魔森巡礼23
同刻、森の北側、切り離された列車の車両たちを桜色の竜の巨体で押してどうにか森の端までやって来たユフォ達は車両や荷物を下ろしていた。
「いいのかい、アンタ達は向こう行かなくて」
「言った筈だ。我が隊も一枚岩ではないとな」
切り離された車両の中にいたサトウの部下たちはユフォ達たちの手伝いをしていた。
「私たちは隊長からの信頼がないですからね。だから後ろの車両についていたんです」
「それに、仲間もまだ生きているかもしんないしな。頭でっかちに見捨てるなんてできねぇ」
慣れた手付きで貨物から車両を切り離していく。
「まぁ多分、フランス共和政府に救援を呼びに行ったんでしょうけど、あいつらに借りを作ったら終わりですからね」
「フウ、ツカレタ…」
「ありがとうメリュ。人型になったら車で寝てていいよ。」
桜色の竜は体から湯気が出て、みるみる小さくなってセーラー服を来た小さな少女、メリュジーナになった。
「おやすみユフォ」
「あれが、七名家が一つにしてアルプス唯一の竜族の一族、"槍家"の才女ですか」
「そう、わずか5歳で"人化の術"や"詠唱術"を使える事ができた魔導の天才。ちょっとご当主から拝借してきたの」
「はいしゃ…あ、いえ、たしかに隠密の移動には必要な人材ですね。色々と申し上げたい事はありまが…」
「いいのよ、ご当主が直々に隊長に任せて預けたんだから」
「準備完了しました。隊長。今からでも向かいますか?」
確認を終えキリはユフォに近寄る。
「ちょっと待って、森の様子が変だ」
森を見ていたユフォはその静けさに神経を尖らせていた。
「"探神経"を使っても全く気配がない…少なくても四キロ圏内に誰もいない」
「いくらなんでもそれはないだろ。"反逆の壁"があっても低級程度なら普通にいるはずだ」
不気味すぎる夜の森が一向の前にあった。
「怒りが…こちらに向いていない…」
ユフォが振り向くとアリアが森を指差した。
「この先に黒い塊があります。怒りはその塊に飲み込まれています。みんな、みんな飲み込まれていきます」
「わかるの?」
アリアはコクっと頷いた。
「マサノリの位置は分かる?」
「いいえ。ですが、怒りとは別の気配が二種類ほど。一つはこちらに高速で接近してます」
「はっ?」
次の瞬間、遠くの森の端が吹き飛んだ。




