竜國炎上3
"ディジョン"と呼ばれる街は古くは"ブルゴーニュ公国"の首都であり、大公宮殿を中心に丸く市街地が作られていった。
木骨組みの外観が特徴的な旧市街を含め、大量の移民が押し寄せ、フランス共和国の首都になってからもその美しさは変わらない。
マサノリ達は街の東側、ディジョン駅のすぐ北側にある"カリエール・カバン"という場所に来ていた。
大混乱以前、ここは新緑豊かな大きな公園であったが今は木々の中に建物が作られ、巨大な工房となっていた。
「よーしお前ら!今日は大仕事だぞ、気合い入れてけ!」
ドワーフの工場長が大声をあげると灰色のつなぎを着た人々が一斉に動き出した。マサノリとメリュも同じつなぎを着て動き出した。
「お手伝いさん、今日は"五番錬成炉"の火を起こしてくれるかい」
注文書や発注書が大量に貼り付けられた詰所の老いた事務員に言われ二人は何件かに分かれた工房棟の内の一つに向かった。
「ボンジュール!」
中に入るとメリュが大声で挨拶すると、ノームの妙齢の女性が近寄って来た。
「ボンジュール!よく来たね!私はここの責任者の"一等錬金術士"のアンネさ!よろしく!」
アンネは防火手袋を脱いで二人に握手をした。
「よろしくアンネさん!それで、"炉"は?」
「あー!これさ!」
アンネが指差す方には巨大な黒い釜が構えられていた。
「どうにも点火装置の調子が悪くてね。ま酷使し過ぎっていうのもあるんだけど、いい火力の持ち主が来たって聞いたからさ」
「アンネさん」
アンネの後ろからの声に振り向いた。工場の職人達がぞろぞろと集まっていた。皆、怪訝な表情をしていた。
「じゃ俺たちは終わるまで出てます…」
「あぁ、ありがとうね」
そう言うとアンネを残して職人は全員出て行ってしまった。中にはメリュを睨みつけながら行く職人もいてマサノリは動揺した。
「これは…一体…」
「ま、仕方がない事だからね…坊や、扉を閉めてくれるかい」
マサノリが重い工場の扉をやっと閉めるとオレンジの照明が薄暗く付けられた。
「あれでもかなり譲歩してくれたのさ。この国じゃ"竜"は親の仇みたいなものだからね」
アンネは薄暗い中で慣れたようにコーヒーを注いで二人に渡した。
「私も竜に夫を殺されてるけど、別に竜がみんな憎い訳じゃない。人間だって善人と悪人がいるみたいにね…だけど、どうしても割り切れない奴もいるのさ」
遮光用のメガネをマサノリに渡して自分もかけると黒く大きな炉の扉を開いた。
「こっちの事情だっていうのに辛気臭い所を晒してしまったね…さぁはじめてちょうだい」
メリュは何も話さずただグッドをすると大きく息を吸った。小さな体から発せられる熱にマサノリとアンナは少し下がった。
瞬間にメリュの口から豪炎が炉に向かって勢い良く放たれた。
「よし、"アタノール"を起動!立体錬成陣良好!」
アンナが手を地に付けると紫色の光の線が陣を描き、炉の炎の中に伸びて行った。
バチバチという音と共に炉の中の炎が青白い柱となっていくと同時にアンネは扉を閉じた。
「上手くいったよ!ありがとう!」
ゴウンゴウンと言う音と共に工場内の機器が作動し始めた。




