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竜の眼の魔術士  作者: 花嵐 龍子
第三章 竜國炎上 ーParis brûle-t-il?、ー
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竜國炎上16

 カサットはパバロの"呪詛返し"で自らの"石化の呪い"を当てられた上にまだ出てきてはいないが、もう一人の出した絡まる大樹に拘束されていた。その黒い鱗のおかげで"石化"まではしないが、確実に内臓の幾つかは"呪詛返し"に隠されている何らかの追加の呪いがダメージを与えていた。


「しぶとい奴だな、デカイだけかと思ったが」


パバロは街の屋根の上を小さな体で陣の書かれた紙を配置していく。


「オノ、レェ!」


 突如、カサットの巨体が白い霧に包まれた。


「なんだっ!?」


霧に包まれ視界を失ったパバロは足を止めた。


「ダメ、パバロ!避けて!」


副隊長の叫びが響く中、パバロの背後から人に化けたカサットが短剣を振りかざした。


『火生!』


反応が遅れたパバロの背後から炎が溢れ出しカサットに襲い掛かった。


「ぎゃぁぁああああああああ!!?」


小さくなった体はいとも簡単に炎に飲み込まれ屋根から崩れ落ちようとしていた。

瞬間に霧を薙ぎ払ってユフォの横一閃の一振りが落ちようとするカサットの右腕を切り落とした。


「ぬお!?」


咄嗟の反射でパバロは伏せた。ユフォは街の狭い路地に落ちていくカサットに倶利伽羅を向けた。


『憤炎』


朱く大きな刀身の先から火球が放たれ、辺りの路地ごと焼き払った。瞬間に爆風と火の粉が路地の奥まで吹き荒れた。


「いくわよマサノリ!準備は出来た?」


「はい!」


少し離れた路地の奥でバイクに跨り待機していたキリは後ろにマサノリを乗せアクセルを握りしめた。


『アウレよ、壁を築け』


キリのバイクが路地を駆け抜け小さな広場に出ると、副隊長は広場の中心に杖を立てた。詠唱と共にユフォが燃やした路地を含めて当たりを囲むように大地が盛り上がり壁を形成した。

副隊長の前を抜け、真っ直ぐな通りに出るとマサノリは全身を焼かれ、長い尾と翼を現しながらも歩く影を視認した。


「居ました!座標送ります!」


耳に取り付けた無線から連絡を受け取った副隊長は。マサノリの示した方角に右手を傾けた。


『万物の創造主にして我の祖よ。汝の名我らの大地に広めせしめん。エルの長子の到来より至れ、その破壊を!』


副隊長の足元の石畳がゴウンという音と共に波になってカサットに向かっていく。


「おのっれ、む、し、けらども、がぁああああ!」


竜特有の回復で体を治しつつあるカサットがよろめいた瞬間、大地の波が街を破壊し飲み込みながら一塊の巨大な掌となってカサットを押しつぶした。凄まじい轟音と衝撃がオルレアン全域に響いた。


「ふー風通しが良くなったな」


「事前の住民の避難は完了しているわ。カーラが先に動いてくれたもの」


風に桃色の長い髪を靡かせる副隊長にパバロは合流した。


「それよりも貴方、今日は随分と鈍っているんじゃない」


「面目ねぇ、実はまだ吐きそうなんだ」


「昨日の酒のせいじゃなくて?」


「あれはお前が付き合わせたんだろうが酒豪め」


 その頃、ユフォはカサットが埋もれた瓦礫の山の前にいた。


「…まだいる」


その言葉と同時に瓦礫の山が吹き飛ばされ巨大な顎がユフォに襲い掛かった。


『"選択の魔法使い"の名の下に』


しかしその口がユフォを飲み込むことは無かった。いや、閉じる事さえ出来なかった。


「大丈夫ですか、レディ」


ユフォの前に翡翠色の鎧を纏った騎士が現れた。騎士から発せられる光が今まさに閉じようとしている巨竜の顎を支え留めていた。


「あなたは、アーサー大佐!」


騎士は自らの持つ大剣を振りかざした。


『拒絶せよ、"ランスロット"』


光が強まりカサットはそのまま何ブロック先まで吹き飛ばされた。


「全く、貴方はクールに見えますが、かなり無理をされるようだ。その炎の剣はあと数秒使えないでしょう?」


「…そのための対策は用意してあります。ですが助かりました。因子の配備は?」


「もう終わりました。彼女も、到着しましたよ」


「彼女…?」


 カサットが吹き飛ばされた先の近くにはメリュとアリア、そしてジャックとシェリーを含む子供たちがいた。


「アーサーの野郎、なんでこっちに飛ばしてんんだあの天然!カッコつけやがって!」


怒りで青筋を立てるジャックを他所にメリュとアリアは地下豪へと子供たちを収容した。


「軍人さん、行くの?」


最後に地下豪に入ろうとシェリーはメリュに声をかけた。メリュは少し沈黙したが遠くの轟音が鳴ると小さく頷いた。


「うん。一応お仕事だからね。ここから先は私たち軍人が動かないと」


「でも、震えてるよ」


 シェリーの言葉にメリュはハッとして手を抑えた。そしてシェリーにハグをすると少し笑って地下壕の扉を閉めた。深く息を吐くと同時にすぐ向こう側で竜の叫びが聞こえた。


「大丈夫、行こうアリアちゃん。私たちがジャックさんの代わりに陽動をしないと」


 待っていたアリアは向こうを真っすぐ見ていた。

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