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竜の眼の魔術士  作者: 花嵐 龍子
第二章 魔森巡礼 –Forest of lost prayer–
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魔森巡礼4

 聖前会議は二時間ほどで終了した。

最高権力者たちは各々の執務室に戻っていく。

"剣聖"尾張=刃守=ガブリエッラが建物を出ると、馬車が一台待機しておりそれに乗り込んだ。

 馬車の中には若いエルフの男が座っていた。


「お待ちしておりました」


 男が前の窓を叩くと馬車は動き出した。


「ユフォたちは?」


「無事に到着したようです。先ほど、"伝書機"が届きました。今はガヴォレッドの安宿を拠点に期を伺っているようですね」


「あぁ確かユフォの叔母が経営している宿があったな。」


「左様でございます」


「お婆様からの報告は?」


「まだ何もございません」


 ふむ。とガブリエッラは自分の後ろに長く束ねた水縹色の髪を手でいじる。


「今夜発つとして、最速でも二日か…」


「ガブリエッラ様、くれぐれも御剣だけはお使いにならないよう…」


 執事の言葉にガブリエッラは腰に下げた剣を見た。彼女が腰に下げた剣。それは彼女が"刃守"という官位の名と共に受け継いだ神器の"写し"である。"剣聖"は"草薙の剣の入った箱"とそれを守る為の"武具"つまりはこの"写し"を受け継ぐ。姿を見てはいけない"草薙の剣の本体"がどうであれこの"写し"は形姿関係なく"草薙の剣"であり、本体が剣聖のもとに無くとも、写しを彼女が携帯する事で"神器"として機能するのである。

この剣自体にも本体を守る為の"神力"が付与されており、彼女はそれを行使できるのだか…


「人前で無闇に神力をお使いになっては権威が薄れててしまいます。どうか」


「解っている」


 彼女は少し溜息を吐くと外を見つめた。

馬車は"王の庭園"と呼ばれた船着場にかけられた橋を渡り、向こうにある巨大な船へと向かっていく。"槍"と艦首の脇に大きく描かれた巨大な空母にたどり着き、艦橋に建つ宮殿へと入っていく。

 正面玄関に着くと何人もの使用人たちが並んで待っていた。


「「おかえりなさいませ」」


 ガブリエッラは軽く会釈すると中へ入っていった。

ここは空軍大臣である"槍家"直轄領にある"剣聖離宮"である。なぜここにあるのかは、かつて三聖が所有していた都市型戦艦が沈んだ際に剣聖を槍家が助けた事に由来する為である。


「すぐに支度を。一時間後には"本宮"へ向かいたい。私は少し書類を片付けて来る。付き添いはいらない」


「かしこまりました」


 若い執事はそういうとガブリエッラの側から去った。

 ガブリエッラはそのまま自分の執務室へ一人で向かう。この国の最高権力者の離宮とはいえかなり質素な造りの部屋で、机の上にはいくつかの書類が置かれていた。


「ふう」


 席について、腰に下げた剣を外して自分の横に立て掛けた。一息つくと書類に目を通す。

 しばらくたつと、急に寒気がした。まだ肌寒い季節ではなく、ガブリエッラは窓へ目を向けた。


「お偉いさんには慣れてきたか?」


 後ろから声をかけられた。ガブリエッラは少し驚くと目だけでそちらを見る。


「お偉いさんではない、無礼者」


 そこには見窄らしい騎士がいた。ボロボロのローブを頭から被り、靴は穴が開き、全体的に真っ黒な男は腰に手を当てた。


「よくもまぁ、たった半年で無礼者なんて出るものだ」


 男はローブを取らなかったが中で笑っている気がした。


「何の用だ、お前のような"化物"がここにいたのが見つかれば、どうなるか判らないわけではないだろう」


「情報がある」


「何?」


「フランス側の"森"に俺達の仲間がいる。何、お前らの邪魔をするわけじゃない」


「………"太陽竜"か」


「あぁ。よくわかっているじゃないか」


「五月蝿い…"反逆"の、"共和政府"とは連携しているのか」


「奴らとは関わらないで行く方針だ…とはいえ、もし、陸軍どもが森に入るとしたらやはり"線路"を使うのか?」


「いや、今回は"森"自体の掃討の意味も含めているから、徒歩だろう。陸軍は戦車も導入するそうだ。もうすでに輸送列車に積んでいるかもな」


「なら、俺たちも少し急がないといけないわけだ。しかし、いいのか?そんな機密を俺みたいなテロリストに喋って」


「問題ない。お前達に余計な邪魔をされて計画が狂うよりは…」


「ほぉう。まぁ、俺はともかくとして、あの"魔女"どもはクセが強いからな。せいぜい気を付けろ。"主"には俺から伝えておく」


「宜しく頼む」


 フッとガブリエッラの後ろの気配が消えた。

背中の汗が止まらない。完全に背後をつかれた。大きく深呼吸してガブリエッラは気を取り直す。


「あの頃に戻りたいよ、ユフォ」


 窓の外を見つめて小さく声を漏らす。


「聖様、お支度が整いました」


「今行く」


 最後の書類にサインをして、箱に収めるとガブリエッラは立ち上がり剣を腰に下げて部屋へと出た。

 出る時、ガブリエッラにはこの先に起こる事への始めの一歩な気がして、少し興奮した。

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