女神に連れられ東京見物《新宿》
よくよく考えてみると、札幌市内だけでも1日では周りきるのは難しい。
こんなペースでいったら、一生かかっても全国各地の全ての市区町村や離島なんて周りきれないと思うだろう。
俺は再び、東京都練馬区の自宅に戻ってきていた。
新千歳空港から飛行機に乗って、羽田空港から電車を乗り継いで、東京都練馬区の自宅に到着した。
その日は疲れたので、メシ、風呂、疲れた寝るー、で、そのままバタンキュウとなった。
翌朝、起きてみると、あの女神が朝食の準備をしていた。
朝食はハムエッグトースト、サラダ、バナナ、コーヒー、オレンジジュースだ。
またまた、勝手に上がり込んで、しかも朝食まで用意して…。
しかしこのハムエッグトーストは、俺が用意するよりもずっとおいしい。
俺は一人暮らしで、朝食も自分で用意してはいるが、それよりもずっとおいしい。
俺もハムエッグトーストは作るが、あまりおいしくない。
どうしたらこんなにおいしく作れるのか?と思った。
そう思ったのもつかの間、次なる疑問が頭の中をよぎる。
待てよ、合い鍵とかも渡していないはずなのに、なんで俺の家に入り込めるんだ!?
思い切って女神に聞いてみた。なぜ自分に接近したのかということ、これまでの一部始終に関して、聞いてみた。
「実は私、一度死んでいるんですよ。
ですから、この世の存在ではないんです。」
ということは、まさか、幽霊とか!?うひゃー!
だけど幽霊にしては、そんなに怖いという印象は無い。
「改めまして、私の本名は、過疎千恵といいます。
私はもともと、冴えない地方都市の出身で、生まれてこのかた、その町から出たことが無かったんです。
ですが、いつかは私も日本中、いえ世界中を旅してまわりたいと思っていたのですが。
ようやく就職が内定したと思った矢先に、交通事故で私は命を落としたのです。
それから、先代の女神様に見込まれて、私が女神様の後を継いで、あらためて女神と名乗ることになったのです。」
そうだったのか…。
だから、生前に叶えられなかった、日本全国津々浦々の旅を、俺とともに満喫しようと考えていたというわけか…。
「実は私、東京見物をしたいと思っているんですよ。
まず最初に新宿なんかどうでしょうか。」
新宿か、そういえば昔、西東京民は新宿よりも向こう側には行くな、なんて言われていた記憶があるのだが、別にいいじゃないか、と思う。
うちは東京都練馬区の西武線沿線にあるが、西武新宿線と西武池袋線がある。
うちは西武新宿線の沿線なので、最寄り駅から新宿まで行ける。
これは全国漫遊なのだが、全国漫遊旅行という名のゲームと考えている。
どこの町に何回行ったか、いくつの町に行って、いくつのおいしい店のメニューを食べたか、というのが全て自分のステータスになる。
東京の電車はよく遅れることがある。車両点検とかもあるが、よくあるのが荷物挟まりと急病人の救護だ。
そのたびに会社への連絡とか、遅延証明書の発行とか、それだけでどんだけ経費がかかってんだよ!と文句を言いたくなる。
こんなクソ現実のことなんか考えたくもない、だからバカげた空想でも空想の方が面白い、というやつは少なくないようだ。
そんなこんなと考えているうちに、あっという間に新宿に着いた。
新宿は東京都知事のおひざもとと呼ばれている。
新宿に限らず、都内のオフィス街は通勤のサラリーマンやOLでごった返すが、まあこれもクソ現実のうちか。
逆に、故郷や行楽地に人が向かう連休の時期などは、都心がシャッター通りとなる。
そんな話はおいといて、女神様の忠実なしもべである『市区町村擬人化キャラ』が、この新宿にもいた。
どうやら新宿区の擬人化キャラのようだ。
「私は、新宿久美といいます!」
新宿久美、そのまんまじゃん!
でもまあいいか。新宿といえばなんといっても、新宿副都心の超高層ビル群が、その象徴だ。
「新宿副都心のビル群が建つ前は、何があったか知ってる?
実はね、淀橋浄水場というのがあって、そこを再開発しようということになってね。」
この話だけは知っていたから、あえてひけらかすことにしてみた。
夜になるとビル群の明かりが輝く。新宿副都心の夜景は、まさに大都会として人々を引き寄せる、東京の象徴となっている。
今でこそ超高層ビル群が建ち並ぶその一帯は、実は明治の初めの頃は、まだ山林や原野が広がり、キツネやタヌキ、カワウソが住んでいたようなところだったという。
「新宿って、どうしても新宿副都心の高層ビル群のイメージだけど、他にも新宿御苑や、新宿中央公園といった、自然豊かな場所もありますよ。
超高層ビル群が建ち並ぶ景色と、自然の景色が融合して、絶妙なバランスを保っていますよね。」
あとは、新宿歌舞伎町だ。歌舞伎町は繁華街でもあるが、風俗店が建ち並ぶ一角があったり、犯罪率が高いというイメージがあるため、新宿久美もあまり近づきたくないという。
「新宿副都心の高層ビル群を、巨大な剣でぶった斬るなんていう、妄想を思い描いているんだけどなあ。」
「えーっ、そんなこと考えているなんて。」
またまたバカげた空想を思い描くのが、この風来坊太郎の悪い癖だ。
しかし風来坊太郎は、実際に風来坊太郎というネーミングで、このような話の小説を書いているのだ。
新宿副都心も実際にゴジラとかに破壊されたりしているからな。
さて、新宿からどちらの方面に向かおうか。
小田急線や京王線も出ているようだが、まずは、池袋方面か、渋谷方面にでも向かおうか。