序章
連休中も結局どこへも行かなかったなあ…。
その嘆きの声の主、その名は風来坊太郎。
どこかに旅をしたい、知らない土地を歩いてみたい。
日本全国旅をしてまわってみたい、と頭の中で思いながらも、結局それを実現させられずにいる。
今日も今日とで、その日の食事を買いに行く。
食事を買いに行く時と、トイレで用を足す時以外は、外出しないという、毎日同じような日々。
趣味といえば、旅行雑誌を読みあさるということぐらい。
ところが…!
ドガシャーン!
風来坊太郎は、トラックに跳ねられ死亡、したかに見えた。
ところがその後、風来坊太郎は透明になっていた。
というか、トラックに跳ねられて、肉体は跳ね飛ばされて大きく損傷したものの、魂の方はなぜか普通に近所の道を歩き回れる、という、訳のわからないような状況になっていた。
「これはいったいどういうことなんだ…?」
目の前にあったのは、ついさっきトラックに跳ね飛ばされた自分の肉体。
そして、過失運転で警察から事情聴取を受ける、トラックの運転手と、その運転手が乗っていたトラック。
トラックの前方は、衝突の衝撃で大きくひしゃげていた。
「これはいったい、もしかして幽体離脱ってやつなのか…?」
自分の身に何が起こったのか、まだ状況を受け入れられないまま、戸惑う風来坊太郎。
そして風来坊太郎の前に、女神と名乗る人物が現れた。
その女神の姿は風来坊だけにしか見えないようだ。
そして風来坊の姿も、やはりその女神だけにしか見えないようだ。
近くにいる警察官たちや、トラックの運転手、そして事故現場を見に来た野次馬たちにも、2人の姿は見えていない。
「女神…?って言ったな。」
「私が女神です。もしよければ、あなたの願いを叶えてさしあげましょう。」
またまた、状況が分からずに戸惑う風来坊。
しかしここは、女神の言うことを受け入れるしかないと悟った風来坊。
「あなたにはこれから、その姿のまま、全国津々浦々を旅してもらいます。
なに、簡単なことです。旅先でのことは逐一、私に報告すればよいのですから。」
「全国の旅!?」
「もちろん旅先での騒動や事件には介入することも可能ですよ。」
そして、風来坊は女神によって再び命を与えてもらったのだった。
そして、念願叶って、これから全国津々浦々を旅してまわることになったのだった!
「やっほほーい!」
「ただし、1つだけ忠告があります。
せっかく授かったその命と力、それを悪用しないことです。
そうした場合、どうなるのかは、あなた自身の身で悟ってください。」
なるほど、わかった、それじゃあまずは旅支度といこうか。さてと、何を持っていく?まずはどこへ行く?