男爵令嬢呼び出される
誤字脱字の指摘
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「聴取は以上です。ご協力有難うございました」
王都を巡回する兵士の方に、絡んできた方々を引き渡し、事情を説明し……私とミシェルが解放されたのは既に夕方近い時間でした。
私に絡んで来た方々は、最近王都で目立って来た犯罪組織の下っ端だったようで、これで組織を追い詰められる、と兵士の方々にとても感謝されました。
ええ。どうやら王都の治安維持に少しなりとも貢献できたようです。
けれど、折角の休日が潰れてしまいました。巻き込んでしまったミシェルにはとても申し訳なく思います。おまけに寮に戻れば寮母さんが玄関前で仁王立ちして私達を待ち構えていました。
「全く!連絡を貰った時は驚きましたよ。いくら下っ端とは言え、犯罪組織の人間を相手にするなんて……貴女達は魔導士のタマゴであって、軍人ではないのですよ?」
という言葉に始まり、それから小一時間程二人揃ってお説教を受けることになりました。ミシェルには重ね重ね、本当に申し訳ないことをしました。
「本当、ファナといると退屈しないわね」
部屋に戻って頭を下げた私にミシェルはカラリと笑って言って下さいました。夕食の為に食堂降りれば、他の寮生から「お手柄だね」と苦笑交じりの賞賛を頂きました。
苦笑交じりというのが気になりますが、私、賛辞は有難く受け取る主義です。
そして、その犯罪組織が一斉摘発されたのは約ひと月後でした。
一応協力者ということで、私とミシェルに軍から礼状が届いたのですが、その頃の私達は模擬試験直前でしたので、そんな事はすっかり頭をから抜け落ちていたのです。
ですから、その後に私達の身の上に降り掛かる災難等は微塵も想像しておりませんでした。
模擬試験の方は問題なく合格点を頂いております。ですが、この時叩き出した私の成績が更に事態を悪化させてしまったのは、不可抗力というものでしょう。
「うん。わかっていたけどファナってつくづく規格外よね」
「そんなことはないわ。私、こんな好成績を頂けるなんて思ってもみませんでした」
「謙遜もしすぎると嫌味よ?」
「謙遜なんてものじゃありませんよ。ステェア講師が正当に評価して下さっていたことに驚いているのですから」
「初日の技術確認以来、目の敵にされてたもんね…」
ミシェルが苦い顔をしています。私はあまり気にしていなかったのですが、ステェア講師の態度は私に特別厳しいというのです。
ステェア講師は初日に私の技術確認を行い、知識の浅さを不本意ながら披露してしまった講師です。あの件で彼女は教える側として立場を無くし掛けたのですさら、その元凶とも言える私を良く思わないのは当然ですよね。
そう言えば、ミシェルは呆れた顔をするのです。
「なんだかんだで、ファナって人は良いのよねぇ…」
と、ため息を吐くのです。私はそれに苦笑を返すのみ。これが何時ものパターンです。
そんな平穏な日々を過ごしていた私達の元に、軍本部から呼び出しが来たのは、結果発表から二日後のことでした。
召喚状の差出主はジルシード王国軍の近衛騎士団長。
「近衛騎士団長さんか何の用事なのでしょう?」
「この前の犯罪組織の一件に関することって書いてあるけど…」
「それこそわかりませんわ。わざわざ近衛団長様から呼び出される程のことをしたわけではありませんし。何か裏があるとしか思えません」
「裏ぁ?それって悪い予感しかないんだけど」
「ミシェル。それは私も同じですわ。しかし正式な召喚である以上は応じない訳にもいかないでしょう」
「諦めて行くしかないってことね」
やれやれとミシェルが肩を竦めていました。
私が召喚に応じ、軍本部の近衛騎士団詰所へ向かったのは、召喚状を受け取った三日後でした。




