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凄い勇者だった俺が美少女勇者をプロデュースした件  作者: 穂麦
第5章-B 凄い勇者は勇者ギルド(仮)の拠点が欲しい
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俺は山を登った 『何をやっているんですか!』

俺達は魔王城調査の拠点とされている建物を出発した。

女性職員達が俺とセレグを、おかしな目で見ていたことは忘れた方が良いだろう。


~魔王城に続く山~


魔王城は崖のような場所に建っている。

だから崖の上まで行くために山登りが必要だ。


このため俺達は山を登っている。

だが拠点から数人が一緒に来た。


彼等はシルヴィアお母さんの信者……ではなく魔王城の研究者と護衛だ。


魔王城の地下にある物が使えるか調べるためには研究者が必要となる。

だから、予め研究者に魔王城に向かう準備をしてもらっておいた。

ちなみに護衛は研究者たちを守るために雇われたようだ。


研究者と護衛を合わせて11名。

俺達を合わせると14名だから、それなりの規模のパーティーといえる。


「この辺りで休みましょう」

「ええ」


護衛の1人が休憩を提案しシルヴィアが答えた。

休憩に入り、俺は先日倒れたセレグを確認することにする。


「セレグ。大丈夫か?」

「なんとか」


俺はセレグの体力が心配で声をかけた。

すると離れた場所で休んでいる女性職員達が一斉に俺達を見る。

……なぜか凄く不愉快になる視線だ。


「…………」

「どうしました?」

「いや、なんでもない」


セレグは、この視線に気づいていないようだ。

不安がらせる必要もないだろうから普通の話をしようと思う。


「やっと半分といったところか」

「まだ、先は長そうですね~」


俺達は山頂に目を向けながら話した。


「遠足に来たとでも思って、気楽に行こう」

「そうですね」


セレグは苦笑いをしている。


森で疲れ果てたのは道に迷ったのが原因だからな。

山登りと言っても、無茶をしなければセレグが倒れることはないだろう。


「愛でも語り合っているの?」

「お前……」


俺とセレグが話しているとシルヴィアが乱入してきた。


「冗談よ」

「本気だったら、お前の頭を疑うぞ」

「…………」

「なんで黙るんだよ!」


もちろんシルヴィアなりの冗談だと思う……自信はないが。


「もちろん冗談よ」

「本当だろうな?」

「…………期待はしたけど……」


今、小さな声で不埒ふらちなことを言わなかったか?


「今……」

「もう出発よ!」


やはり不埒ふらちなことを彼女は言ったようだ。

強制的に話を打ち切られた。


………

……


魔王城に向かい俺達は休憩を終えて出発した。

俺の前には護衛の1人とシルヴィアが歩いている。


「シルヴィアさん、お疲れでは?」

「ありがとうございます。まだ大丈夫ですよ」


護衛の男がシルヴィアに声をかけた。

シルヴィアが柔らかな笑顔で礼を言われると彼は少し赤くなる。

見かけだけは良いからな……ヤツは。


俺は前を歩くシルヴィアの猫かぶりなセリフに笑いがこみあげてくる。

ここは、シルヴィアお母さんと言って、からかうしかないだろ。

シルヴィアに声をかけた護衛がどんな顔をするか……


「クレス、バカなことを考えないでね」

「馬鹿な考えってな~に? お母さん」

「……」

「……」


俺とシルヴィアはお互いに微笑み合っていた。

だが、交差する視線は火花を散らせている。


「魔法のお勉強が必要かしら? クレス」

「僕も魔法のお勉強をしたいって思っていたんだ。お母さん」

「勉強熱心ね」

「そうかな?」

「ええ、とっても勉強熱心よ」

「そう?」


俺とシルヴィアは話しながら間合いを測っている。

一方で研究員は俺達から離れ、護衛達が庇う形で彼らの前に立っていた。


そして!


「何をやっているんですか!」


セレグの大声で止められた。



~5分後~


「2人とも少しは反省して下さい」

「「はい」」


俺とシルヴィアは正座して、セレグに叱られている。

研究員や護衛は休憩中だ。


「だいたい、こんな山道で魔法を放ったら……クレスさん」

「な、なんだ」

「なぜ笑っているんですか?」


顔に出ていたようだな。

7歳のセレグに叱られる数百歳のシルヴィアを面白いと思っていたことが。


「やっぱり馬鹿ね」

「シルヴィアさんも先程から口元が緩んでいましたよ」

「えっ……そんなことは」

「時々、クレスさんを見て笑っていましたよね」

「…………」


シルヴィアのヤツ、俺を見て笑っていたのか。


ヤツのことだ。

『前世と今世で100歳を超えるクレスが叱られている』とか思っていたのだろう。

やはりシルヴィアは単純だな。


「クレスさん。また笑っていますよ」

「お、おう」

「ば~か」


シルヴィアめ。俺に小さな声で『ば~か』と言ってきた。

本当の事で言い返せないから、よけいに腹が立つ。


「シルヴィアさんもですよ」

「はい」


シルヴィアが怒られやがった。

俺が笑いをこらえているとシルヴィアが俺を睨んだ。

当然のように俺も睨み返したら……セレグの迫力が増すのを感じた。


「2人とも反省が足りないみたいですね」

「「すみません」」


どうやら俺やシルヴィアよりも、セレグの方が精神年齢が高かったらしい。

前世の俺とシルヴィアは、ときどき喧嘩していたな~

少し前世むかしが懐かしくなった。

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