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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第5章-C 凄い勇者は旅行をする
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俺は聖杯を引き取った 『毒舌ゴーレムが!』

 始まりの村で残った仕事は、聖杯を受け取るのみだ。

 

 剣の一件で妹と1時間ほど正座した状態でコミュニケーションを行った。

 このため、足に違和感を抱えたままザイオンの元へと向かっている。

 

 

 ~始まりの村 墓地~

 

 俺は墓石代わりの木が植えられた墓地を歩いている。

 脚の痺れは大分だいぶ治まったが、まだ違和感が残っている気がしてならない。

 

 何で正座などと言う文化がこの世界にあるのだろう?

 このように疑問に思ったがすぐに1つの可能性に思い当たった。

 

(そう言えば叱られる時、俺は率先して正座していたな)

 

 前世の俺は叱られることに慣れていた。

 だから相手の怒りを和らげる知恵もそれなりに持っていたんだ。

 

 そんな知恵の1つに正座がある。

 叱られる前に率先して正座を行うことで相手の怒りを和らげようとしていた。

 

 そんな俺を周りの奴らが真似をし初めて正座が広まったのかもしれない。

 

 仮にも大勇者という肩書があったからな。

 影響力はそれなりにあったハズだ。

 

 と、なると……ここまで考えて考えるのをやめた。

 自業自得の可能性を深く考えないようにしようと思ったからだ。


 俺が広める原因になったと確定しない限り他人のせいにできるしな。

 他人のせいにした方が精神的に楽だ。


 これからも俺は叱られ続けるだろう。

 だから少しでも精神的な負担を減らしておきたかった。

 

 

 俺が墓地の奥へと進んでいくと白いゴーレムの巨体が見えた。


 ザイオンは、最初の日に合った時と同様に石碑の周りをほうきで掃いている。

 

「おはよう」

「なっ 挨拶を!!」

 

 前世で構築した大勇者おれの評価は凄かったようだな。

 石碑の前を箒で掃いていたザイオンは手を止め驚いている。

 

 ゴーレムだから表情は分からないが、驚いている以外には考えられない反応だ。

 

「…………」

「失礼。おはようございます」

 

 聖杯の作成を頼んだことだし、今の反応には触れない事にしようと思う。

 

「聖杯を受け取りに来た」

「準備は出来ております」

 

 ザイオンは箒を抱えて小屋の方へと歩きだした。

 

「コチラへ」

 

 軽く振りかえり着いてくるようにザイオンは促す。

 彼に案内される形の俺は、ザイオンの数歩後ろを歩く形となった。

 

(この毒舌ゴーレムめ!)

 

 俺の数倍の大きさはある背中に悪態をつきながら小屋へと向かった。

 

 また叱られるから、悪態を口に出す勇気は持てない。

 だから心の中で言い続けようと思ってたのだが……

 

「人への悪口は心の中でもヤメテおいた方がよろしいかと」

「そうか?」

 

 そういえば俺は考えていることが顔に出やす……いや、違う。

 ザイオンは俺の方を見ることもなく考えを言い当てやがった。

 

「…………」

「…………」

 

 俺とザイオンは歩いている。

 彼の小屋は近くにあるのだが、それでも歩いて数分は掛るためだ。


 なぜ俺の考えを彼が言い当てたのか気になって仕方がない。

 

 しかし俺の考えを言い当てられたのかを質問するわけにはいかない。

 心の中で悪態をついていたことを認めることになるからだ。

 

 悪態をついたことを認めたらが最後。

 お説教タイムが待っているハズ。

 

 今日のお説教は、もう充分に妹から受けた。

 絶対に、これ以上のお説教は嫌だ。

 

 俺は葛藤を胸に抱えながらも質問をするのはヤメテおくことにした。

 

(好奇心は身を滅ぼすことがある甘美な毒薬だからな)

 

 俺は自らを戒めるため名言っぽいことを心で呟いてみた。

 

「その言葉を口にしても、恥をかくだけですからご注意ください」

「お、おう」

 

 どうやら、今回も心を読まれたようだ。

 もう考えるのはヤメテおこうと思う。

 

………

……

 

 しばらく歩くとザイオンの小屋へと着いた。

 俺が彼の小屋へと入ると、すぐに目当ての物を発見する。

 

「これか?」

「はい、材料となる物を頂けたのでスムーズに作成に取り掛かれました」

 

 俺は聖杯の材料をザイオンに渡しておいた。

 最初の日にではなく翌日の叱られた日にだ。

 

 勇者コレクションを最初の日に整理していたら、素材が出てきたので渡した。

 彼の負担が少しは減ったので、お叱りを手加減してくれたのだと思う。

 

 もう少し、お叱りの時間が長ければヤバかった。

 俺は眠りに落ちて、彼の感情を逆撫でしていたことだろう。

 

「……どうぞ、お受け取り下さい」

 

 俺に聖杯を渡したザイオン。

 声を出すのに少しの間があったのは、また俺の心を読んだせいなのだろう。

 

「ありがとう」

「…………」

 

 俺が発した礼の言葉に固まるザイオン。

 ふむ、声に出して驚かないことを評価し及第点と言ったところか?

 

 俺は意味のわからない評価を彼に下して小屋を出ようとした。

 

 だが1つ聞いておこうと思う。

 

「なんで俺の考えが分かるんだ?」

「あなたの考えを予測しただけです」

 

 どうやら俺が単純だったということらしい。

 

「スバル様の思考は特別に読みやすいというのが第一にあります」

「……そうか」

 

 一瞬、『毒舌ゴーレムが!』と言ってやろうとしたがやめた。

 間違いなく、お説教タイムに突入するからだ。


「もう1つの理由を挙げるのなら、私の中に眠る長達おさたちの精神です」

「…………」

「彼らの精神を通して思考すれば、スバル様の思考程度なら予測は簡単です」

 

 彼が放つ言葉のトゲは聖杯の対価として受け取っておこうと思う。

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