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竜の眼の魔術士  作者: 花嵐 龍子
第三章 竜國炎上 ーParis brûle-t-il?、ー
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竜國炎上26

 アルプス共和国軍において"大佐"という階級は二千人規模の連隊長や軍艦の艦長を勤める立場にある。五十人程度の小隊の隊長を勤めるのは少尉が主に行う事になっている。

ユフォ=ソフィアが"剣聖侍従官"から水機団へ少尉待遇で転属になったのは5年前の事。設立された"スワロウテイル隊"を率いてイタリア半島南部、旧フロジロネ第6地区を開放に導いた。特に最上級魔族"不死鳥フェニックス"をユフォは単独で討伐した事で大佐へと昇進したのであった。しかし、小隊長のままなのは"剣聖"の指図によるもので、その事はユフォの存在が水機団を統括する軍務局、さらにその支配者である"穂高家"への牽制である事は誰の目にも明白であった。

 英雄たる彼女の名は国外にも知れ渡っており、フランス共和国政府は同じ大佐待遇で外国人部隊に招いている。そして、彼らはある噂を鵜呑みにしていた。


 曰く、その強さは一人で連隊に匹敵するという。


真実かどうかは別として、大統領は彼女の英雄的側面を利用して士気を向上させようとしたのかもしれないが、その噂は彼女を否が応でも最前線に立たせる事になる。

 オルリー空港滑走路手前まで進めた共和国軍は足を止めざるを得なかった。本来なら陽動で手薄になっているはずの滑走路に三騎士団の一角"リシュリュー団"を将軍ロシュフォールが率いて陣取っていたからだ。

 ロシュフォールは所々から煙をあげる滑走路の向こう側の街から吹く血生臭い風に眉を顰めた。


「宰相殿の語っておられた通りになったか…」


空港敷地手前まで何十台もの重戦車の音が迫って来ているのが解る。そばにいた騎士を呼んだ。


「空港内の全騎士に通達」


「はっ」


「直ちに敵を殲滅せよ」


「はっ!」


「皆の者!参るぞ!」


ロシュフォールの掛け声に騎士一同が抜剣し、敵に襲いかかった。先陣を切ったのはロシュフォール自身、刀身まで漆黒に染まった大剣に渾身の魔力を注ぎ、上段の一振りを放った。


黒風ナイア!!』


 魔力を纏った黒き斬撃は空気を切り裂き、切り開き、真っ直ぐ殲滅の風となって街ごと戦車と歩兵を分子まで分解していった。怯むようにざっと共和国軍の前進が止まる。


「悲鳴をあげて逃げぬか。蛮勇だな」


敵に感心するロシュフォールを後ろから騎士たちが追い越し、次々と人型から巨大な竜へと変化して一斉に共和国軍の最前列を踏み払った。


『我、双炎ニテ悪ヲ滅スル』


ロシュフォールの直線に朱色の炎の二柱が立ち上り、竜巻の様に回転しながら竜の軍団を薙ぎ払った。足を止めたロシュフォールは吹き飛ばされる部下たちに見向きもせず、炎の噴き出る中心を凝視した。


(あれは、ただの炎でも、竜の炎でもないな)


後続する部下を手をあげて止める。

炎の中、赤い色の女性が大剣を引き下げて出てくる。


『我、不動一切、明けの明星天王に座せり』


女性は大剣を上段に構えたのを見たロシュフォールは全身から冷や汗が出たのを感じた。


「何か来る!構えよ!」


『ニ手に断罪、左の縄、右の剣、竜の流れ」


振り上げた刀身を敵に向け足に力を入れる。その一切を省かない詠唱に応えるように切先から炎が敵味方を仕切る様に横一線へ走った。


『四の陣、払堯ふぎょう!!」


瞬間、一筋に伸びた炎から莫大な明るさと熱津波となって騎士たちを飲み込んだ。


彼女は英雄。その実は一人で国を滅ぼせる。

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