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魔王達の晩餐 『そろそろ始めないか?』

コメディー要素皆無ですm(_ _ )m

 城の周囲は炎に包まれていた。

 火の海──城の周囲を例えるのなら、この表現が適切かもしれない。


 城の周りで揺らめいている炎は多くの命を喰ってきた。


 理性の強い者なら気付くだろう。

 この炎は己の中に自分を誘っていることに。


 注意深い者なら見抜くだろう。

 目の前の炎は喰らった者達の怨嗟をはらんでいることを。


 炎達かれらは生きた炎。

 魔王のしもべにして招かれざる客を喰う城を守る門番。


 招かれた客人以外は、全て彼らの餌にすぎなかった。



~炎に包まれた城 前~


 一台の馬車が炎へと向かって行く。


 この馬車に乗るのは2人の魔王。

 生きた炎達の主が招いた大切な客人だ。


 炎は彼等の行く手を遮ってはならない。

 炎は彼等を歓迎しなければならない。

 炎は彼らに畏怖せねばならない。


 何故なら馬車に乗る魔王は天蓋の存在たる己が主と肩を並べる者なのだから。


 生きた炎達は道を譲るかのように左右へと割れた。

 主の客人を通すために……


 2人の魔王が乗った馬車は炎が左右に割れて作られた道を進む。

 揺らめく炎が馬車を歓迎しているかのような不思議な光景を生んでいた。


「相変わらず派手な歓迎だ」

「同感だ」


 うんざりしたような声で歓迎する炎への感想を漏らしたヒルダ。

 そして珍しく彼女の言葉に賛同するシリウス。


 これは相性が悪い2人にとって数年ぶりに計られた意思疎通と言える。

 2人の間にあった張りつめた空気も柔らかくなっていた。



~炎に包まれた城 円卓の間~


 城の中で2人は円卓を囲む形で椅子に座っていた。

 その場にいたのは、2人も合わせて合計5人の魔王。


 13柱の魔王は好きに動いている物がほとんどだ。

 このため交流の深い者だけが集まっている。


 当然のごとく円卓に設置された13柱の魔王が座るために用意された椅子。

 5人しか集まらなかったため、まばらに埋まっている状態だ。


「今回も、このメンバーか……」


 最初に口を開いたのはジェサードという魔王。

 今回、13柱の魔王に招集をかけた張本人でもある。

 

 彼は炎を思わせる赤い髪と深紅の瞳を持つ魔王。


『炎獄の魔王』と呼ばれており、協調という言葉が欠落している13柱の魔王をまとめている。


「……5人集まっただけマシだ」


 円卓の周りに設置された、主のいない椅子を眺めながらシリウスは言った。

 彼の言うとおり13柱の魔王が5人集まっただけでも十分な成果だと言える。


 13柱の魔王と言っても基本的に相互不干渉。

 自分に害がない限り、相手が何をしようが他の魔王に文句を言うことすらない。


 シリウスは黒曜石を思わせるかのような黒髪だ。

 そして黒い仮面で常に顔を隠し黒い服の上に黒い軽鎧を着ている。


 このような外見のため、『漆黒の魔王』と呼ばれている。



13柱の魔王おれらは勝手っすからね」


 シリウスの言葉に続く形で口を開いたのはカーティスという魔王。

 白髪に青い瞳をしている。


 一見するとチャラい兄ちゃん。

 だが13柱の魔王に数えられるだけの実力はある……ハズ。


 カーティスの力については、40年前に人間の国を滅ぼしたこと以外は不明だ。

 さらに滅ぼされた国の人間はお互いを殺し合う形で滅んでいる。

 このため実際に戦った場合の実力は測れない。


 同士打ちにより一刻を滅ぼしたことから、人は彼を『いざないの魔王』と呼ぶ。


「5人も集まれば上出来だ」


 次に口を開いたのは褐色の肌をした巨躯の男だった。

 彼の名前はダラスという。


 その見た目から察することが出来るように剛力を有している。

 かつて怒り狂い多くの国を滅ぼしており『憤怒ふんぬの魔王』と呼ばれている。


「そろそろ始めないか?」


 ジェザードをかしたのはヒルデ。

 銀色の髪と金色の瞳に病的と言える白い肌を有している。

 一見すると男装の麗人ともいえる彼女は『銀光の魔王』と称されている。


「そうだな」


 ジェザードはヒルデの言葉に促される形で魔王達の晩餐が始まった。


 彼ら自身は、この話し合いを魔王の晩餐とは呼んでいない。


 魔王の晩餐と呼び始めたのは人間だった。

 この言葉は隠語であり、世界を喰らう魔王達の話し合いという意味が込められている。


 強大な力を持つ彼らの話し合いは世界に大きな影響を与える。

 かつては世界最大の国家を滅ぼし、ある時は人に仇なす強大な魔物を葬った。


 時に人間の世界に災いをもたらし、時には人に救いの手を伸ばす。

 

 魔王の晩餐で何が話されるのか?

 その内容次第では世界が大きく傾く。 

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