土曜日
今日はやっと彼が帰ってくる。
いや、性転換してるから彼女か。
婚約者である彼女が来てから一週間。
彼女はすぐ出て行ったから一週間ぶりの再会となる。
彼女とはいろいろと話がしたいと思っていた。
しかし、翌日には出て行ってしまった。
これから彼女は月曜日に出て行って土曜日に帰ってくると言う生活サイクルを行うという。
つまり、一日一緒に過ごせるのは日曜日だけと言うこと。
正直寂しい限りである。
だから普段の私は彼女のことを妄想しながら生活している。
もちろん、勉強の時や友達と一緒の時はそうはしていないが。
なんせ婚約者だから妄想ぐらいは良いよね。
夕方、彼女は帰ってきた。
相変わらずの馬車に乗ってやって来た。
そして馬車からメイド姿の彼女が降りてきた。
私は即座に彼女にうれしさのあまり飛びつこうとした。
そして彼女に避けられてしまった。
彼女は
「お嬢様、まだ私には仕事がありますのでお相手には少し時間が経ってからお願いいたします」
メイド姿の彼女に怒られてしまった。
今日の夕食は彼女が作る。
そう、夕食が終わらなければ本物の彼女に会えないのだ。
夕食はとても贅沢なものだった。
うちの料理人もかなりの腕だと思うのだが彼女の手料理もなかなかのもの。
普段は日本料理みたいなものが主だが彼女の手料理はいわゆる西洋料理みたいなもの。
私の前世の記憶と照らし合わせると恐らくそういった感じ。
普段の食事とは違った気分で楽しめる。
食事が終わり後片付けと使用人たちの食事が済みやっと彼女が解放される。
私はそう思い彼女に話しかけた。
彼女は
「お嬢様、もうしばらくお待ちください。
ペットの餌やりが済んでからお嬢様の所へ行きます」
と彼女は言った
私はふと疑問に思った。
うちにはペットとなる動物がいないからだ。
私は彼女に
「ペットって何のこと?」
と聞いてみた。
彼女は申し訳なさそうに
「お嬢様に話していませんでしたか。
実は私、お父様のお許しを得て猛獣を4匹ほど飼っていまして。
一週間に一度その動物に餌をやらなければいけないのです」
私は
「その猛獣はどこにいるの。
いくら家が広いとはいえそんな猛獣がうちの中にいたら気づくと思うのですが」
と聞くと
彼女は
「その猛獣は地下の部屋に厳重に封印しています。
ですからお嬢様は地下には近づかないようにして下さい。
お嬢様の命に危険が起こりますので」
なんかうさんくさい話だ。
私は彼女に
「じゃぁ、あなたのいない間の餌やりは誰がやっているの?」
と聞いてみた。
彼女は言葉に詰まった様子で
「え〜と、その動物たちは一週間に一度の食事で大丈夫なのです。
ですから私が餌をやらないといけないのです。
その娘たちは私にしか懐いていないので」
ちょっと焦った様子で言っている。
私は
「ふ〜ん、私もその猛獣という奴を見てみたいわ。
その餌遣りというものを見学したいの」
彼女は慌てて
「私以外のものが入ると命の危険があります。
だから絶対に地下に行かないで下さい」
と否定してきた。
とりあえず彼女の言い分を聞き引き下がった。
とはいえ、完全に引き下がった訳ではない。
とりあえず彼女が油断している時に尾行をし始めた。
彼女は地下の階段を降りていった。
しかも大分警戒をしているようだ。
そして彼女は地下の一室に入っていた。
私も知らない部屋だ。
長年住んでいるけど地下にこんな部屋があること自体知らなかった。
地下の扉の隙間を私は覗いてみた。
その部屋には彼女以外誰もいない。
もちろん猛獣もだ。
そして彼女は何か呪文を唱えているようだ。
何かの術式なのか。
私は固唾を飲んで見守っていた。
しばらくすると動物が出てきた。
よく見ると虎、龍、孔雀、鳳凰と言った動物たちだ。
いわゆる召喚獣というものだと思う。
しかもこの4つの召喚獣は何かの書物で読んだが最高クラスの召喚獣。
一匹でも召喚できたら伝説の英雄クラスの実力の持ち主だ。
それをしかも4匹も。
私は唖然とした。
彼女がそんな能力の持ち主だと言うことを。
しかし、召喚獣たちの様子がおかしい。
なぜか彼女に敵意むき出しの様子。
それでも彼女はたじろぎもしない。
しばらくすると召喚獣たちは彼女を一斉に襲いだした。
私は思わず「キャー」と悲鳴を上げた。
その時、彼女は慌ててドアを開けた。
彼女は
「だから連いてきたら駄目と言ったんだ」
と猛獣にかまれながら私を諭してきた。
私は
「なんでその状況で平気なの?」
と尋ねた。
彼女は
「別に平気ではないよ。
私に噛みついているこの子たちは私が常に従えている聖獣たちさ。
一週間に一度、私の体内の中に流れているエネルギーが彼らの主食。
この体内エネルギーは私の体内の奥にあるから私をかまないと吸収することが出来ないんだ。
だから傍目には私が猛獣に襲われているように見えるってわけ。
それで君には見せたくなかったんだ。
それにこの行為は非常に痛い。
何回かするうちに慣れたけどね。
私の意識がなくなるとここ子たちの十分な餌やりが出来ないんだ。
ちなみにこの子たちはみんな女の子だからよろしくね」
そう言い終わると召喚獣たちは一斉に消えた。
それと同時に彼女は意識を失った。
彼女がうちに帰ってきて早々驚きの事実がありありだ。
明日、彼女が起きてきたらこのことについて話し合おうと思った。