表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜の眼の魔術士  作者: 花嵐 龍子
第一章 山の下の街 -Town under the Mountain–
10/88

山の下の街9

 劔はトウジロウを縛り付けた椅子ごと店の前の小さな広場に来ていた。トウジロウは血溜まりの中でぐったりとしていた。


「さて、居なくなった貴方の家族のせいで私は貴方を殺せないでいます。彼らをちゃんと見張っていなかった私の大切な部下を自分で殺す羽目になってしまった。どうしてくれるんです?」


 広場の中心に椅子を置くと、懐のハンカチでトウジロウの顔を拭く。そして立ち上がると辺りに向かって叫ぶ。


「さぁ!ここにごさいますのは、貴方の大切な旦那様ですよ!貴方たちを守る為にこんなになって、いゃー私、感動しちゃったな!涙が出て思わず殺してしまいそうだなあ!そうだ、おい誰かノコギリ持ってこい。少しずつこの人の肉を削いで行こう。いいなぁ素晴らしい!」


やけに演技じみた挑発が闇夜に響いた瞬間だった。


劔を囲んでいた兵士たちが一斉に倒れた。

音も無く、血も出さず、彼らは即死していた。


(来たな…)


 劔は懐から拳銃を取り出した。銀のリボルバーの形をした少し小さめの銃には様々な色の弾が装填されていた。劔は虚空に向けて銃を構える。


『毒よ、死を喰らい、火は生を駆けよ!』


詠唱を唱えて引き金を引き放たれた銃弾は紫の光を帯びて虚空に進み炸裂した。たちまち紫の炎が辺りを燃やし尽くし照らした。


「さぁ来い!銀猫!存分に楽しもうじゃないか」

 劔から離れた建物の影からアリスはライフルを構えて劔を狙っていた。


("紫の炎"…迂闊に炎の明かりに当たれば、復讐の炎に追いかけられる魔弾!)


すかさず影に隠れてそばにいたアキと移動する。

逃げるついでにアキの持つカバンから小さなナイフを三本ほど取り出して壁に突き刺していく。

次の角を曲がったと同時にライフルを放つ。


『悪を滅ぼす銀の弾丸よ。我が猫と共に遊べ!』


ライフルから白い猫が弾丸と共に敵へ向かっていく。


『ウィンディーネよ!我らを写せ!』


アリスが走りながら詠唱を放つと壁に刺していたナイフが青く光る。

猫の弾丸の一つが劔の心臓を捕らえていた。あと少しで当たる時、劔は右手で弾丸を握った。

手の中で弾丸はさらに回転数を上げ、劔が手を挙げた途端、手を貫き紫の炎に消えていった。


(さすが。私の肉体を貫くとは。だが…)


弾丸を飲み込んだ"紫の炎"は少し強くなると弾丸が来た方向へ線を描いて走って行った。

 走っていくと青く光っていたナイフに襲い掛かり、たちまち刺さっていた壁の建物ごと炎が立ち昇る。


「あんな距離から。しかし、あれは当たっていないな。"水魔の楔"でも使ったか」


次の瞬間、劔の背後に白い猫が襲い掛かった。

 ユフォの部隊はもうすぐ抜け道である灯りのないトンネルを抜けようとしていた。


「隊長、向こうで戦闘が始まったようです!誰かが炎魔術を展開しています!」


「炎?まさかメリュたちか?」


「いえ、炎の色が違うので恐らく第三者かと思われます」


「分かった、総員戦闘準備。抜けたと同時に煙幕を展開。メリュたちと合流次第、Bルートで西に向かう。ポイントまで全力でつっきれ!」


「了解!」


「いくぞ、煙幕展開!走れ!」


 ユフォの合図と共に煙幕が張られ、マサノリはアリアを背負いながら全力で走った。

 すぐに銃声が聞こえてくる。目の前を弾丸が横切るのがわかった。怯んでマサノリはそのまま横に倒れた。衝撃でアリアと離れてしまった。

 やがて、風が吹いて煙幕が流れてきた。マサノリの前に紫の炎が見えた。そのまえには拳銃を持った男と、もう一人マサノリにとって、かけがえの無い人が居た。

 拳銃を持った男、劔は後ろから来た弾丸に肩を貫かれていた。


「がはっ…!」


身体に穴が空いたまま劔は拳銃をトウジロウに向ける。


「せっかく楽しめそうだったのに、とんだ興醒めだ」


トウジロウは腫れた顔で劔を睨んだ後、前を見た。遠くに白い煙の中にマサノリがいた気がした。


「マサノリ、後は頼む……思いっきりやれ」


そして劔は引き金を引いた。

遠くでアリスが叫んだ。

遠くでユフォが呼んだ。

アリアの近くでマサノリの叫ぶ声がした。

劔は頭を吹き飛ばされたトウジロウを見てほくそ笑んだ。


そして、アキはまだ状況をつかめないまま白い煙の中から真紅の炎に包まれたマサノリを見つけた。


炎は紅蓮で、どこまでも背筋の凍る怒りを宿していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ