男爵令嬢の初心
初めまして。滸いろはです。
拙い文章ですが、楽しんでいただければ
さいわいです。
ファルファーナは、貴族とは名ばかりの貧乏貴族アールディータ男爵家の長女として生まれた。
国から下賜された領土は貧相で、他にこれといった名産も無い、よく言えば長閑、悪く言うなら寂れた……という枯れた土地だった。
故に、アールディータ男爵家の人間は領民に混じって畑仕事をしたり家畜の世話に走り回ったりと、大凡貴族らしくない生活を送っている。そんな男爵家の人柄は領民からは好意的に受け入れられており、貧しいながらも、それなりに皆平和に暮らしている。
しかし、何の取り柄もないこの地。
このままではマズイ。
もし旱魃等の天災が起きれば、途端にこの地の領民の生活は立ち行かなくなる。
そう考えたファルファーナは、領地を立て直すため、兎に角一心不乱にあらゆる分野について勉強を重ねた。
当時ファルファーナは五歳。なんとも可愛気のない現実的な幼児である。
そんなファルファーナが七歳になった頃、村に一人の旅の老人がやってくる。
ボロボロのマントに伸び切った髪や髭。膝が悪いのか、杖を突いて歩く老人は一夜の宿と食事を求めてきた。
ファルファーナはなんの疑問も持たず、正体不明の老人を迎えいれ、ついでに体調が整うまで滞在することを勧め、家族もそれをあっさり了承した。
そして現在。
老人はいつの間にかアールディータ男爵領に居を構えている。
オルエ=メイレスというこの老人は、元王宮魔導師としてそれなりの身分を持っていたらしいが、引退後に身分は返上、家財道具一色を処分して、必要最低限の資金を手に、国内を歩いて見て回っていたという、変わり者だった。
勿論そんなことを知るのは本人のみで、アールディータ家の人々は勿論、領民達も流れの魔導士だと思っている。
アールディータ男爵家の人々を気に入ったという彼は、ファルファーナが魔法に興味があると知ると、自らファルファーナの師となることを希望し、ファルファーナもそれを喜んで受け入れた。
かくて、ファルファーナは史上に残る名女魔導師への道を歩みはじめる。
それから十年。
ファルファーナはオルエの紹介でジルシード王国の王都マジェスタにある、国唯一の専門教育機関である魔術士養成学校の門を叩いた。
全寮制で養成期間は一年から三年。実質的には魔術士昇格試験のための学校である。
故に一発合格すれば一年で卒業できるが、不合格であればまた一年やり直し。ただし仏の顔も三度までで、授業料や寮費用は国庫から賄われているため、三年続けて不合格の場合は強制退学となる。
因みに、なぜ全寮制かと言うと、これにもちゃんと理由がある。
魔術士はその性質上、技術以上に術者の人格と品性が問われる。一年以上の期間を他者と共同生活を送る中でその人間性を評価し、実技試験の結果と合わせて合否判定されるのである。例え人間性に問題があっても、講師達が矯正するようなことはしない。
自律自制してこそ一流だからーーという理由だ。
このジルシード王国で魔法を扱う者には、魔法士、魔術士、魔導士、魔導師と階級がある。
自ら国に認定を申請し、国がそれを受理すれば、誰もがなれる民間資格が魔法師。
……なので、あくまでも生活に身近な術を行使する以外は許されていない。人に害をなすような術の使用は禁止されており、もし魔法で他者を害せば罪に問われる。
これが魔術士となると国家資格となり、これらの制限が解除される。
魔術士となった者は魔術理論を研究する魔導師と、実践魔術を研究する魔導士のどちらかの道を選ぶことができる。勿論、どちらも選ばず魔術士として現場で働き続けることもできる。
そういった諸々の事情をオルエからしっかり叩き込まれたファルファーナは、万全を期して養成学校へ足を踏み入れたのだった。
後拝読ありがとうございました。
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