俺はイリアを待った 『イリア、遅いな』
俺は転移方陣を設置した王都の家にいる。
目の前には屋台や近所の食堂で買った食べ物。
これが今日の昼食だ。
食べ物は、ちゃぶ台の上に乗せてある。
そして丸いちゃぶ台を挟む形でコーネリアと食事中だ。
ちゃぶ台や畳を伝えたのが俺ではない事だけは強調しておく。
俺ではない……ハズだ……多分。
「買い過ぎじゃない?」
「まあ、4人で食べるのなら問題はないだろう」
俺の前には大量の料理がある。
屋台の料理が中心だから濃いめの味付けが多い。
明らかに体を壊しそうな濃い味付けだが……まあ、いいだろう。
なにせ俺達は育ち盛りだからな。
※育ち盛りでも塩分の摂り過ぎは体に良くないので注意しましょう。
言い忘れていたが、ラゼルとセレグも、ちゃぶ台を囲んでいる。
世界樹へ向かうために俺達は集まっている。
ガリウスは世界樹に住み着いているし、シルヴィアは自分で転移方陣を扱える。
だから、後はイリアが到着すれば世界樹へと向かえる。
「それ、とってくれ」
「おう」
俺はラゼルに焼き鳥? の乗った皿を渡した。
何の肉が使われているかは俺も知らない。
「お茶をいただけます?」
「湯呑を貸してくれ」
セレグから湯呑を受け取った俺は、横に置いた急須でお茶を入れた。
もちろん入れたのは緑茶だ。
「熱いぞ」
「ありがとうございます」
俺がセレグに湯呑を渡すと……
「三回まわって、ワンってして」
「おう」
俺は三回まわり……しなかった。
「おいっ」
「残念」
最近、コーネリアからの扱いが酷くなっている気がする。
気のせいで……あって欲しいな。
「なんかお兄ちゃんが、お母さんみたいだったから」
「普通は、母さんに三回まわってとかさせないだろ」
「そう?」
コーネリアは完全にとぼけている。
完全におちょくられているよな兄。
「お前も母さんに三回まわってとかさせないだろ!」
俺は、負けっぱなしになるようで悔しく反論してみる。すると……
「ニーナ様は、お姉様だから」
「……そうか」
ウットリとした表情で母さんを想像するコーネリア。
その表情に、俺は妹の中にある何かが手遅れだと確信した。
「まあ、食え」
手遅れな妹に憐みを感じた俺は、お好み焼きっぽい何かを渡した。
何が使われているかは俺も知らない。
「……」
「そうか」
妹から無言の圧力受けて、俺は目を反らした。
どうやら彼女に向けた憐憫の情が伝わってしまったようだ。
「……」
まだ睨んでいるな。
目を背けながらも俺は向けられた視線を感じていた。
「イリア、遅いな」
「そうだな!」
ラゼルが助け船を出してくれた。
その船に俺は喜んで飛び乗り声にも勢いがついてしまったようだ。
「……」
そんな俺をコーネリアは先程と同様に無言で見ている。
だが、コーネリアからの圧力は、呆れの感情へと変わっていた。
俺を単純だとか思っているのだろうな……きっと。
この瞬間、彼女の中にある俺の評価は再び下がったのを感じる。
一層酷くなるであろう俺の扱いを想うと泣きそうになった。




