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協力者は暇潰しがお好き

お久しぶりです。

更新遅くなりましてすいません。

そして長くなりました……。

 


 ーーブランドレス王国立学術学院。


 ブランドレス貴族の子息子女が集い、勉学に励むための場所です。故に当然の如く身分の上下という壁が存在します。主に待遇面で。

 魔術学校では成績最優先で待遇が変わるとか。あざとい方法ですが、互いに切磋琢磨し合う魔術学校であれば効果的でしょうね。

 私自身、本音のところでは魔術学校の方が気になりますが、今回は一応お仕事ですから仕方がありません。

 そして、自己紹介を済ませた私の周りには、腹の内が透けまくった笑顔で、薄っぺらい美辞麗句を並べ立てる子息達。

 学術学院の方針だと単純に家柄自慢という、まさに虎の威を借る狐のような子息子女の傍若無人を増長させるという結果になるのですね。

 ここまで彼等は各々の家柄自慢から始まり、一部には私には悪業としか聞こえない話を声高に自慢。その中に彼等個人が成したことは何一つありません。

 当たり前ですが、子息に過ぎない彼等に実績などある筈もありません。それでも何かしら情報があればと思っていましたが、はっきり言って無駄でした……。

 いい加減に鬱陶しいので、皆様にはお引き取り願いましょう。


「皆様、とても優秀なお家柄なのですわね。ところで申し訳ありませんが、私少々学内を見学したいと思いますので、失礼させていただきますわ」


 そう言えば、彼等は「是非案内させて欲しい」と仰られましたが、これ以上彼等に付き合っていては苛立ちばかりが募りそうですから、当然ながらお断り。

 私は失礼と断り、窓際の席で朗らかに会話を楽しんでいる男女四人の集団に近づきました。


「お話中失礼致します。ブランシュ=ファルブラヴ様に少しお願いがありまして、お声を掛けさせていただきました」


 私はそのグループの中でも、特に目立つ少女に声を掛けました。ブランシュ=ファルブラヴ公爵令嬢。毛先を緩く巻いた髪は赤毛混じりの金髪。少々きつめのお顔立ちですが充分美人ですね。勿論声を掛けたことに理由があります。

 ファルブラヴ公爵家は王家の信頼も篤く、代々優秀な人材を輩出する名家。ブランシュ嬢も才女として社交界で名を知られる御令嬢です。このクラスのまとめ役でもあるそうです。

 因みに、この辺りの情報は全てルディ提供によるものです。


「ブランシュ=ファルブラヴは私ですわ。ファルファーナ=ランデュオーナ様。何かお困りですか?」

「実は学院内を案内していただきたいのですけど、お時間を頂けますか?」

「そうですわね。間もなく次の授業がありますから、お昼休みで宜しければご案内させていただくわ。お昼休み前の授業は移動教室ですから、私達と参りませんか?そうすればその後食堂へもご案内出来ますし、いかがでしょう?」

「ええ。是非お願い致しますわ」

「いえいえ。ファルファーナ様が学院生活に馴染めるようお手伝いさせていただくのは、同じ学院生として当然ですもの。改めて自己紹介させていただくわ。ファルブラヴ公爵家の二女でブランシュ=ファルブラヴと申します。どうぞブランシュとお呼び下さいませ」

「ありがとうございます。私のことはファナで結構ですわ。是非仲良くして下さいませ」

「ええ。ファナ様となら仲良くなれそうですわ」


 そう言ったブランシュ様は、先程まで私を取り囲んでいた子息達の集団にちらりと視線を流しました。


「彼等はファナ様のご期待に添えなかったようですね」

「あら。ブランシュ様は視野が広いのですね」

「視野を広く持たなければ貴族としての義務を果たせませんもの」


 意訳すると「彼等相手じゃ退屈でしょう?」「あら?見えてました?」「周囲の確認は状況判断に必要ですから」という会話になります。それがわかるのか、ブランシュ様といた方々がクスクスと笑っておられました。

 どうやらこのグループは当たりですね。


「ブランシュ様。宜しければそちらの皆様もご紹介いただけますか?」

「これは失礼致しましたわ」


 ブランシュ様はそれから一人一人簡単に紹介してくださいました。

 青み掛かった黒髪に青い目の子息はリューク=ニールズヤード。侯爵家の三男だそうです。人懐こい笑顔に癒されそうです。

 もう一人の男子生徒は、グレンドーラ伯爵家の長男でマルキス=グレンドーラ。既に子爵位を賜っているそうで、学年一の秀才だそうです。理知的な深い緑の瞳に淡い茶色の髪。おまけに美男子です。

 残る女子生徒はエゼルリーナ=サザルナード。サザルナード伯爵家の長女で、リューク様とは幼馴染みだそうです。癖のないさらさらの黒髪に優しげな光を湛える薄茶の瞳。美人というより可愛いという言葉のほうがしっくりする美少女です。

 んー。

 これはかなり目立つ集団でしょうね。全員伯爵以上の位を持つ家の子供で、一人は子爵位にあるのですもの。


「あら?ではマルキス様は領地運営を?」


 ジルシードでは子爵位を賜ると、親である伯爵の領地の一部を譲り受け、領地運営を学びます。ブランドレスではどうなるのでしょう?


「いや、僕はまだ学生だからね。卒業後は領地運営をするようになるけど、学生のうちは勉学に専念するように言われているんだ」

「そうでしたか。マルキス様とは今度領地運営について是非お話させていただきたいですわね」

「はは。ジルシードの筆頭公爵家の御令嬢と議論か。とても有意義な時間になりそうだ。是非お願いするよ」


 マルキス様の目が一瞬だけ、私を見定めるように鋭くなりましたが、不快な感じはしません。むしろ挑発的な感じがして、私としても彼との議論は楽しめそうな気が致しました。

 問題の教団に関係する貴族の子供達と接触しなければいけないのに、こんな目立つ集団に混じってしまったのは、少々動き難くなるかもしれませんが……まあ、いざとなれば彼等も巻き込んでしまえば良いでしょう。

 その後、約束通りに移動教室から昼休みまで、彼等と行動を共にしました。

 ひととおり学内を把握すると、放課後、ブランシュ様からサロンにご招待されました。サロンというのは学内の温室に併設された半個室のカフェ。利用するにはある一定の条件が必要だそうです。その条件はまず伯爵位以上であること、そして成績が上位十番以内であること。最後に品格品性。

 ……品格品性って誰が見極めるのかしら?そして目の前にはブランシュ様を始めとした先程の四人。なんか納得。


「さて、と。早速本題に入りましょう。ファナ様は何をお調べになりたいのかしら?」


 柔らかな香りが漂う紅茶を出したブランシュ様は、直球を投げて下さいました。その横でマルキス様が苦笑なされております。


「調べる…確かにブランドレスの学問を学ぶということは調べるということになりますね」

「あら?誤魔化されてしまいました。では質問を変えましょう。ーー目的はガルーダ伯爵家の御子息、マイアス様ではありませんか?」


 ブランシュ様の言葉に、不覚にも私、思考が一瞬停止致しました。直球どころか豪速球を投げられたようなものです。


「御安心下さいませ。私達四人、ルディ様とは旧知ですの」

「…そうでしたか」


 今回の件はあくまでも内々に調査するということで、ブランシュ様がそれを知らされていると考えられなくもないけれど、調査に関与する人間は少ないほど良いということで、極最小限の人数しか動いていません。ですから彼女が知らされている可能性は低い。


「つまり、幼馴染みの思考回路くらい簡単に読める、と?」

「ふふふ。昔から殿下は詰めが甘い所がございますの。それに教団のことは我が家も警戒してましたから、情報収集は怠りません」


 集まった情報から正解を導く。これは政治の基本と言えるでしょう。情報とはそれほど大切なものなのです。それが例えどれ程些細なものであっても、繋ぎ合わせる為のきっかけになることもあります。


「ブランシュ様は才女と伺っておりましたが、予想以上でしたわ」

「まあ。ジルシードの天才と呼ばれるファナ様に褒めていただけるなんて、光栄ですわ」

「はい?天才?」


 そんな風に呼ばれたことは一度だってありません。


「ご存知ありませんの?ファナ様の編入にあたり、学内ではジルシード王家秘蔵の天才が留学してくると噂になっておりましたのよ」

「……その噂の出処って、やはり……」

「ええ。お考えの通りです」

「あの馬鹿……」


 ルディにはあとできっちりお仕置きしましょう。


「そこで提案ですわ、ファナ様。ファナ様のお仕事、私達も協力させていただきたいのです」


 予想通りブランシュ様は協力を提案して下さいました。しかもかなり楽しそうに、裏があります、という笑顔。

 よく見れば、他の三人も何やら黒い微笑みを浮かべております。


「皆様、退屈なんですのね」


 遊びだ。

 彼等は面白い悪戯を思い付いた時の子供と同じです。まあ、優秀であればあるほど、この学院での生活は退屈でしかないでしょうね。

 今日一日授業を受けて、つくづく思い知りました。まさに貴族育成のためだけの学院なのです。しかも授業レベルの低さといったら……これ、本当に受ける必要があるの?と首を傾げるほど初歩的なものばかり。

 学術学院より魔術学院へ進学する方が多いのも納得です。


「ここは本来魔術の素養を持たない貴族の子弟の為に作られた檻のようなものなんだ。魔術を使えないもの同士なら能力による差別は起きない」


 リューク様が説明して下さいました。


「そのせいで妙に身分の上下が際立ってしまってね。しかもこの学院生の大半は魔術素養がないというだけで家庭では基礎教育以外の教育を放棄されていた者が多いんだ。だから必然的に授業内容がね……」


 リューク様は溜息を交えつつ、実情をご説明下さいました。


「僕達がここに送られたのは、あまりに学院のレベルが低いことを危うんだ国が、梃入れするためなんだよ」

「此方としては迷惑以外の何物でもないのですけど、国からの命とあらば断ることもできませんでした」


 と、マルキス様とエゼルリーナ様。


「というわけで、私達は刺激を求めているわけです」


 ブランシュ様が締め括り、私はこの国に対する認識を改める必要性を感じたのでした。


「わかりました……ルディに報告すると面倒なことになりそうですから、あくまでも内密にはご協力をお願い致しましょう。そのかわり、私の指示に従っていただきますが、よろしいかしら?」


 おそらく断った所で彼女達は勝手に動くでしょう。その結果、混乱が起きてしまっては元も子もありませんし、それなら最初から情報共有をしていたほうが都合が良いでしょう。元々何かあれば巻き込むつもりでもありましたしら、


「勿論ですわ」

「ファナ様のご迷惑になるのは本意じゃないからね」

「微力ながらお手伝いさせてもらうよ」

「楽しみです」


 最後のエゼルリーナの言葉が引っかかりますが、まあ情報収集は人手が多いほうが便利ですからね……。

 はぁ……。

新しい人々が登場。

当面この五人を主軸に話が動きます。


しかしファナちゃん。

我儘令嬢の欠片もありません。

別方向からみれば我儘ではありますけども。


そして自ら巻き込まれにきた暇人四名。

ファナにとっては美味しいイケニエ候補が転がり混んできたようなものです。


誤字脱字を発見されましたら、ご報告をお願いいたします。

感想などいただけると、泣いて喜びます。

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