魔森巡礼18
「あたしルシファ!あんしゃんて!」
マサノリが魔の森で出会ったのは左の額に角の生やした深緑の髪をした幼い女の子だった。
「アゼントシテイルゾ」
女の子の側には一つ目のような模様のした仮面をつけたザンバラ髪の大男だった。
今さっきまで自分に起きた事を飲み込めていないままマサノリはただただ唖然としていた。
「ことば、だいじょうぶ?おにいさん、なまえ、なに?」
グイッと女の子、ルシファはマサノリに顔を近づけてくる。
「ま、マサノリ…」
「よろしく!まさのり!」
ニコッとルシファは笑ってマサノリの手をつかんで振り回す。
「モウイイカ、ルシファ」
「うん!ダンテ、ごはん?」
「アァ、ソウダ」
大男、ダンテは腰に下げた袋から何かを取り出した。見た目は干からびた枝のように黒く萎んでいる"それ"がマサノリにはそれが何かすぐに分かった。
「ビリガーさん!」
「ナンダ、シリアイカ、アキラメロ、モウシンデル。シンダラ、モウソイツジャナイ」
マサノリは動けなかった。目の前の大男に対する恐怖もあったが同時にビリガーに対する罪悪感に苛まれていたためだった。
「マァダガ、モシイキテカエレタラ、コレヲモッテイッテヤレ」
ダンテは干からびたビリガーの衣服を剥がすついでに彼の懐にあったナイフをマサノリの元に投げた。そのまま自分たちの浸かっていた池でビリガーを洗った。
「その人をどうする気なんだ!」
「タベルンダヨ、キチョウナタンパクゲンダカラナ」
「…っ!」
「アノママ、アソコニホオチシテイタラ、モットヒサンナクワレカタヲシテル。オレタチデヨカッタトオモエ」
マサノリには彼らがビリガーを食す事を否定できなかった。浸っている所にビリガーの血が流れてきてマサノリを包んだ。
「コノイケハ、マヲヨセツケナイ。ココニイレバシバラクハアンゼンダ。ルシファ、カイタイヲテツダッテクレ」
「わかった!」
大男とルシファはマサノリに見えない茂みでビリガーの解体を始めた。ゴキっバキっと骨の砕ける音や肉の裂ける音が生々しく聴こえてきた。
マサノリは自分の元に投げられ沈んでいたビリガーのナイフを拾って見つめていた。
胸が張り裂けそうだった。ただ苦しかった。ナイフを今、自分の胸に刺したらそれは消えるのだろうか。
「オイ。ハヤクコッチ二コイ」
はっと、マサノリが我に帰ると火の煙の匂いがした。
「オマエモタベロ。モシコイツヲイマトムライタイノナラ、クエ。イキルカテニシテ、コイツノブンモ、イキロ」
気が付けば、マサノリはナイフを自分に向けていた。
ルシファがこちらまできてマサノリの手を引いた。
「食べるは、生きる事、だよ?」
ダンテが焚き火をしていて、木の枝を加工した串に小さくなった肉が刺されて焼かれていた。
濡れていたマサノリは火にあたるとルシファが串を渡してきた。
「こういう時、アルプス、何て言うの?」
串を手に取って見つめた。ただの焼き肉だ。でも、確かにあの人だ。
「いただきます」
味はよくわからない、でも、涙でしょっぱかった。
「泣いてるの?」
マサノリは涙をいっぱいに流しながら肉を頬張っていた。




