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竜の眼の魔術士  作者: 花嵐 龍子
第三章 竜國炎上 ーParis brûle-t-il?、ー
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竜國炎上2

 朝、フランス共和国は首都ディジョンのフラール通り沿いにある宿舎のベッド側の窓を小鳥が叩く音にマサノリは目が覚めた。木製の二段ベッドの下側から出て、洗面所のある建物の一階へと階段を降りていく。


「おはよう!」


「おはよう、メリュ」


 洗面所にはメリュが桃色の伸ばした髪をブラシでといていた。


「やろうか?」


「んー!いい!これは人型に慣れる為の大切な儀式なの。髪自体は、一回元に戻れば整うんだよ」


「そう」


 マサノリはメリュの隣で自分の左目のある場所に"義眼"をいれる。


「あ、その"魔義眼"出来たんだね!」


「うん。昨日届いたんだ」


マサノリは右目を隠して翡翠色の左目を動かす。


「ホントに視えるの?どんな感じ?」


「うーん、何というか直接イメージが頭の中に入って来るというか、直接は視えていないんだ」


「へぇ!」


 メリュの興味深々さにマサノリは若干押された。


「きょ、今日のシフトは?担当、メリュだっただろ?」


「うん!午前中は"カリエール・カバンの錬金術工房"で"魔高炉"の火入れを依頼されるから私と一緒に行くよ!」


「アリアとルシファは?」


「アリアちゃんは今日もキリと基礎訓練、ルーちゃんはパバロの座学かな」


 "フランス共和制政府"に協力する事となった一行は軍の作戦に参加するまで待機していた。その中で訓練を受けていないマサノリ、アリアは日々隊の誰かの元で鍛えられ、そもそも文明に触れた事の無いルシファは年長者に座学を受けていた。

 "アルプス水機団"は海外任務の一環として現地の生活に援助するためにそういった教育のプログラムを受けており、厳しくも短時間で覚えられた。


そう、ここに来て三週間が過ぎた。


「アキ、義母さん、大丈夫かな…メリュは、心配じゃないの?」


「何が?」


「家族とか、友達とか」


「うーん、どうだろう。友達はユフォとかいつも一緒にいるし、家族は強いから大丈夫かなぁ」


「そう、なのか?」


「元々、家族で殺し合ってたし。私が軍隊に預けられたのも兄貴達の争いからパパが遠ざける為だったし…うん、パパは人間だから心配かな!」


(なんか、ずれてるなこの子)


「それより早く支度を済ませよう!皆もう食堂だよ!」


鏡の側にある時計を見れば朝食の配給の時間だった。マサノリとメリュは急いで顔を洗って食堂へ向かった。


「遅いぞ!二人とも!」


「おはようございます。すみません…あれ、キリさんだけですか?」


キリはスポーツウェア姿で少し汗ばんでいた。恐らくランニングを済ませた後なのだろう。


「ああ、少し近所でトラブルでな。皆、手伝いに行ったよ」


「トラブル?」


「"配給所"で乱闘が起きたそうだ」


「おはよう!キリは行かないの?」


「隊長命令で待機。ほら、お皿を並べるの手伝って」


キリと共に食卓の準備が終わる頃、ユフォたちが帰って来た。


「おはようございます。おかえりなさい」


「ただいま、おはようメリュ、マサノリ」


ユフォは棚の奥に置いてあったタオルで深紅の髪の汗を拭った。


「おう、おはようお前ら、いやぁ大変だった」


「まさか、あんなに何十人も暴れてるなんてね」


同じく汗だくの副隊長とパバロッティはそのまま席に着く。


「おはようございます。これお水です」


「ありがとうマサノリ」


二人はコップの水を一気に飲み干すと深く息をついた。


「アリアとルシファの怪力のおかげでなんとかなったぜ」


「えぇ二人で暴徒をポンポン投げ飛ばしてたものね。迂闊に魔術を使えない私たちだけじゃダメだったわ」


「そ、そうなんですか…二人は?」


「給水所寄って来るから少し遅れてくるよ」


「ただいま戻りました」


声の方を見ると巨大な大樽を両手に持った可憐な"天使"と"鬼"の少女が入って来た。


「おかえり、二人とも。水はいつもの所に置いといて」


「ボンジュール、まさのり!」


「おはようございます、マサノリ」


二人は百キロ以上の樽を抱えたまま涼しい顔で挨拶すると奥に消えていった。


(男らしい!)


「マサノリはたまに乙女チックになる時があるよね」


「そういうメリュは食べる割には小さいかな」


「二人とも!さっさと料理を盛れ!時間押しているんだぞ!」


キリに怒られてから食事を終え、出かける頃にはそこまで時間はかからなかった。


「では、いってきます隊長」


「うん。いってらっしゃい」


宿舎に鍵をかけると各々の場所へ散っていった。マサノリ達の目的地は町の西であった。

「みんなは東のブルゴーニュ大学のキャンパスみたいだしお昼は別になりそうだね」


「工房の近くに食べる所あったかなぁ」


そんな事を話しながら二人は通りを歩いていった。

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