東京駅~品川~新幹線で西へ~
三鷹の高校で同級生たちと、つもる話をしたり、食事をしたりして、気兼ねなく楽しんだ風来坊太郎だった。
家に帰ると、その日も女神が帰りを待っていた。
なんだかほとんど恋人同士のような関係になっているように思っているが、お互いに恋愛感情というほどのものはなかった。
成り行き任せで関係が続き、気がついたらここまで続いていたといったところだ。
「あのー、風来坊さん、今日は私の話を、聞いてもらえますか?」
女神こと、過疎千恵は、家と学校、家と職場を行き来するだけのマンネリ化した日々を長らく送っていた。
そしてどこにも旅行することができないまま、命を落としてしまった。
だから風来坊太郎は、そんな過疎千恵を不憫に思い、あらためて全国各地を旅することを決意したのだった。
「もう、家と職場を行き来するだけの、マンネリ生活には飽き飽きしていたからな。
毎日のニュースとかも、連日のように気の滅入るニュースしかないし。
朝から晩まで連日同じようなニュースばかりだな。翌朝まで同じようなニュースばかりだな。
そんなニュースばかり、もううんざりだ、もうたくさんだ。
だから、知らない土地へ旅に出よう。」
風来坊太郎はそう思っていた。
かといって、異世界に逃げる気にもなれなかったから、現実世界にとどまった。
「実は私、一度東京駅での待ち合わせをしてみたいと思っていたんですよ。」
「東京駅での待ち合わせか…。」
東京駅で待ち合わせて、そこから電車に乗って、どこへでも行くという。
そして東京駅の朝を迎えた。
辰野金吾という建築家が設計して建設させたという、大正時代の駅舎は、2014年に開業100周年を迎えるのを機に大幅リニューアル工事が行われて、大正時代に建設された当初の姿を取り戻した。
外観は大正時代の建設当時のものだが、中身はやはり、現代風のものだ。
その東京駅の丸の内口の改札口で、女神=過疎千恵は、風来坊太郎が来るのを待っていた。
「お待たせー!」
「風来坊さん!」
「待った?」
「ううん、全然待ってないですよ。
それじゃ、お次は新幹線に乗りましょう。」
新幹線といっても、東海道新幹線だけでなく、今は東北新幹線も東京駅まで乗り入れている。
今回は東海道新幹線に乗ることにする。
最新型の新幹線、N700系の『のぞみ』が、まるで2人を出迎えるかのようにスタンバイ。
「すごいですね!これが新幹線なんですね!」
過疎千恵は実物の新幹線には、乗るのも初めて、見るのも初めて、だから感激もひとしおだった。
「それではまもなく、博多行きの『のぞみ』が出発いたします。ご乗車になってお待ちください。」
旅にそなえて、駅弁と、ポテチなどのお菓子も買い込んでおいた。
「まもなくドアが閉まります。ご注意ください。」
新幹線のドアが閉まる。
そしてゆっくりと車両が動き出す。ここから先は途中の駅で下車するのもよし、そのまま終点の博多まで行っちゃうのも、いいかもしれないが…。
新幹線のチケットを取るのは大変だし、値段も高いからなあ、在来線のように気軽に途中下車というわけにもいかないか、と、風来坊は根拠の無い考えを巡らせていた。
それと、間違っても事故など起こさないでくれ。
とりわけ台車は大丈夫なんだろうな?ということが一瞬頭をよぎった。
旅の無事を祈り、手をたたき、手を合わせる。
パン!パン!
「なーむー。」
新幹線は走る。走る。
新幹線なら東京駅から品川駅までは、あっという間だ。
そこから、ひとまず新横浜まで向かおう。
「旅の予算のことでしたらご心配なく。
この旅で使える予算は、算定不能、こちらの裏技ガチャを使えばいいんですよ。」
そう言うと、出てきたのはパソコンのキーボードのようなものがついている、何やら奇妙な機械だ。
裏技ガチャ!?これを使えばいいのか。どうやらこれは、何かパスワードを入力するようだ。
突然、風来坊の脳裏に、ある言葉が浮かんだ。
風来坊はその言葉をパスワードとして入力する。
すると…。
「旅の資金が、\999,999,999,999円になりました!
これで旅の資金の心配はいりません!」
旅の資金が足りなくなったら、またこの裏技ガチャの機械を使って、キーボードでパスワードを入力すれば、資金がまた満タンになるという、そういう構図になっているのだという。
そうこうしているうちに、新幹線はあっという間に新横浜に到着した。




