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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第5章-C 凄い勇者は旅行をする
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俺は知り合いに会った 『残念でなりません』

 幻の村とも呼ばれる始まりの村。その奥には墓地がある。

 墓地には墓石代わりに木が植えられており林のような雰囲気だ。


 俺が墓地を歩いていると、ある物を発見する。

 見つけたのは、大きな石碑。


 石碑に何が書かれていたのか、前世の記憶を手繰り寄せると思いだした。

 確か、異世界から呼び出した勇者達への謝罪の言葉が書かれていたはずだ。


 俺が前世むかしを思い出していると目的の人物? の姿が目に入ってくる。


 目的の人物というのは白いゴーレム。

 その白いゴーレムは、箒で石碑の周りを掃除をしていた。


 俺は目的のゴーレムを見つけたわけだが、あることに気付き硬直してしまった。


 ──なんて声をかければ良いんだろう?

 

 考えてみれば130年ぶりの再会だ。

 しかも俺は生まれ変わって子ども(幼児)の姿になっている。

 

 この姿の俺をスバルの生まれ変わりだと証明できる手段を持っていない。


 俺はスバルだと証明する手段が無いか色々と考えたが、時間切れのようだ。

 ゴーレムが俺に気付いて、ゆっくりと歩いてきた。

 

 そして俺の前に来て声を発する。

 

「迷子ですか?」

「はい」

 

 俺は反射的に肯定していた。



~~~~

 

 この後、俺は借りた空き家にまでゴーレムに案内してもらう事となる。


 空き家に辿りつくまでの間、色々と考えてみた。

 だが良いアイデアなど都合よく浮かぶはずもない。


 そもそも生まれ変わりだと証明すること事態が難しい。


 ケット・シーの大長老もシルヴィアも、相手を知っていたからこそ証明できた。

 

 一方で今回の場合は、相手のことを詳しくは知らない。

 だから、俺がスバルの生まれ変わりであるという証明は難しいんだ。

 

 と、先ほどまで悩んでいたのだが、問題解決の方法に俺は気付いた。


 その方法とは──シルヴィアへの丸投げ。

 

 こうしてゴーレムを説得する目途が立ち、俺は空き家へと向かった。

 

 

~借りた空き家にて~

 

 ゴーレムは空き家の外に立っている。

 出入り口が彼よりも小さいので室内には入れないためだ。

 

「で、面倒事を私に押し付けたと」

「…………」

 

 俺はというと、シルヴィアの前で正座している。

 なぜかゴーレムは叱られる俺を見てスバルだと確信したようだ。

 

「すま……シルヴィアお姉さま、ごめんなさい」

「ク、クレス!?」

 

 イリアが驚いたような声を上げたが、そっちを見たら怒られると思う。

 だから見るわけにはいかない。

 

「それは、もういいから」

 

 呆れたようにシルヴィアは言う。

 こう言えと調教……もとい、強制したのに理不尽じゃないか?

 

「ザイオンさん、これ程の馬鹿はスバル以外にいませんので信じてあげて下さい」


 ザイオンというのは、ゴーレムの名前だ。

 

 しかし、俺を叱りながらもザイオンを説得してくれるとはな。

 シルヴィアめ、頼りがいのあるヤツだ。

 

「叱られる姿を見て、大勇者スバル様であると確信できた事が残念でなりません」

「……すまん」

 

 こうしてシルヴィアは、俺の前世がスバルであると見事に証明してくれた。

 俺の望まぬ形で……



~~~~


 ザイオンという白いゴーレム。

 コイツは勇者召喚を行う一族の長だった者達の意識が封印されている。

 だからザイオンの意識は長達の意識が集まった物というわけだ。


 なぜ長達はゴーレムに意識を封じ込めたのか?


 簡単にまとめると……

 異世界から召喚された勇者は、目的を果たす前に命を落とす場合が多い。

 だから贖罪として世界の行く末を見届けるために長達は意識を封じた。

 

 この考えが身勝手な物だというのは本人? も分かっているようだ。

 だから俺は何も言う気はない……メンバーにも言う必要もないだろう。

 

 無用な不信感を抱かせることになると思うからな。

 

「さっそくで悪いのだが、『聖杯』を作ってもらえないか?」

「スバル様がご所望でしたら、今すぐにでも作成に入りますが……」

「今日、明日と村に泊めてもらう予定だが、聖杯は間に合いそうか?」

「十分です」

 

 俺が始まりの村に来た最大の理由は、聖杯を手に入れるためだ。

 聖杯は、ほぼ100%の確率で失敗するバカな儀式で必要となる。


 この聖杯は手軽に貰える物ではない。

 よって、スバルであると証明する必要があった。


「それと、明日は壁画を見せてもらいたいのだが良いか?」

「分かりました。長老に話を通しておきます」

「じゃあ頼む」

「はい。他には何か?」

 

 ザイオンの問いかけに、俺はメンバーの方を振り向いて確かめる。

 しかし特に頼むようなことは無いようだ。

 

「他にはないみたいだ」

「では、これで」

「ありがとう」

「なっ……礼を!」

 

 俺が礼を言うだけで、驚くヤツが多いのは何故だろうな。本当に……

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