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竜の眼の魔術士  作者: 花嵐 龍子
第二章 魔森巡礼 –Forest of lost prayer–
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魔森巡礼2

 アルプス共和国第十七地区は旧イタリア領ピエモンテと呼ばれる一帯を指す。

 この地は建国より三聖が一人、"剣聖"の天領である。剣聖はアルプス最強と呼ばれる西方国境警備隊の長であり、この地区の中心都市トリノにはその拠点がある。


「ユフォさん、お昼どうしましょう?」


 トリノ郊外の南地区に数人の男女が歩いていた。彼らは私服を纏い観光客を装っていた。長い茶色のドワーフの女性に問われた紅い髪のエルフの女性、ユフォは少し考えてから向こうを見た。


「ピエモンテっていえば、フリットかなぁ」


「じゃあ、あそこにします?」


「そうね。個室付きって書いているし、あそこにするよ」


 店に入ると個室に通してもらい、ピエモンテの名物である野菜や肉のフリットをアンチョビとニンニクのソースであるバーニャカウダを頂く。相当な量のニンニクが入っており、かなり強烈な料理である。


「ふう、食べたなぁ」


 ノームの中年、顎いっぱいに髭を生やしたパバロッティは彼らの中で一番の健啖家であった。


「久しぶりの故郷の味ってやつですか、パバロさん」


 パバロッティの隣席のヒューマンの若い長身の男ビリガーはトリノ名産の赤ワインを飲みながらパバロッティを小突く。


「俺はもっと南の出だけどな。そうだな、東じゃあ中々ありつけない懐かしい味だ」


「私はこのワインさえあればいいかな」


 ビリガーの向かいの席に座っていたエルフの緑に染めた短髪の女カーラは耳元の金のイヤリングを光らせながらグラスの赤ワインを一気に飲み干した。


「いくらエルフだからって飲み過ぎないでね」


 カーラを諫めたのは先程ユフォと話していたドワーフの女性である副隊長だった。


「大丈夫ですよ、先輩。私にとってはジュースみたいなものですから」


「そう言って、何回失敗したかしらね貴方は…」


「こ、怖いです先輩。ゆ、ユフォさん、助けて下さい〜」


 カーラは普段は冷静だが、酒が入ると急にフランクになる性格だった。


「ビリガー、カーラのワイン飲んじゃって」


「了解、隊長」


 ビリガーはカーラからワインを取り上げて飲み干した。「薄情者!」と暴れだすカーラを副隊長が拳骨で制する。

 ユフォは面白がりつつ、自分の鞄から書類を取り出す。書類は編入届であった。


「彼らのですか?」


ビリガーに問われるとユフォは頷く。


「一応、彼らはまだ一般市民だからね。国境を越えるにはには我々に形だけでも編入しておかないと」


「"西警隊"とは構えない方が絶対にいいですからね…」


「剣聖様は何と?」


「"伝書機"は届いているはずだけどまだ返事は来てないわ」


「キリからの情報じゃ、首都におられるらしいな。だとすりゃぁ、すぐには届かないだろ」


「そうね。でも、時間はあまりないわ。陸軍の連中がいつ動いてもおかしくないもの」


「もしあいつらが動いたらもって二日ってところですかね。先輩」


「もう目覚めたのカーラ。酔いはもう大丈夫?」


「お陰様で…っでどうしますか、隊長」


 隊長、ユフォは書類を見つめつつワインを飲んだ。


「うーん。困ったな。…二人は?」


「ホテルにいるわ。キリとメリュが付いている」


「彼は?」


「目は覚めたみたい。体調も大丈夫だけど…眼にも"封印呪符"を付けてあるから暴発の心配はないわ。でも、とても塞ぎ込んでいるわ」


「そう…」


「タカ殿も隣の部屋にエルーを付けて置いてある。メリュもいるんだろ?なら下手に動いても問題はないだろ」


 ユフォは後ろの壁に深く背を押しつけ、深くため息をついた。


「中々、上手くいかないものだなぁ…」


他人事の様に呟くとワインを一気に飲み込んだ。


「おっ、隊長もいきますねー!それじゃぁ、まずは、どこから攻めます?」


そうね…ユフォは書類を見つめつつ、行く先を決めた。

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