「こまかっ。嫌われるわよちびっ子鼬」

「狐に嫌われても、痛くもかゆくもありません」

「やなやつ」

「そっちこそ」





「でも、急にこんな場所に現れたということは、やっぱりあの話は本当だったんですね」

「あ、あの話って?」

「牡丹さまがお爺さまに聞いてこられました。娘を見てないかって」

「…………」

「私達も、こんな時間に領地を見て回ってたんですよ。あざみ、人間の世界に行ってたんですね?」

「そうよ。だって暇なんだもん。いいわよね、萩乃ちゃんの家は。あっちであんた達の霊力がついた門を見たわよ」

飯綱天神いづなてんじんですね。って、わざとらしいちゃん付けやめてくれますか」

「あれ、鼬の飛び地でしょ?いつでも気楽に遊びに行けるんだ。いいなぁ……」

「わたしは行きませんけどね。あんなところ行ったって、人間しかいませんし」

「……そーですか」

「何しに行ってるんです?人間の世界に」

「秘密ですー。鼬には言いませんー。べー」

「むかつくですね。相変わらず」





「それで?冬四郎って誰ですか?」

「ぶふっ!?な、何が?誰それ?」

「さっき、お月さまを見上げてつぶやいてたでしょう」

「べ、別にー?誰だっていいじゃないの」

「その腕飾りも、少し前まで付けてませんでした」

「うっ……」

「人間の男ですよね。匂いがばっちり残ってますよ。牡丹さまが不機嫌だったわけです」

「わ、分かってたんなら聞かないでよ」

「そんなに人間と遊ぶのって、面白いんですか?」

「面白いわよ。少なくとも、冬四郎はね」

「どう面白いんですか?」

「んー、一緒にいて楽しいとか、ぽかぽかするとか、ちょっとからかったら大げさに反応するとか」

「……つ、つがいにでもなりたいと?」

「ま、まだそこまでは考えてないってば。ただ、ちょっといいなって」

「……へー、まだ、ですか」

「ううっ、うるさいなぁっ。私疲れてるの!」

「……たしかにお爺さまが言ってました。人間も、たまには面白いのがいるって。お父さまお母さまは良い顔しませんけど」

「……うん」

「まあ確かに、あざみに残ってる匂いは、悪い匂いではないですね」

「言っとくけど冬四郎に手出ししたら、ぼこぼこにするからね」

「出しませんよ。出しません。ほんとほんとです」

「……妖しい」

「お互い妖ですから、妖しいのは当然でしょう」





「はぁ……いつまでもここでこうしてるわけにもいかないか。じゃあね、萩乃。私、もう戻るから」

「牡丹さまに、こってりと絞られますね」

「そんなこと分かってる。でも、仕方ないでしょ。怒られてでも、行きたいんだもん」

「……牡丹さまは、狐なのにお優しい方です。怒るのは、あざみのためだと思います」

「…………」

「牡丹さまを、心配させてはダメですよ。たった一人のお母さまでしょう?」

「分かってるってば。鼬に言われるまでもないわよ」

「そうですか」

「……けど、まあ……気遣ってくれてありがと。萩乃にも、心配かけてごめん」

「ふふっ、そうですか。狐も、たまにはお礼が言えるんですね。よかったよかったです」

「やっぱりむかつく。えいっ」

「ひゃんっ、こ、こらっ。し、尻尾引っ張らないでっ……」

「あー、鼬が狐の領地に入ってるー。この侵略鼬の萩乃ちゃんー」

「や、やっぱり狐は嫌いです。さっさと怒られてきてください、このばか」

「あははっ、じゃあおやすみね、萩乃。今度また冬四郎のこと、人間の都のこと、いっぱい聞かせてあげる」

「結構です。……おやすみなさい、狐のあざみ」





「冬四郎……人間の男……ですか」

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