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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第5章-C 凄い勇者は旅行をする
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俺は勇者コレクションを整理した 『……禍々しいな』

 俺はザイオン(ゴーレム)に聖杯の作成を頼んだ。

 これで今回、この村に来た目的の大半は果たしたことになる。

 

 あとは勇者召喚と壁画の説明だが、これは明日になってからだ。

 


~始まりの村 借りた空き家にて 夜~


 すでに夜となっており太陽は沈んでいる。

 俺達は借りた家の中にいた。

 

 室内には、光の球が天井付近に3つ浮いている。

 これは照明代わりになる魔法で俺とシルヴィアとコーネリアが使った。

 

 この魔法のおかげで室内は、かなり明るい。

 

「暇ね~」

「はい……」

 

 シルヴィアとイリアが暇だと話している。

 

 始まりの村では、禁欲的な生活を送る人間が多い。


 ココは、勇者召喚を行える一族が住むため聖地とされている。

 定期的に転移方陣を仕える者と数人が、外の街に行き必要な物を買ってくる。

 その時に、修業を望む者たちを連れてくるのが、村の慣習だ。

 

 修業を望む者を多く連れてくるため、村には200人程度が住んでいる。

 村と呼ぶには大き過ぎるほどだが、修業を望む真面目すぎるヤツらが多い。

 

 勇者召喚を行う一族は禁欲的な生活を行っている。

 そんな彼らに合わせて、修業に来た人間も生活を送っている。

 昔から村に住む人間もまた、一族に使える形なので禁欲的な生活だ。


 だから遊ぶ場所など出来るハズがないんだ。

 

「お兄ちゃん……何やっているの?」

「勇者コレクションの整理」

 

 コーネリアは俺が整理している勇者コレクションが気になるようだ。

 

「……禍々しいな」

 

 ガリウスは顔をしかめている。

 禍々しい魔力を放つアイテムが多いせいだろう。

 

「呪われたりしないだろうな」

「多分、大丈夫だ」

「……多分かよ」

 

 ラゼルは勇者コレクションに呪われないか心配なようだな。

 だが誰かを呪うようなアイテムは少ししか入っていないから大丈夫なハズだ。

 

「シルヴィア!」

「なに?」

 

 暇そうにしていたシルヴィアは面倒くさそうに、俺の方を見た。

 

「こいつを使ってみる気はないか?」

「それは剣……よね」

「レイヴンソードと言って、所有者の意思で自由に宙を飛ぶ剣だ」

「へ~」

「こんな感じでな」

 

 俺はレイヴンソードを軽く室内で飛ばしてみた。

 もちろん誰にも迷惑をかけないようにだ。

 

「2本程度なら、少しのトレーニングで使いこなせるハズだ」

「そう……無料タダで?」

「ああ」

 

 シルヴィアは眩し過ぎる程の笑顔で『無料タダで?』と言った。

 最初から金をとる気はなかったが、少し引くな。

 

 彼女は魔法は得意だが、接近戦は苦手なハズだ。

 胸が邪魔するから。

 

「なに?」

「……最初は使いづらいだろうが、気長に慣れてくれ」

「ええ、分かったわ」

 

 俺の視線が胸に向けられているのに気付いたのだろう。

 だが、何とかごまかせたようだ。

 

 そして俺は再び勇者コレクションの整理を始めた。

 

「…………?」

 

 俺が視線を感じて顔を上げると、全員が顔を背けた。

 彼らの想いは解っているつもりだ。

 

 勇者コレクションの整理と並行して、彼らに渡すアイテムも探すことにした。

 

 

~~2時間後~~

 

(だいたい、こんな物か)

 

 俺は勇者コレクションを整理した……一部だけだが。

 なぜ一部かというと、勇者コレクションが膨大すぎて整理しきれなかったんだ。

 

 もっと詳しく言えば、一部どころか一撮ひとつまみ程度しか整理できていない。

 だが、仲間に渡せるアイテムは一通り見つけることができた。

 

「まず、イリアにはコイツだ」

「キレイな鎧ですね」

 

 イリアの為に見つけ出したのは、深い銀色の月光の鎧という物だ。

 

「月光の鎧と言うヤツだ。触ってみてくれ」

「はい。 キャッ……あの、鎧は?」

 

 月光の鎧は一瞬、眩い光を放って消えた。

 

「鎧が所有者だと認めたということだ。全身に弱い障壁を張ってくれ」

「はい…………」

「障壁を張ることができたら、月光の鎧を心の中で呼ぶんだ」

「…………えっ」

 

 イリアは月光の鎧を、いつの間にまとっていたことに驚いたのだろう。

 

 この鎧は俺の光輝の鎧と同じで、特別な物質で出来ている。

 だから体に合わせた形に自動で変わるから、サイズも問題はない。

 

「月光の鎧は、障壁の効果を高めるから、鎧で守られていない所も守られるぞ」

「凄いですね」

 

 イリアは気に行ってくれたようだ。

 

「次は、コーネリアだが……コイツだ」

「これは?」

 

 俺がコーネリアに渡したのはペンダントだ。

 銀色のヘッドで、真ん中に青い宝石が付いている。

 

「使い魔を入れておくためにな」

「えっ うん、ありがとう……」

 

 なぜか喜んでくれなかった。

 贈る物のチョイスを間違えたか?

 

「…………」

「うん?」

 

 視線を感じた方を向くと、イリアがサッと目を反らした。

 どうしたんだ?

 

「……鈍感」

 

 イリアの行動の意味が分からなかった。

 首を傾げコーネリアの方を見ると怒った顔で鈍感と言われた。


 俺はコーネリアに嫌われたのだろうか?

 

 このペンダントは、コーネリアのセンスには合わなかったようだ。

 使い魔を入れる物はペンダント以外を用意しようと思う。

 

「次は、ラゼルだな」

「お、俺!?」

 

 なぜかイリアを気にしながらラゼルは驚いている。


「クレス」

「なんだ?」

 

 シルヴィアが声を掛けてきた。

 

「殴らせて」

「なんでだ!」

「殴られた方が、お前のためだ」

 

 シルヴィアの意味不明な『殴らせて』発言。

 なぜかラゼルは、俺の肩を叩いて殴られておいた方が良いと言った。

 

「俺には殴られて喜ぶ趣味はないぞ」

「今は俺を信じてくれ」

 

 真剣な瞳で自分を信じろというラゼル。

 俺は彼を信じざる得なかった。

 

「……わかった」

 

 シルヴィアからは、手加減なしのビンタを喰らわされた。

 そのあと、コーネリアとイリアに『これで、あのバカを許してあげてね』と言っていた。

 

 何かをフォローされたんだろうな……多分。

 

………

……

 

「次はラゼルだな」

「あ、ああ」

 

 俺は回復魔法を掛けるなと言われており、頬に紅葉を付けたままだ。

 この紅葉にラゼルは圧倒されているのだろう。

 

 この後も、勇者コレクションの贈呈は、しばらく続いた。

クレスが殴られた原因。

入学祝いとしてクレスが渡したのはペンダント。

イリアが、そのペンダントを見て嬉しそうにしていたのを、全員が知っていたから。

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