覚醒
私がそれに気づいたのは10歳の誕生日の頃でした。
それまでは私は何不自由なく過ごしてまいりました。
パパやママも私を溺愛し本当に幸せな日々を送ってきました。
自己紹介が遅れました。
私、二条院 美淑と申します。
一応、裕福な家庭で育ってきました。
ところが、誕生日当日、目が覚めると急に前世のことがよみがえってきたのです。
まるで頭の中に何かがインストールされたかのように。
それは私のいる世界と全く違う世界。
そこでは私が生まれ学生生活を送りOLになり、そして結婚し子供を産みと一生の流れが私の頭の中に入ってきたのです。
それが一瞬の間に。
しばらくボーッとしていたのをお手伝いさんに咎められたのを覚えています。
でもなぜか前世での自分の死因やいくつで亡くなったのかを知ることが出来ませんでした。
そして、学校に着くとフラッシュバックかのように次の場面が出てきました。
それは恐らく死後の世界。
女神様らしき人が(顔はよく分かりませんが)
「あなたはまた生まれ変わらなければなりません。
生まれ変わるとしたらどういった人生をお望みですか?」
私は
「今世はとても穏やかな人生を送れました。
出来れば来世も穏やかな人生を送りたいです」
と答えると
女神様は
「分かりました。
でもあなたは元の世界で生まれ変わることは出来ません。
あなたは異世界で生まれ変わるのです。
そこで平穏に生きるためには特殊能力が必要です。
あなたはどんな能力を望みますか?」
私は
「そんなたいそうな能力は要りません。
普通に平穏に暮らしたいだけなのです。
人並みで充分です」
女神様は
「分かりました。
では、そういうことにしておきましょう。
良き来世を」
その映像が終わると私は友達に声をかけられた。
「ねぇ、どうしたの?
体調が悪いの?
もう学校も終わりだよ。
一日中ボーッとしちゃって」
私は
「大丈夫よ。
ちょっと気分が悪いけど、だから1人で帰らせてね」
と言い。1人で帰ることを選択した。
下校途中、全てを思い出した。
私は異世界転生したんだ。
異世界転生と言えばチート。
でも私の能力はいたって普通。
女神様にチート能力ぐらいもらっておけばと後悔した。
私のいる世界は中世のヨーロッパという感じではない。
異世界転生と言えばそう言う場所が相場だが私のいる場所は違う。
どちらかと言えば幕末日本のような場所。
着る服は和服が中心だ。
しかし、髪型は昔の日本のように決まっていなく私が元いた世界の髪型に近い。
とにかく髪型は自由だ。
ちょんまげの人や髪を結っている女の人は皆無だ。
電化製品は前世と同じくちゃんとある。
車やテレビまで。
かなりシュールだと思う。
ちなみに昔の日本人の偉人に似たような名前の人は1人もいない。
私が出会う人はみんな日本人の名前なのだが偉人に関連した名前は誰1人見受けられなかった。
私の国の偉い人でさえも。
私の家はさながら武家屋敷と言ったようなものだ。
といっても3階建てなのだが。
だからかなり違和感がある。
ちなみに家に帰ると私はエレベーターに乗り自分の部屋に入る。
3階が私の部屋だ。
ぬいぐるみとピンクとフリルが沢山置いてあるかなりファンシーな部屋作りになっています。
そして学校の説明をします。
私が通っているのはもちろん小学校ですが、剣術の授業を中心に習う学校です。
目指すは女剣士、女侍といったところでしょうか。
ちなみにこの世界では侍は女でもなれます。
男女比率は5:5といったところでしょうか。
そういえば、誕生日の時にパパが新しいお手伝いさんが来ると言っていた。
お手伝いさんと言うよりもメイドさんなのだそう。
メイドの専門学校に通っている才女なのだそう。
私より5つ年上の女性だそうだ。
今、通っている専門学校でも歴代に残る優秀な娘で他にもいくつかの大学や専門学校で優秀な成績を同時に通いつつ収めているそうです。
その娘は残念なことに若くして事故により両親を亡くしうちを頼って居候しながら働かせて欲しいとのこと。
聞けば聞くほどかわいそうになってきます。
といっても年は私より5つ年上と言うことは15歳、パパも一人っ子の私にお姉さんが出来たと思って優しくしてもらいなさい、と言っていた。
私もお姉さんが出来ると思いとても楽しみにしています。
そして、パパは続けてこんなことも言っていた。
「メイドさんが来る同じ日にお前の許嫁も来ることになっているんだ。
まぁ、顔を確認するぐらいだと思い、そんなに気を張らずにあって欲しい」
そういえば、許嫁がいたんだっけ。
私より5つ年上の。
以前会ったことがあるけれどとても格好良かったことを覚えている。
今も変わらない姿だろうか。
とにかく、容姿、言動共にとても格好良かった。
私たちは親の意向とは別に別れる時は一緒に結婚しようなんて誓ったっけ。
それがいつの間にか私の知らない間に親公認になっていたなんて。
会うのが非常に楽しみです。
パパは続けて
「それと同じ日にお前のボディガードも来るから一応会っておくように。
一応女性のボディガードだ。
年齢はお前より5つ年上だったと思う。
今はくノ一の専門学校に通っている優秀な生徒さんだと聞いている。
気が合うと良いな」
同じ日に何人が来るのよと私は改めて思った。
まぁ、どういった人たちなのかこれからが楽しみです。