女神に連れられ東京見物《池袋》
俺らの一行は、またまた山手線に乗って、渋谷から今度は池袋へと向かった。
『池袋ウエストゲートパーク』という、石田衣良の小説をしっているか?
これももう、20年近く前の話になるからなあ…。
その頃と比べても今の池袋は、様変わりしていることだろう。
その前に、まずは池袋を案内してくれる、『市区町村擬人化キャラ』を紹介しよう。
担当地域
東京都豊島区
氏名
豊島六十子
よみかた
としま・むつこ
さらに、練馬区からも、この娘が来てくれた。
担当地域
東京都練馬区
氏名
練馬マーサ
よみかた
ねりま・まーさ
「六十子です。」
「マーサです。」
俺は風来坊太郎という、よろしくな。
道案内等は、彼女たちに任せるとして、俺たちはただ案内される通りに、楽しもう。
新宿から山手線で、南に行くと渋谷、北に行くと池袋。
池袋には西武百貨店がある。パルコもある。
まあ、東京の有名どころの町はだいたいこんな感じだろう。
「新宿、渋谷、池袋と来て、次はどこなのでしょう。」
女神も喜んでいる様子。
しかしそれにしても、普通にゾンビやらドラゴンやら獣人やらが、そこらへんにいるというのに、人々は全く何ら違和感もなく、それどころか彼らと普通に会話までしているありさまだ。
上空には飛竜やらペガサスやらが飛んでいて、それが普通に旅客機と一緒に飛んでいて、何の違和感もなく接しているという光景を見た。
しかし俺が、いの一番に語りたかったのは、実は『サンシャイン60』に関する秘話だった。
「『サンシャイン60』が建てられる前は、『巣鴨プリズン』といって、
終戦直後にはA級戦犯やBC級戦犯という人たちが収容されていた刑務所があったところなんだよ。
もしかしたら当時収容されていて、そこで処刑された人たちの魂が、今もさまよっているかもしれないよ。」
女神、六十子、マーサ、一同ちょっと怖そうな表情を見せながら、話に聞き入る。
『巣鴨プリズン』の話では少々重苦しい雰囲気もあったが、また例によってショッピングと食べ歩きということになると、一同喜び勇んで、行く先々の店ではしゃぎ回る。
「六十子はこれが着たいな。」
「じゃあ、マーサはこっちのやつね。」
「私は、これがいいかな。あと、こっちのアクセサリーも欲しいな。」
その光景をただ見ているだけでも、風来坊太郎としては幸せだったが、実際に着てみたい服装の話とか、これは似合う、あれは似合わない、これよりもこっちの方が似合うという話をしながら一喜一憂する。
「そうだ、この歌知ってる?」
昔の歌でも池袋はよく歌われたが、彼女たちはどうも、そういった昔の歌はあまり知らないようだ。
青江美奈の『池袋の夜』という歌なのだが。
「昔の歌?どんな歌?」
「それって、何十年も前の歌じゃない。」
女神にも聞いてみたところ、
「実は私も、歌もそうだけど、歌い手のこともよく知らなくて。
お父さん、お母さんに聞いたことあるんだけど、お父さん、お母さんもよく知らないみたいで。
うちの団塊の世代のおじいちゃん、おばあちゃんに聞いてみたら、ようやくおじいちゃん、おばあちゃんが知っていた、っていう話よ。」
風来坊太郎が、なぜそんな古い時代の歌をよく知っているんだ?と、逆に不思議に思ったに違いない。
ここで、全国漫遊旅の、これまでの実績、ステータスを確認する。
これまで行った先は、北海道の札幌、新千歳、それと東京都練馬区、新宿、渋谷、池袋。
行ったといっても、北海道と練馬区以外は、山手線でも行ける範囲内を、行ったり来たりだからなあ…。
途中の目白、高田馬場、新大久保を経由して、再び新宿駅で下車する。
ここで日も暮れてきたので、適当なところで夕飯を済ませ、西武新宿線でいったん自宅に帰ることにした。