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蛇の執着

作者: くくり

「か、母さん、それ何?」


我が家に家族.......ペットが来ました。


机の上にはニョロニョロと動き回る蛇がいた。


「何って蛇じゃない」


「見たらわかるよ......そうじゃなくて!なんでうちに蛇がいるの」


「ふふっ、じゃーん」


笑顔の母が取り出したのは......







「異世界留学プログラム?........ホームステイ先探してます?何それ」





そういえば.....最近ニュースにあったような?

異世界の門が開いてから300年がたち、向こうの住人との交流を深めるために、色々と計画がもちあがっているらしい.......

その中に、異世界留学プログラムがあった気がする。

まさか、うちに異世界からの蛇?が来るとは思わなかったけど。


「蛇の一族のラトル君だそうよ。仲良くしてね!同じ高校に通うそうだし!」


母親は爬虫類好きで、とにかく嬉しそうだ。

前から蛇飼いたいって言ってたし。







ていうか、ラトル君って高校通うの?

君って、この蛇オスなんだ。

黒い体に紅い目.........かっこいいな。

でも、どうやって通うんだろ?

授業はどう受けるの?

蛇が席についてる姿を想像して思わず疑問符が浮かんでしまった。








「ほら、皐月!挨拶しなさい!」


「あ、うん。よ、よろしくね、ラトル....くん」

目の前の蛇に対して挨拶する。



側から見たら謎すぎる。

ラトル君、蛇だし。

握手しないとダメ?





でも無理だ。

ラトル君、手ないし。







ぺこっ





蛇........ラトル君は頭をぺこりと下げた。


なんか........かわいいかも。





「よろしくお願いします。」




「?!」


「こちらこそ、よろしくね」




母は笑顔で返答してる.....

喋れたのか..........声、低っ..............

どうやって話してるのだろう?












「ラトル!サッカーやろうぜ!」


「はい。」



ラトル君が来て二カ月がたった。

私のクラスに転校してきて少しだけ騒がれたんだけど、順応性が高いのかあっと言う間にクラスにとけ込んでしまった。



それに最近は......





「ラトル君ってかっこいよね!」


「わかる!ミステリアスだし!」


「皐月、家ではどんな感じなのよ?」


「どんなって........」


なぜかわからないけど、女子からのモテ具合がすごい気がする。



「私は余り話さないからよくわからなくて.....」


「えっ、そうなの?」


「うん」


ラトル君と一緒に暮らしているが全然話さない。晩御飯のときもいないし。

風呂もいつ入ってるんだろ?そもそも風呂入る必要あるのかな?

彼?について謎なことは多い。



「もったいない!あんなイケメンなかなかいないよー?」


「そ、そうかな?」


「でも好きな人がいるって噂があるからなぁ、チャンスはないかもね」


「そうなの?!」


知らなかった......蛇がイケメンで、好きな人までいるなんて、よくわからん.....










「皐月さん。」


「?」


「下ですよ。」


「あっ、ごめんね」


ラトル君かっ!!下にいると見えないな......

久しぶりに話しかけられたけど、どうしたのだろう?


「どうしたの?」



「帰らないのですか?」



「委員の仕事があるから、少し残ろうかなって」


「そうですか........」



「ラトル君は?帰らないの?」



「私も手伝いますよ。」


どうやって...?

ポスターの貼り付けとかするのだけど......



「ありがとう!でも大丈夫だよ!先帰ってて!」


私はポスターの入った箱を持ち上げ、席を立つ。













ラトル君は先に帰ったのだろうか?

追いかけてこなかったし.....

ペタペタと貼りながら考える。


「ポスター多いなぁ.......」


ほんとは4人で貼る予定だったのに、誰も集まらないなんて......

みんな、忘れたのかな?




次のポスターを取ろうと手を伸ばしー.......




ぽんっ




「ん?」



手渡された?




顔を上げると..........そこには、男の子がいた。



誰だろう?

こんな子いたっけ、綺麗な子だなぁ





その子は無言で、私を見た。





赤い瞳が私を射抜く。




なんだか落ち着かない、あれ、あの赤い瞳.......

どこかで見たような??






「手伝いますよ」







低い声、綺麗な少年顔に見合わず、その子はとても低い声でそういった。




「も、もしかして..........ラトル君?」

思わず言ってしまった。


「もしかしなくても、ラトルです。」




人間?になれたんだ.........




「初めて見たよ、人間の姿。綺麗だね。」


「あ、ありがとうございます......そ、その嬉しいです、何回言われても慣れませんね......」



なんか照れてる。

あれ?そんな照れるようなこといった??

ラトル君が照れてるのを見たら、こっちも恥ずかしくなってきた。


「あ、ポスター貼らないとねっ」


「そうですね、半分やりますよ。」



急に人間になったラトル君.......今までずっと蛇だったのに、どうしたのだろう?


色々考えながら無言で作業を進めていく。







「やっと終わったー!!ありがとう、ラトル君。」



「いえ。」



そっけないなぁ。クールでミステリアス.......

クラスの女子が言っていたイメージが、人間の姿のラトル君によく当てはまる。

でも、学校でもラトル君が人になっているのは見たことがない。


わざわざ手伝ってくれるためだけに、人の形になってくれたのだとしたら親切だなぁ。



「皐月さん、私の姿どう見えてますか?」



「え?どうって.....」






黒髪に紅い目。白い肌に......あれ.......

よくよく見たら所々に鱗がある。

彼の首には、他の鱗とは色が違う......美しい色をした鱗が一つあった。

太陽の光を反射してキラキラと虹色に光る。



なんで気づかなかったんだろ。




「鱗.......綺麗だね。」

口から言葉が出てしまった。




ラトル君の顔が赤く染まっていく。

照れてるのかな?




「あ、あの.........僕の喉の辺りの鱗、見えますか?」


「うん、虹色に光ってて、とでも綺麗だよ」

あまり、綺麗を連呼すると変かな?

でも本当に綺麗で、つい言ってしまう。




「やっぱり...........皐月さん、僕は君が好きみたいだ。」


「?!」







謎の展開すぎる.......


ラトル君と私って全然接点なかったよね。

同じ家に住みながらも顔も合わせなかったし


急になぜこんな展開に?









紅い目.........私をじっと見てる。

目眩がする。

なんだろう、この感じ。

何か........あれ?



「....................」







目眩が収まり.......

とりあえず口から出せたのは.........






「そ、そっか..............あ、えっと先に帰るね!!!」





私は下を向いたまま、教室を飛び出してしまった。

















顔が熱い。告白とか初めてで...........

どうすればいいのかわからなかった。

世界がぐるぐるまわってる、

なんで好きになったの?

鱗が見えたから?わからないことばっか。

恋愛とかしたことなくて、私は家に帰るなり、部屋に閉じこもってしまった。









「急に何なのよ...........」







悶々とした気持ちで天井を見る。







「皐月ー!ごはんよー!」


行かなきゃ。

ラトル君もいるのかな?緊張するなぁ.......

ドキドキしながら行くとラトル君はいなかった。

いつものことなんだけど、なんだか変な感じがする。

やっぱり、好きって言われたから?







「あのさ、ラトル君ってどこで食べてるの?」


「部屋よ。恥ずかしいから部屋で食べたいって言っていたわよ〜」



恥ずかしい?

見られるのが嫌なのかな?

知らなかった........





結局、ごはんのときにも、その後にも、ラトル君は現れなかった。

そもそも帰ってきてるのかな?

私の部屋の隣はラトル君の部屋だけど、物音一つしなかった。








「はぁ..........」










家ではラトル君に会うことはなさそうだ。

学校ぐらいでしか接点なかったしね!

あの告白についてはまたラトル君に会ったときに考えよう。

そうしよう!!














と、思ったのだけど.......



「おはようございます。」



まさか朝から会うなんて。

私は玄関先に現れた男の子に驚きを隠せなかった。


「おはよ!こ、この時間に出てたんだね!」


なんで蛇じゃないんだろ?

というか、なんで今日に限って会うのよー!!


「皐月、学校に行かないと遅刻するわよ!

あんたはいつもラトル君を待たせるのだから」


「??へ?」


母親に急かされ、ラトル君ととも家を出される。



「...............」



「さぁ、行きましょう」




にこり。





輝くような笑顔!!

眩しい......

ちょっと待って、これってラトル君と一緒に学校に行く流れなの?

私は目立ちたくないー..........




今日は朝から変だ。










一緒に行きました。

私は何も言えませんでした。

蛇の姿ならまだしも、こんなイケメンな美少年に言われて.......言い返す術を私は知りません。


案の定、ラトル君(人型)と学校に行った私は質問責めに。








「お、ラトル上手くいったのか?」


「良かったな!」



男子達が何か言ってる。

どういうこと?










この日からラトル君は私とともに学校に行き、帰るようになる。

蛇だったのに、人型を保ち続けるし。

あれだけ、家でも会わなかったのに2、3回は会うようになった。

晩御飯は違うけど......

気がつけば、カップルとして扱われてるし

なぜこうなった??








私はまだ告白の返事もまだなのに。

いや、そもそも.........私、付き合ってとか言われたっけ?

よく考えたらそうだよね......







私はラトル君に話してみることにした。

このまま、曖昧なままにするのは良くない気がする。








すっかり日常の一部となってしまって、私は今日もラトル君と一緒に帰る。


「ラトル君、 今日、少し時間ある?」


「どうかしました?今日は何も予定はないはずですが。」


私の予定をなぜか把握しているラトル君.......


「話したいことがあるの。」


「はい。」


ラトル君はどこか、歯切れが悪い感じで返事を返した。

どうしたのだろう?



近くの公園で話すことにした。





「ラトル君、私ね、まだ告白の返事、してなかったよね?」


「!!」


ラトル君の紅い目が驚いたように見開かれる。


「私、ラトル君のことが、.............」









くらっ









あれ?







「それで......」







私は何を言おうとしてるの?

何が言いいたかったんだっけ?










紅い目を見ているとフラフラする。

綺麗。

太陽に反射される虹色の鱗も、紅い目もー








本当に綺麗。







「ら.......と.....る.......くん......?」





くらくらして、ふわふわして、、、ラトル君、





どうして...........笑ってるの?




私はそのまま気を失ってしまった。














倒れ込んだ少女を支えながら、ラトルはどこか恍惚とした表情で見つめていた。

紅い目に眠る少女がうつる。








「君はまた僕を拒絶するのですか??」




彼女は何と言おうとしたのだろう?




いや、またやり直せばいい。






絶対に逃がしはしない。







「蛇の執着から逃れることはできないよ」



絶対に。
















「今日もあのカップル仲良いねー!」


「ラトル君って皐月のことはなさなそう」


「確かに!」


「ぞっこんって感じだしね


「でも、皐月ってラトル君のことどう思ってるんだろ?」


「好きなんじゃない?ずっと一緒にいるし」


「そうだけど、なんだかぼんやりしてるし、変じゃない?」


「話も合わないときあるしね!」


「幸せなんだからそれでいーじゃん」


「ま、いっかー、次の授業なんだっけ。」


「体育?」


「移動面倒だなー」



少女の話題はコロコロ変わっていく。

中庭にいたカップルから次の授業の話へ

今日も一日過ぎていく。

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