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竜の眼の魔術士  作者: 花嵐 龍子
第二章 魔森巡礼 –Forest of lost prayer–
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魔森巡礼21

「きょうはーかーえーれなーいーもーりーへいくんだー」


 薄暗い巨大な樹木の中を影が大中小三つ並んで動いていた。


「コラ、アマリハシャグナ」


「はーい。マサノリ。これ。よろしく」


「うん」


 影の小の方、ルシファは影の中の方、マサノリに自分の背負っていた大きな籠を渡した。


「わたし。おの。あればいい!」


 ルシファは腰に下げた大斧を担いで大股でふかふかの緑の苔の上を進んでいく。


「ドウダマサノリ、スコシハオチツイタカ?」


「あぁ。大分…ありがとうダンテ。貴方はいい人だ」


「ナニガダ?オレタチハメシヲクッタダケダ」


 昨晩を経てマサノリは大分落ち着いていた。自分の中にある何か釈然としない曖昧な感情達がきちんと整理された気分だった。ずっと状況に振り回されて訳もわからないまま自分の思考が追いついていない中でここまで来ていた。誰も説明もしてくれず、教えてもくれない生煮えにされている状態だった。しかし、出発する前にビリガーと話したあの夜、そしてそのビリガーを食した事、それらがマサノリの"中心"に確かな"納得"をもたらしたのだった。


(まずは父さんを叩き起こす。よくわらなけど絶対にこの騒動を引き起こしたのはアイツだ!)


 父親、タカが突然現れたあの日から全ては始まっていた。どうしてもあの父親を叩き起こして説明させなければならない。


(その為には…)


まず、この"森"を抜ける為、この二人の魔物に案内して貰わねばならない。


(アキ、どうしてるかな)


 考え事をしている間に目的の場所に着いた。


「ここですか?」


「イヤ。ココカラサイダンガノゾケルンダ。ホラソコノアナカラナ」


 ダンテの指す物陰の隙間から音がする。

マサノリは恐る恐るそれを見た。

奥の方にある開けた場所が見えた。何百もの緑の皮膚をした小さな人間のような生き物が円を組んでいた。

円の中央には檻があり、数人の人間の女性たちが閉じ込められていた。


「ゴブリンドモダ」


 "小鬼ゴブリン"、魔族最下級に属する種族で、知能は低く、群れで移動し、村を襲い男は殺し女は犯す。妊娠した女性は僅か3日で出産し、瞬く間に数を増やす…学校に碌に行っていないマサノリでもそれくらいは知っていた。確か、イタリアでは大繁殖して初期アルプス軍を苦しませたとか何かに書いていた筈だ。


「あの中にルシファの母親が?」


「イヤ、イマハイナイ…スコシマエニニゲタ」


 昨晩、ダンテはマサノリと一つ取り引きをした。


「ワカッタ。オマエヲナカマノトコロマデツレテイクカワリニ、ヒトツサガシテホシイモノガアル」


「探し物?」


「コノコノハハオヤダ」


「母親?」


「アア…コノコハ、マゾクトニンゲンノ…"ハーフ"ナンダ。ハハオヤハニンゲンノショウジョダ」


焚き火に当てられながら寝ているルシファの顔をダンテは優しく指で撫でた。


「ココ二ツレテコラレテカラハ、オレガセワヲシテイタ…」


「貴方は"魔族"なんですよね?」


「アア。"オーガ"トヨバレルラシイ。フツウハキガクルウガ、タマニオレヤコノコミタイ二ショウキナヤツモイル」


マサノリは少し思い当たるものがあった。あの"悪魔"、あれは確実に魔族だ。だが"軍人"でもあった。


「アノコヲウンデカラ、アノコハキガクルッテシマッタ。チカラガアルオレトコノコデマモッテキタンダ」


ダンテは火に薪を足した。


「ダガ、モリガイカリダシタ、ジュウニンタチガオソッテキタ…アノコハゴブリンドモ二ツレサラレテシマッタンダ」


「森が怒る…」


森に入る前、マサノリは森を見て、凄まじい怒りの感情を感じた。


「コノモリハタッタヒトリノ、"エント"ガ"ユグドラシル"ノマナヲスッテネヲハッテヒロガッタモノダ。キギスベテガカレソノモノ…ココニスムモノタチハスベテカレノヒゴカ二アル。ユエニカレガイカレバジュウニンタチモイカル」


「この森にも心があるんですか?」


「ココロ…ソウダナ。ミンナモトハオナジニンゲンダッタ…"ココ"ニハマモノハコナイ。ソレハカレガソウキメタカラダ。ココニハカレノイノチノカクノシンゾウガアルカラナ。ココロガアルカドウカハワカラナイガ、キョウフハタシカニアルンダロウ」


 ダンテがマサノリの後ろの方に指を差した。奥にたった一か所月明かりが当たる場所があり、そこには大きな心臓の形をした巨石が根に絡まってあった。


「ソレデ、ヘンジヲキキタイノダガ?」


マサノリは少し炎を見つめてから、応えた。

焚いた火が風に吹かれた。

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